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「不動産政策失敗」で支持率低下「ポスト文在寅」で俄かに脚光浴びる「検察総長」 - 平井久志

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次期大統領「3位」に躍り出た尹錫悦検察総長

 先述の『韓国ギャラップ』の7月第2週の世論調査は、次期大統領に期待する人物の調査も行った。その結果は、第1位が李洛淵(イ・ナギョン)議員(前首相)で24%、第2位は李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事で13%、第3位が尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長で7%、第4位が安哲秀(アン・チョルス)「国民の党」代表で3%、洪準杓(ホン・ジュンピョ)議員、金富謙(キム・ブギョム)前議員、自殺直前の朴元淳ソウル市長がそれぞれ1%で続いた。

 世論調査会社『リアルメーター』が7月第3週に実施した調査では、李洛淵議員23.3%、李在明知事18.7%、尹錫悦検察総長14.3%となった。

 李洛淵前首相は前回の28%から4ポイント下げたが、2位に11ポイント差を付け、世論調査では1年以上トップの座を維持している。与党陣営では最も有力な次期大統領候補だ。8月の党大会で与党「共に民主党」の代表に立候補しており、金富謙前議員、朴柱民(パク・ジュミン)議員の3人で代表の座を争うことになりそうだ。

 李洛淵前首相が勝利する可能性が高いが、党規約で大統領選挙へ出馬する場合は1年前に代表を辞さなくてはならず、代表に選出されても来年3月までの約7カ月間というワンポイント登板になる。短期間でも李洛淵前首相が党代表への出馬を決めたのは、党内基盤が弱いだけに、党代表として支持基盤を拡大する狙いとみられる。

 第2位につけた李在明知事は“左派のトランプ”といわれるように、いろいろ話題の多い人物だ。京畿道の新型コロナ対策が比較的うまくいったことや、基本所得制度の提唱、災難支援金など大胆な経済政策を打ち出した積極性が、有権者の支持を掴んでいる。

 だがスキャンダルも多く、2018年の統一地方選で、亡くなった実兄を精神科病院に強制入院させるよう指示したことを討論会などの場で否定し、虚偽の説明をしたとして起訴された。この件については7月16日に大法院判決があった。有罪になれば京畿道知事を失職するだけでなく、大統領選へも出馬できなくなるところだった。

市民の関心は高く、大法院判決はテレビで生中継されたが、12人の裁判官中7人が無罪と判断した。『リアルメーター』の7月第3週の調査で李洛淵議員との差を4.6ポイントに縮めたのは、無罪判決を受けて支持の勢いが強まったものとみられ、与党の大統領候補選びは李洛淵議員、李在明知事を軸に動く可能性が強くなった。

 第3位に躍り出たのが尹錫悦検察総長だ。『韓国ギャラップ』の調査は、調査会社側がリストをつくってその中から選ぶのではなく、回答者が自分で名前を挙げる方式だが、前回は1%だった尹検察総長が7%に急上昇した。『リアルメーター』調査では14.3%という高い支持率を示した。

 尹検察総長自身は政治への転身を表明していないが、文在寅政権の秋美愛(チュ・ミエ)法相と鋭く対立しており、支持する政治家がいない保守層が尹検察総長に期待を集めた形だ。

 保守系の政治家は4月の総選挙の大敗北で、黄教安(ファン・ギョアン)前代表が政界から姿を消し、保守票を集める大物が不在の状態だ。

来年4月にソウル、釜山で市長選挙

 文在寅大統領は支持率を下げても、与党は4月の総選挙で176議席を確保して圧勝し、国会では安定した勢力を確保した。

 2022年3月の大統領選挙まで大きな選挙はないとみられたが、セクハラ問題で呉巨敦釜山市長が辞任し、朴元淳ソウル市長が自殺したことで、来年4月に韓国の首都ソウルと第2の都市釜山で市長選が行われることになった。

 次期大統領選挙の約1年前で、まさに大統領選挙の前哨戦になる。しかも、ソウルも釜山も与党選出市長のセクハラ問題が絡んでの選挙で、与党は不利だ。与党はこのところ大きな選挙では連勝を続けているが、ここで両市長選挙を落とせば雰囲気は変わってくる。

 朴元淳市長はフェミニストで、女性問題では最もアピールできるとみられていた人物だっただけに、与党は候補の選定に悩むだろう。与党内では、秋美愛法相など有力女性政治家が朴市長のセクハラ問題への言及を避けている。両市長選挙は進歩勢力にとっては頭の痛い関門となった。

 しかし、一方の保守勢力にも有力な大統領候補がいない。あまりの人材難のために、政治家でもない尹錫悦検察総長が世論調査で3位に浮上するという現象が起きている状況だ。

 朴元淳ソウル市長の死で浮かび上がるのは、進歩陣営と保守陣営による社会の分断であり、対立の激化だ。

 朴元淳市長の自殺は、単に1人の政治家の死というだけでなく、韓国の進歩勢力に大きな葛藤を生み出すだろう。被害者中心主義を叫びながら被害者をつくっていたあり方が問われることになる。

 文在寅政権の支持勢力は、保革を超えて様々な改革案を受け入れ、政治的な多元主義の中で社会統合を実現するという努力を怠り、保守との権力闘争を優先させることで改革を困難にし、合理的な保守との連携という社会統合を放棄している。政権と市民運動の関係も、良い意味での緊張関係がなくなり、市民運動が政権の補完勢力になりつつある。

市民運動への優遇と支援で政権への支援を担保するというもたれ合いの構造をつくってしまった。進歩勢力の主流は、保守勢力との闘いだけを優先し、獲得した権力の維持に汲々として、自己改革、自己革新をしようという動きはまだ見えない。朴元淳市長のセクハラと死は、韓国社会の病理をさらに浮かび上がらせた。

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