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「国政に転身するの?」小池百合子知事が答えをはぐらかす本心とは――週刊文春記者は見た 『小池百合子 権力に憑かれた女』#3 - 和田 泰明(週刊文春記者)

「結婚したけどさっさと別れちゃった」 小池百合子が飼う愛犬「そう」ちゃん…その名前の由来は? から続く

【写真】杉村太蔵とテニスをする小池百合子

 歴代2位となる366万票――圧勝して2期目に入った小池百合子都知事だが、いきなり“危機”に直面している。7月26日時点で、東京都の新型コロナウイルス新規感染者は6日連続で200人超え、その手腕が問われている。

「夜の街」「東京アラート」といったフレーズを繰り返し、フリップを使って分かりやすくアピールする。そんなイメージの強い小池氏だが、政治家としての本質はどこにあるのか。2016年の初当選から小池氏をつぶさに観察し続け、『小池百合子 権力に憑かれた女』(光文社新書)を出版した『週刊文春』記者が解説する。(全3回の3回目/#1、#2へ)

◆◆◆

「自分の失敗は認めない人」

「彼女は他人の失敗は謝ることはできても、自分の失敗は認めない人なんですよ」

 小池百合子東京都知事(68)が7月5日投開票の都知事選で歴代2位となる366万票を獲得して再選を決めた後、私はある都政関係者を食事に誘った。私の初の著書『小池百合子 権力に憑かれた女』が刊行されるのを前に、取材でお世話になった礼をしようと思ったのだ。関係者の的を射た“小池評”に、会話は多いに盛り上がった。 

 その席で話題に上ったのは、再選を受けて開かれた7月6日の記者会見である。

 私は著書の中で、小池氏が記者会見で要領を得ない答えをダラダラと話して時間稼ぎをしたり、座席表をつくってフリー記者や週刊誌・夕刊紙記者を指名しない点を指摘した。情報公開を「1丁目1番地」とうたったわりには、不誠実な記者対応である。ただそれは、選挙を前にして、発言に慎重を期しているからだと思っていた。

 選挙が終わってしまえば失言など怖くないし、高揚感もあるだろう。記者クラブ以外の記者も指名して、開かれた記者会見にするのではないか。そんな期待をしつつ、その日私は都庁6階の記者会見場に赴いた。

 ところが小池氏は、会見をわずか30分程度で切り上げたあげく、指名したのは記者クラブ所属の5人のみ。普段は1、2人、記者クラブ以外の記者が当たっていたから、より“先鋭化”している。小池氏は、これまでのやり方が間違いだったと認めたくないようである。


2021年に予定される東京五輪まで1年となった7月23日、取材に応じる小池百合子都知事。この日新規感染者数は366人となった ©共同通信社

小池百合子が深々と頭を下げた日

 実は小池氏は深々と頭を下げたことがある。2017年6月、市場関係者の前に立ち、市場移転問題の不手際について謝罪したのだ(本の5章で詳しく紹介している)。潔く見えるが、これは石原慎太郎都政から続く前任者たちの不手際を詫びたものだ。都政関係者の言う通り、他人の責任をかぶることには躊躇しないのだった。

 著書は、こうした小池氏の東京都知事としての政治姿勢をつぶさに観察し、私なりに検証を行ったものだ。20万部の大ベストセラーとなったノンフィクション作家・石井妙子著『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が「女一代記」とすれば、拙著は4年の都知事の任期に特化している。

 発売1週間で増刷となった。『女帝~』との相乗効果によるところもあるだろうし、新型コロナ対策に奔走し、盛んにテレビ画面に登場する小池氏の「本質」を知りたいという読者の好奇心の証左でもあろう。

 小池氏に厳しい内容ということもあり、刊行後、複数の「反小池」の方から「知事選前に出してくれたらよかったのに」と残念がられた。ただ『女帝~』をもってしても小池氏はビクともしなかったのだから、選挙への影響はほぼ皆無だったろう。発売が知事選後になった分、コロナ禍への対応、自民党が候補者擁立を断念する様子まで盛り込み、任期4年をみっちり描くことができた。

「(東京外しでは)フルスペックにならない」

 拙著で書いてきた小池氏の姿は、知事選での圧勝を経てもちっとも変わっていない。

 7月15日夕方に開かれた緊急記者会見でのこと。朝日新聞記者が「『Go Toキャンペーン』は延期がよいと考えているのか」と問うと、小池氏はツラツラと答えにならない言葉を並べたあげく「国でお考えいただく必要がある」とはぐらかした。「(7月22日から)予定通り始まると、知事としてはやむをえないか」と記者が食い下がっても「都民の皆様が都外に出ることをお控えになるということについては、キャンペーンとして、フルスペックにならない」。小池氏自身の考えを問われているのに、正面から答えようとしない。

 しかしメディアは、東京都のコロナ対応を報じるのに手いっぱいで、小池氏の不誠実さを報じることは少ない。

 私が一冊の本にまとめたいと思い立ったのは、そんな小池氏のメディアを煙に巻く能力を、4年前の都知事選で目の当たりにしたからだった。

「任期3年半」「都議会冒頭解散」……無理筋の公約

 2016年6月29日、小池氏が最初に出馬表明をした時の公約は「任期3年半」。知事の任期を変えるには国会で地方自治法を改正しなければならないから、公約となりえない。その1週間後の会見ではそれはなかったこととなり、今度は「都議会冒頭解散」である。知事に解散権はないから、これまたひどい公約だ。

 ところがメディアはその不備を指摘することよりも、「(自民党東京都連は)ブラックボックス」「(東京五輪の費用が)1兆(丁)2兆ってお豆腐屋さんじゃないんだから」という見事な言葉遣いに酔いしれ、「小池劇場」に加担していった。

 こうした小手先の手法が行き詰ることは目に見えていた。だが小池氏は、軽やかに、何食わぬ顔で方針転換をしていくだろう。「持ち上げては落とす」メディアの特性も織り込み済みで、天性ともいえる政治勘で巧みに泳ぎ切るはずだ。その動向をしっかりと観察し、検証するのがメディアの役割ではないか――。

 私は「劇場」の渦に巻き込まれながら、そんな青臭い思いを強く持つようになった。

国政に転身するのか?

 私は『週刊文春』の特派記者で、都庁記者クラブに属していない。だが都庁は、国会と違って記者クラブ員でなくても記者証を発行してくれ、自由に行き来ができる。

 異動も転勤もない特派記者という立場も好都合だった。小池氏を近くでウォッチする都庁担当記者とて、たいてい数年で異動してしまう。任期すべてを見続けられる記者はそれほどいない。

 国政に転身するのか?との問いに、小池氏は明言を避けている。

 ただ私は、拙著で描いたような、その場その場の瞬発力で遊泳してきた政治行動からすると、小池氏は今のところ本当に何も考えていないと思う。

 来夏には都議選がある。東京五輪は開催されるかわからない。小池氏の動向も含め、都政はこの後も台風の目であり続けるだろう。その判断の一助として、著書を手にとっていただければ幸いである。

(【初回】小池百合子、2年前の“野心”「ブラユリコって番組できないかしら」「MXじゃあねえ……」 を読む)

(和田 泰明(週刊文春記者))

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