記事

「SMAP、嵐、TOKIO」稼ぎ頭のいないジャニーズ事務所は生き残れるか

2/2

公取委はジャニーズ商法を根底から揺るがした

マネジメントだけではなく、番組制作にも関わる。人気アイドルグループと抱き合わせで、これから売り出そうとするグループを出演させる。ちょっとでも反旗を翻すテレビ局には自社タレントを出さないと恫喝する。事務所を出て行った人間はテレビに出さないように圧力をかける。

ジャニーズ事務所は1962年に、渡辺プロダクションの系列会社として創業されたため、ナベプロ流のやり方が踏襲されていても不思議ではない。

歴史は繰り返すのである。発端はSMAP3人の退所だった。ジャニーズ事務所側がテレビ局に圧力をかけ、3人を出さないように求めたことは想像に難くない。

あっという間に、3人の姿はテレビから消えてしまった。「事務所を離れたらSMAPでさえも干される」。所属タレントたちは恐怖を植え付けられた。

しかし、公取委からの注意はジャニーズ商法を根底から揺るがしたのである。元SMAPの3人は、巨悪と戦ってきたヒーローとなり、今では、ジャニーズのタレントたちと共演するまでに“復活”した。

これを見て、関ジャニ∞の渋谷すばる、中居正広、NEWSの手越祐也、そしてTOKIOの長瀬智也が、晴れ晴れとした顔をして堂々と退所を宣言していったのである。

ジュリー社長はこの非常事態をどう対処するのか

激震はジャニーズ事務所だけに留まらなかった。大物タレントたちが事務所を離れ、独立するケースが続発している。

“失敗しない女”の女優、米倉涼子(44)が3月でオスカープロモーションを退社し、これからは個人事務所を設立してやっていくと宣言した。

オスカー三人娘、女優の忽那汐里もオスカープロモーションを昨年12月で退社したし、剛力彩芽も恋人・前澤友作と個人事務所をつくり、独立すると噂されている。ハリウッドでも活躍した女優、栗山千明(35)もスペースクラフトから独立したことをツイッターで公表した。

「4月1日、公式サイトで所属事務所・スターダストプロモーションからの退社を発表した女優の柴咲コウ(38)。今後は、自身が代表取締役社長を務めるレトロワグラース株式会社(以下レ社)で女優業のマネジメントを行うという」(週刊文春4/16号)

加えて、こうした芸能プロダクションの多くは高齢化と、世襲の失敗で後継者が育たないという難題を抱えている。今もこの世界を牛耳っていて芸能界のドンといわれる周防郁雄も80歳近い。

かつて周防は私にこういった。「この世界は一代限り」、引き継ぐのは無理だというのである。ジャニーズ事務所を世襲したジュリー社長は、公取委問題でも、手越、長瀬の退所の時にも、表に出て自分の意見を語ってはいない。表に出たがらないのはジャニー喜多川社長も同じだったが、今の事務所には奥の院に籠っていられるほどの余裕はないはずだ。

こうした非常事態にどう対処するのか、彼女のleadershipとaccountability(説明責任)が求められている。

因習を残すプロダクションに不満を抱くのは当然だ

反社会的勢力と密な関係を結び、自分の所のタレントを馬車馬のように働かせ、上前をはねていた時代の残滓をいまだに抱える芸能プロも多くあるようだ。

外からの情報に接する機会も多く、タレント自らがツイッターなどで発信できる時代に、古い因習を残したプロダクションに不満を抱き、独立しようとするのは当然である。2020年はジャニーズ事務所崩壊の年として記憶されるだろう。

ジャニー喜多川という“特異”な美意識をもった人間が、自分の感性だけを信じて発掘してきた少年たちが、ジャニーズ事務所を帝国に築き上げたのだ。その人間がいなくなれば、その特異な感性も消えてなくなる。万が一にも、第二のSMAPや嵐は出てこない。

元々少年たちだけのアイドルグループというコンセプトがここまで続いてきたことが“奇跡的”といえるのではないか。

ジャニーズ事務所のビジネスモデルが時代に合わなくなってきたこともある。いまだにイベントなどでの所属事務所タレントの写真、動画は使用不可である。ネット時代に逆行するルールだといわれて久しい。

たしかに6月に6日間開催された「Johnny’s World Happy LIVE with YOU」は有料オンラインコンサートとして行われ、成功を収めたそうだ。各日のコンサート視聴権は、ジャニーズファミリークラブの会員が2500円、一般が3000円だったという。16日に嵐とKing&Princeが出演した時は100万人以上のファンが視聴したといわれる。6日間で100億円以上を稼いだともいわれているようだ。

会場費も設営費も警備員代もいらないから丸儲けではある。グッズも通販で相当売れたという。

コロナ感染拡大ということもあり、苦肉の策ではあったのだろうが、結果オーライということだろう。

「嵐」もいなくなったジャニーズは生き残れるのか

年末にはさらなる大イベントが控えている。

「嵐」のさよならコンサートである。このままコロナ禍が去らなければ、今回同様、オンラインでやれば、500万人が視聴する世界最大のネットイベントになるかもしれない。

凋落という評価を覆すことができるかもしれないと考える向きもあるかもしれないが、それは違う。SMAPに続き「嵐」という超優良コンテンツが来年からはなくなるのである。屋台骨を支える売れ筋がなくなれば、東芝、シャープ、日産を見れば分かるように、その後は悲惨である。

ジャニーズ事務所の前途は暗澹たるものと考えざるを得ない。

元々、いくら若作りしても、四十代後半、三十代後半の中年男を“アイドル”と見せかける商法には限界があった。

SMAPの5人はあと数年で50代である。そろそろテレビの「懐メロ」特番に出てきてもおかしくない年齢になる。

今から私は楽しみにしている。NHKの懐メロ特番で「世界に一つだけの花」を、恩讐を超えて、SMAP全員で歌う姿が見られる日を。(文中敬称略)

----------

元木 昌彦(もとき・まさひこ)

ジャーナリスト

1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198630283/presidentjp-22" target="_blank">編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

----------

(ジャーナリスト 元木 昌彦)

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    「インチキはいつか必ずバレる」熱海土石流は人災か

    毒蝮三太夫

    07月29日 08:08

  2. 2

    列車内での飲酒について、JR北海道から回答「お客様に強制することは大変難しい」

    猪野 亨

    07月29日 10:28

  3. 3

    集団免疫得られるワクチン接種率、70%程度では難しい=尾身会長

    ロイター

    07月29日 12:55

  4. 4

    小池都知事“一人暮らしは自宅を病床に”発言に「一人で死ねってこと?」と怒り爆発

    女性自身

    07月29日 11:27

  5. 5

    五輪報道に「手のひら返し」と批判も オリンピックに沸くテレビ・新聞の報道

    ABEMA TIMES

    07月29日 09:54

  6. 6

    高校に通わなかった東大名物教授の独学勉強法 本や教科書は疑って読むクセ

    宇佐美典也

    07月29日 12:00

  7. 7

    コロナ対策は菅内閣にも直結 東京の新規感染者数が5000人超えなら菅内閣はもたない

    田原総一朗

    07月28日 14:43

  8. 8

    東京3000人は五輪強行開催によるモラル崩壊の証。もう誰も自粛しない

    かさこ

    07月28日 08:46

  9. 9

    「きれいごとだけでは稼げない」週刊文春が不倫報道をやめない本当の理由

    PRESIDENT Online

    07月28日 12:30

  10. 10

    <日本の恥を世界へ>東京五輪開会式「演出家不在」の中途半端感

    メディアゴン

    07月29日 09:00

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。