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ALS患者嘱託殺人事件で話題の「安楽死」をできるだけわかりやすく説明

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「ALS患者嘱託殺人事件」は積極的安楽死として認められるか

日本で積極的安楽死が法的に容認されるには、前述の4要件が必要です。今回の事件においては、4要件を満たしていないと考えられます。

  1. 耐えられないほどの肉体的苦痛→不明(患者のSNSには特に記述なし)
  2. 死期が迫っている→人工呼吸器が必要なほど症状は進んでいなかったという証言あり
  3. 肉体的苦痛を除去するには積極的安楽死のほかに代替案がない→そうとはいえない
  4. 患者の意思表示がある→意思表示はあった

4の意思表示については、そうした意思に至るまでの「過程」が重要視される可能性があります。

少なくとも、延命措置の中止が容認されるには、主治医ほか複数人の専門職から構成される医療・ケアチームが繰り返し丁寧に説明を行い、精神的・社会的なサポートも含めたケアを行ったうえで、他に代替案がないと患者本人が意思を形成する過程が必要です。

今回の事件のように、主治医ではなく、SNSで知り合っただけの医師による一時的な意思確認だけでは不十分とみなされる可能性があります。

参考:京都ネット安楽死事件、4要件を逸脱 ALS女性は死期迫らず、違法判断|社会|地域のニュース|京都新聞

延命治療で「生かされる」ことはリビングウィルで回避できる

今回の容疑者のものとみられるTwitterアカウントでは、高齢者を「ゾンビ」と揶揄していました。

ひとりでは食事も排泄もできない、点滴などの管でぐるぐる巻きになって「生かされている」状態を望まない方もいるでしょう。

前述したように、日本でも延命措置の中止は容認されているため、そうした状態を回避することは可能です。

予期せぬ事故や不治の病にかかった場合に延命措置の中止を希望するか、事前に「リビングウィル」(Living Will)と呼ばれる事前指示書を書いておくことは重要です。

http://hospital.luke.ac.jp/about/images/livingwill.pdf

「いざとなったら延命措置を受けないで自然に死ぬ」という意思はいわばお守りのようなもので、「ではそれまでどうやって生きるか」と前向きに考えを切り替えることもできます。

たとえば、がんにかかった場合は、早期から(痛みや苦しみを和らげる)緩和ケアをうけて、QOL(Quolity of Life・生活の質・充実した生活が送れるか)をできるだけ落とさない試みも可能です。

緩和ケアについて知ろう | がん情報みやぎ

「死ぬ権利」よりも「生きる権利」の議論を

日本で積極的安楽死が容認されるかどうかは、肉体的苦痛があるかどうかが重要な要件となります。

では、肉体的苦痛はまだ少ないけれど、不治の病にかかった絶望(精神的苦痛)から安楽死を望む人はどうすればよいのでしょうか。おそらく、今回の事件もこのケースに該当するでしょう。

これについては、同じALS患者である方の意見が答えになります。

 私は48歳でALSを発症し、死にたいと何度も真剣に思った。でも社会の支援を受けて、こうして生きている。生きてみようと思えたのは、明るく前向きに他の患者や家族の支援をしている先輩患者を見たからだ。あんなふうに生きたいと思うようになった。

 ただ「生きたい」と「生きていける」とは違う。介護保険や障害者の生活支援サービスを十分に受けられ、介護者を確保できなければ、すべて家族に頼ることになる。経済的なことも含めて家族に負担をかけたくない、と生きることをあきらめる患者は多い。私も介護態勢をつくるまでに時間がかかり、ぎりぎりのタイミングで人工呼吸器をつけられた。
引用元:「死認めて」が奪う生きたい意欲 れいわ・舩後氏の懸念:朝日新聞デジタル

この事件の少し前に、俳優の三浦春馬さんが自殺したときは、若くて優秀な人の死を惜しむ意見が大多数で、「死ぬ権利」についての意見は少数でした。

しかし、難病であるALS患者の嘱託殺人では途端に、「つらい病気でかわいそうだから死ぬ権利が必要」と、「死ぬ権利」についての意見が大多数になります。

そうした「つらい病気の人は死んだほうがよい」という、自分にも他人にものしかかる無意識のプレッシャーが、いざ病気にかかったときの絶望感を大きくしているのです。

「死ぬ権利」を議論する前に、どうしたら難病でもできるだけQOLを上げられるのか、「あんなふうに生きたい」と思えるモデルケースを示すことができるのか、まず「生きる権利」について議論するのが先ではないでしょうか。

自己責任意識や同調圧力が強い日本で、積極的安楽死の法制化は危うい

日本は、弱者に対する自己責任意識や同調圧力がとても強い国です。

新型コロナウイルスの件でも、感染者に対して保護意識をもつのではなく、個人叩き・個人情報晒しや「自粛警察」の形で圧力をかけていることから、そうした風潮が感じ取れるでしょう。

そうした日本で、「生きる権利」を十分に議論することなく、積極的安楽死を法的に容認するのは非常に危険だと思います。

現在、延命措置を中止する際には、患者が確固とした意思を形成する「過程」を踏むことが必要とされています。しかし、日本は過程よりも「結果」を重視する風潮が強いうえ、過程は偽造できます。

ひきこもり支援と同じです。社会復帰させるという「結果」が重視されるあまり、ひきこもりの引き出し屋が、法で規制されるどころか「ひきこもりなら仕方ない」と世論で容認されているのが現状です。

積極的安楽死が法制化されれば、ひきこもりの引き出し屋と同じく、今回の嘱託殺人のような形式が、過程を無視して結果(とにかく死なせる)を強調する「ビジネス」として、「高齢者や難病患者なら仕方ない」と容認されていくでしょう。

「あなたと同じ病気の□□さんは安楽死しました(あなたもどうですか)」と、高齢者などを持て余す家庭や、生活保護・障害年金の窓口などで言われる未来が目に見えるようです。

つらい病気の人は死んだほうがいいのか

「つらい病気の人は(かわいそうだから)死んだほうがいい」と考える人へ。

繰り返しますが、終末期における延命措置は中止できます。

まず、つらい病気の人がどのように生きるかを考えるのが最初なのに、そこを飛ばして「死」に着地しており、思考が停止しています。

「きれいごとではない。本人のためを思って言っている」と主張する人が多いですが、「かわいそう」というのは上から目線の決めつけであるとともに、いつしか(かわいそう)が抜け落ちて「死んだほうがいい」だけ残るのです。

「つらい病気の人」という対象、生きていても「かわいそう」と思われる対象のハードルはどんどん下がっていきます。

認知症の人は死んだほうがいい。
高齢者は死んだほうがいい。
精神病患者は死んだほうがいい。
ひきこもりは死んだほうがいい。
働けない人は死んだほうがいい。
……

「生きていても非効率な人」を削りたがる政治家

以前、人工透析患者は自業自得なので全員実費負担にしろ(無理なら殺せ)、今の医療システムは日本を亡ぼすから、と主張した著名人がいました。

「生きるコストが高い人」「生きていても働けず非効率な人」に対し、そうした人にかけるコストを削るべきと主張する政治家や著名人、それに賛同する人たちは一定数います、いや、むしろかなり多いといえます。

少子高齢化のため、医療・介護費が日本の財政を圧迫しているのは事実です。しかし、「医療費が足りない」という免罪符の裏で、「生きるのにコストがかかる人のコストを減らす」考えに飛躍する前に、税金は適切に配分されているかを調査するなど、できることはまだまだあります。

コロナ禍のような緊急事態でも、政府は利権でしか動いていません。

医療・介護崩壊を防ぐための費用を割くべきなのに、優先されるのはアベノマスクや持続化給付金、GoToTravelキャンペーンに代表される、お友達企業への税金配りです。

「生きていても非効率な人は死んだほうがいい」という、思考停止した無言の圧力に屈しないよう、まず個人でもできるのは、効率・非効率という観点から脱した豊かな生き方を模索することではないでしょうか。

精神疾患もちで非正規雇用の私には、実際には難しいことであり、日々絶望に沈み「安楽死したい」と考えることもあります。しかし、そうした立場だからこそ思考停止せずに、「ふつう」のレールからはみ出してもQOLが高いオリジナルの生活を送れるよう、試行錯誤していきたいです。

※最近はnoteで活動しています。

【できるだけ働かない生き方】はじめに|ニャート|note

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