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日銀の追加緩和の理由

 日銀の山口副総裁は、9月19日に決定した追加緩和の理由について、特に10兆円という規模の大きさに関して、以下のような発言をしていた。

 「現下の経済・物価情勢に関する認識のもとで、長い目でみた経済・物価の見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくという軌道を踏み外さないようにするためには、大きな金額が必要と考えたためです。」

 10月の展望レポートで、経済・物価の見通しが下方修正される可能性もあり、今後の経済・物価の見通しが持続的な成長経路に復していくようにするためとしながら、何故、今回は「大きな金額」が必要となったのであろうか。それほど大きな景気の落ち込みが懸念されているのであろうか。大きな金額が必要との理由が、これではあまりはっきりしない。

 「増額の対象については、リスク性資産という選択肢もありますが、現在わが国では、投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため、短期国債および長期国債としました。」

 これはFRBの追加緩和を意識しての発言のように思われる。実質的な効果からみて、リスク性資産の購入という手段もあったとみられるが、今回は短国と長国のみの買入となった。

 これについて山口副総裁は、日本の資金調達構造を引き出して、長期の社債やモーゲージローンの割合が高い米国と異なって、期間3年以下の貸出等の割合が高いという特徴をひとつの理由としていた。

 確かに短国と期間3年以下の長期国債の買入理由にはなろうが、そもそも資金調達意欲そのものが限定的であり、だからこそ日銀の当座預金残高も過去最高水準まで増加している状況にあり、果たして国債買入で貸出等が伸びることになるのであろうか。

 「基金の積み上げ完了時期については、従来は来年6月末としていましたが、来年12月末まで延長しました。経済情勢を踏まえれば、基金を積み上げる期間についてもより長くし、先ほどご説明した金融緩和を長期間にわたって継続する約束を補強することが適当と判断しました。」

 10兆円もの増額となれば、毎月の買入等を考慮すれば、期間の延長は避けられなかったものとみられ、「金融緩和を長期間にわたって継続する約束を補強すること」は結果としてそうなったとも言える。そして12月末まで延ばしたことで、さらなる買入余地を残す結果ともなる。

 下限金利の撤廃については、「基金の増額と下限金利の撤廃を組み合わせることで、金融緩和の効果はより強力に発揮されると考えています。」とあった。確かにそのインパクトは一時的だがあったことはあった。しかし現実には下限金利を撤廃しても0.1%以下の金利の世界の話であり、すでに札割れ等が起きていたこともあり、現状追認型の変更とも言えることで、その実際の効果はさほど大きくはないと思われる。

 以上のように今回の日銀の追加緩和に関しては、その規模の大きさなどからのアナウンスメント効果のほうが多分に意識されていたように思う。その意味では追加緩和は、円高進行の抑制、株価の下落の歯止めといった意味では多少なりに効果はあったと思われる。ECB、FRB、そして日銀が単独で追加緩和を行うより、目的は三者三様ながらも、タイミングを合わせることで、世界的なリスクに対処しようとの日米欧の中央銀行の意思がはっきりと見えたことは好感すべきものと思われる。今回の日銀の追加緩和の目的は、実はこの部分が大きかったのではないかと思っている。

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