記事

【解説】 米中関係、なぜ近年最悪の状態まで悪化しているのか

1/2

バーバラ・プレットアッシャー米国務省担当特派員

ドナルド・トランプ米政権がこのところ、中国政府との対決姿勢を強めている。先週にはテキサス州ヒューストンの中国総領事館に対し、経済スパイ活動に関わったとして閉鎖を命じた。

この閉鎖命令により、世界の2大経済大国の「負のスパイラル」は一段と悪化。米中関係は過去数十年間で最悪レベルに陥っている。

対決の背景と影響を考えてみる。

どれほど深刻?

アメリカが外国政府公館の閉鎖を命じるのは、これが初めてではない。しかし、まれにしか取られない劇的な措置だ。

今回の命令の対象は総領事館で、政策に関わる大使館ではない。ただし、総領事館は通商と外交の面で重要な役割を果たしている。

この命令を受け、中国政府は報復措置に出た。中国西部の四川省成都市にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命じたのだ。米中両国の対話のための外交インフラは、さらなる打撃を被った。

<関連記事>

ここ数カ月、ビザ(査証)制限や外交官の渡航をめぐる新ルールの導入、特派員の追放などで、米中関係は悪化していた。だが今回の閉鎖命令は、おそらくそのどれよりも深刻な措置と言えるだろう。

報復合戦は双方によって繰り広げられている。ただ、今回の対決は、主にアメリカが引き起こしたものだ。

ここまでの経緯

トランプ政権の高官はヒューストンの中国総領事館について、経済スパイ活動と自国の影響を及ぼす戦略の点から、中国のすべての公館の中でも「最も甚だしい違反者」と呼ぶ。

外国公館によるスパイ行為は、ある程度あらかじめ想定されている。しかし、ヒューストンの総領事館は許容範囲を大幅に超えていた。そのため、容認できないとの強いメッセージを送る必要があったと、米高官は話す。

中国を相手に、より「断固とした対応」を取り、同国の作戦を「妨害する」というアメリカ側の決定は、米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官による今月の演説内容と一致する。レイ氏は、アメリカの国益にとって中国の脅威が、過去10年で非常に大きくなっていると主張。中国が絡んだスパイ活動に関する捜査を、10時間ごとに新たに開始していると述べた。

中国政府は、こうした批判は当たらないと常に反論してきた。ヒューストン総領事館の件については、「悪意ある中傷」だと反発している。

トランプ政権に批判的な人は、総領事館閉鎖の意味とタイミングについて、懐疑的だ。「目くらましの感じがする」と述べるのは、バラク・オバマ政権で国務省のアジア部門トップだったダニー・ラッセル氏だ。11月の大統領選挙を前に、トランプ氏が現在抱えている政治的な厄介事から人の目をそらそうとする狙いも、少しはあっただろうという意見だ。

大統領選がらみなのか?

答えはイエスでありノーでもある。

「イエス」なのは、トランプ氏が反中国のメッセージ発信を、最近になって始めたからだ。彼の戦略家が有権者に響くと考えているこのメッセージは、トランプ氏が2016年、中国について「アメリカを略奪している」と批判した、国粋主義的な発言に沿うものだ。

ただそれに加え、中国政府の新型コロナウイルス対応への非難も、かなり込められている。トランプ氏は新型ウイルスの対応が批判され、支持率が落ちている。それだけに、惨状の責任は中国にあり、自分にはないと発信しようとしている。

一方、「ノー」と言えるのは、マイク・ポンペオ国務長官ら政権内の強硬派が、しばらく前から中国政府に対して厳しい措置を示して圧力をかけてきたからだ。トランプ氏は、強硬手段を取るべきとの助言と、中国との通商を推進し、習近平国家主席との「友情」を深めたいという自らの願望の間で揺れてきた。

だが、中国総領事館を閉鎖させたことは、対中国強硬派が現時点では優勢となっていることをうかがわせる。米政府内では、世界規模の大災害となった新型ウイルスに関して、中国政府が情報を十分に公開していないとして不満が募っており、それも強硬派に力を与えたとみられる。

あわせて読みたい

「米中関係」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    周庭氏連行の瞬間を捉えた写真

    田中龍作

  2. 2

    国民より首相 自民の真意が如実

    やまもといちろう

  3. 3

    イソジン会見 同席医師に違和感

    三田次郎

  4. 4

    うがい薬買い占めた高齢者を直撃

    NEWSポストセブン

  5. 5

    うがい薬問題 誤解の連鎖に呆れ

    青山まさゆき

  6. 6

    コロナ致死率は世界的に低下か

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    離島で初の死者 沖縄で3人が死亡

    ABEMA TIMES

  8. 8

    舛添氏 利権で動く専門家に苦言

    舛添要一

  9. 9

    れいわはN国党に助言を請うべき?

    早川忠孝

  10. 10

    TikTok巡る報復 Appleらに打撃も

    飯田香織

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。