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「東京よりマシとはいえない感染状況」 それでも大阪の医師が信頼寄せる吉村洋文知事のコロナ対策

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共同通信社

全国的に感染が拡大する新型コロナウイルス感染症。大阪でも1日の新規感染確認者が連日のように3桁を記録するようになり、29日には過去最高の221人にのぼった。

28日の大阪府新型コロナウイルス対策本部会議の後に会見した吉村洋文知事は、8月1日から20日までの期間の「5人以上の飲み会自粛」を、具体的に数字を示して府民に呼びかけている。

大阪府はこれまでも独自の基準「大阪モデル」を定め、医療崩壊が起きないような新型コロナ対応をめざしてきた。12日には3つの基準をすべて上回り初めて「黄色信号(警戒)」が点灯し、25日以内に重症患者病床の使用率が70%を上回れば、非常事態を意味する「赤信号」が灯ることとなる。

「感染者数が過去最多」などと報じられ、「東京のようになる日も近い」と不安を煽られている大阪の感染状況。対策会議にも参加し、実際に新型コロナ患者の治療にも携わってきた大阪市立総合医療センターの白野倫徳先生に現状を聞いた。

※インタビューは29日、当日の感染者数が判明する前に行った

大阪市立総合医療センター・白野倫徳医師

“感染者数”が増えている=「ヤバい」ではない

――現在の状況は、1日の感染確認者数が100人を超えることはなかった緊急事態宣言当時より感染が拡大しているという認識でいいのでしょうか。また医療現場は、当時より危機的状況だと感じていますか。

「感染者数」の問題は、検査件数がかなり増えているので、数字が増えているからといって「その分悪くなっている」などと単純に比較はできないといえます。

4月頃は検査件数が少なくて、症状があっても検査を受けられなかった、または受けなかった人が恐らくいたはずです。当時の感染実態がどのくらいだったかということは、今となっては分かりません。

曖昧な答えになりますが、単純に比較して当時よりかなり「ヤバい」ということではないという認識がまずひとつ。

かといって、心配しなくていいとももちろんいえません。

――心配な点はある、と。

まず気になるのは、検査の陽性率が上昇傾向にあることです。
「夜の街」クラスターとよくいわれますが、現在は繁華街で働いている人や訪れた人を中心に検査しています。そのため陽性率が高くなるのは仕方ないことですが、気にはなっています。

さらに、感染経路不明の人が増えている点も懸念しています。
濃厚接触者、つまり家族や同じ職場の人で感染者が多いのは当然ですが、そうではないところからもどんどん増えている実態があります。知事もおっしゃっているように「すでに市中に広がっている」ということであり、やはり危機的な状況であるとは思っています。

医学的根拠ない「5人以上の飲み会自粛」 それでも意味がある

共同通信社

――第1波のときと同じように抑え込むことは可能でしょうか?

第1波の3,4月くらいまでの状況を大阪が抑え込めたのは、府民の行動自粛、国際線の減便で外国人が少なくなったこと、保健所がクラスター対策を頑張って追ってくれたことの3つの要素が背景にありました。

今が「危機的」といえるとするなら、当時と違って緊急事態宣言が出ていないことです。ある程度「自粛」は呼びかけられているものの、明らかに「夜の街」などの人の賑わいは当時と違います。

――府民の行動抑制という意味では、知事が「5人以上の飲み会」を控えるように呼びかけました。「5人という数字に医学的な根拠はない」と強調されていましたが、医師としてどのように受け止めましたか?

確かに医学的な根拠はありませんし、4人だったら問題ないのかといわれてしまうなど穴はあります。

でも私は危機感を促すという点で意味があると思っています。

――対策会議でも5人という具体的な数字を示すことが、府民に行動変容をしてもらうために「社会心理学的な」効果があるという点を説明していました。

100%ではなくても、多くの人が心がけるだけでリスクは減らせます。

大阪の感染状況は「東京よりはマシ」ともいえない

Getty Images

――若者の感染増加、「夜の街」のクラスターなどの点から考えると、東京と広がり方は似ていると考えていいのでしょうか。

東京の医療現場については報道を通してしか見ていませんが、広がり方としてはほぼ同じだと思っています。
東京は歌舞伎町で広がったように、大阪も難波などでクラスターが発生しています。また院内感染が相次いでいる点も似ているといえます。

――東京と比べると陽性率は大阪の方が高いですし、単純に比較はできませんが、人口比を考慮すると1日当たりの感染確認者数も同等になっているようにも見えます。

感覚としては、すでに東京と同じくらいかなという気もします。

単純に比較はできませんが、「大阪は東京よりマシ」というイメージについていえば、病床確保などの面で府が頑張ってくれていて、そういう意味では東京より「マシ」な部分はあるかもしれません。

しかし、患者数の数という意味では同じくらいの状況なのだと思います。

――知事の会見では感染者数の増加について「想定の範囲内」だという発言もありました。医療体制の整備などは追いついていると感じますか?

まだ今のところはなんとかなっています。

緊急事態宣言当時は救急の受け入れを止めたり、手術を制限したりして新型コロナに対応しましたが、現在はそういうことはしていません。また集中治療室(ICU)に入っている患者も少なくなっています。

ただし、先週あたりからICUに入るような重症者もじわじわ増えてきていて、このままのペースでいけば4月と同じ状況になる可能性はあります。

――大阪府は4月には重症患者数が病床数を一時オーバーしてしまいました。それについて、現在の現場のひっ迫感はいかがですか?

ここは少し表現が難しいんですけど、よくなっている面と厳しい面の両方があります。

医療現場が一度「経験」できているので、次の受け入れは前と比べるとだいぶ不安が解消されているともいえます。

一方で、第1波のときに診療を担当した医療機関は軒並み経営が悪化し、コロナ対応が難しくなっているところもあります。その結果、国公立の病院にかなり負担がのしかかってきている面はあります。

重症者病床の使用率が70%以上 大阪モデルの赤信号は遅すぎる

共同通信社

――重症者病床は東京の100床に対して大阪は188床で、現在の重症者病床使用率は6.9%と充実しているように見えます。

そうはいっても余裕があるともいえません。重症患者を受け入れるのはそれなりに大変です。

例えばベッドが10床空いていても、同時にいきなり10人を受け入れられるかといったらそうではありません。実際には、患者数の何倍ものスタッフが必要になるのです。

――「大阪モデル」では、重症者病床の稼働が70%を超えて初めて「赤信号」になりますが、これについて大阪医師会の会長は50%がいいのではないかと指摘しています。

私も医師会長と同じような考えで、70%になってから慌てたのでは遅いかなと思います。

病院によるかもしれませんが、現在は以前のように救急や手術を削ることなく、一般の患者を受け入れながらコロナに対応する方向に多くの病院はシフトしています。そのためすぐコロナに特化して対応というのは難しいという事情があります。

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