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太陽光発電に負ける石炭火力

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経産省は高効率石炭火力を残置させたい。だが2024年に新設太陽光に、32年には新設太陽光+蓄電池にコストで敗北する見通しではそれも難しい。写真は磯子の石炭火力発電所である。 出典:「J-POWERアニュアルレポート2009」より入手。

文谷数重(軍事専門誌ライター)

【まとめ】

・経産省による石炭火力の整理は太陽光にコストで敗北した結果である。

・石炭火力は十余年でなくなる。ガス火力も原発もなくなる。

・発電関連業界は今後様相を一変する。

経済産業大臣が石炭火力発電の見直しを発表した。3日の記者会見で脱炭素社会の実現を目指すため石炭火力は2030年に向けてフェードアウトさせる旨を明言した。(*1)

だが、同時に石炭火力を残存させたい希望もにじませている。まず「非効率石炭[火力発電]の早期退出」とフェードアウトの対象を限定している。そして質疑では「高効率の石炭火発」や「償却が終わりに近づいているとか終わったプラント」を残したい本音を示唆している。

石炭火力は将来どの程度残るのだろうか?

まずは残らない。なぜなら石炭火力の縮小決定はコスト敗北の結果だからだ。それからすれば石炭火力は遠くないうちに絶滅するのである。

■ フェードアウトはコスト敗北の結果

石炭火力はなぜフェードアウトするのか?

その本当の理由はコスト敗北である。石炭火力発電はすでに太陽光発電よりも割高である。そして今後10年余で太陽光+蓄電池にも負けるためだ。

これは昨年ころから盛んに言われている。

機関投資家向けに金融サービスを提供する国際的金融グループ、ラザードは現時点でも太陽光が最安値としている。(*2) 2019年の段階で石炭火力の発電コストは1kw/hあたりで11円、対して太陽光は4円と算出している。ちなみに風力は4.1円、原子力は15.5円だ。これは『経済』7月号で紹介されている。(*3)

ガーディアンやブルームバーグも同様の記事を出している。(*4,*5) どちらもIRENAレポート中の「石炭火力と太陽光の発電コストは19年に逆転した」判断に基づいた内容である。

カーボントラッカーはさらに「2034年には太陽光+蓄電池が圧勝する」としている。(*6) 減価償却が終わった石炭火力を運転するよりも太陽光+蓄電池を新設したほうが安くなるのである。これは岩波の『世界』6月号で紹介された内容だ。(*7)

▲写真 ①は新設火力と新設太陽光のコスト逆転(2016年)、②は減価償却が完了した既存火力と新設太陽光の逆転(2024年)、③は新設火力と再エネ+蓄電池の逆転(2026年)、④は既存火力と再エネ+蓄電池の逆転(2026年)である。出典)著者作成

つまり石炭火力は太陽光に負けたのだ。現在でも発電コストで負けている。そして32年には夜間電力供給可能な太陽光+蓄電池にも敗れるのである。

これがフェードアウトの理由である。経済性を失い衰退するのだ。

地球環境保護は取り繕いでしかない。これまで経産省は「石炭火力は経済的」と推進していた。その失策を認めたくはない。だから今まで冷淡だった地球温暖化対策、二酸化炭素削減を理由にしたのだ。

▲写真 太陽光発電の整備は急速に進んでいる。写真は上海電力日本によるSJソーラーつくば発電所、能力は3500kw。同社は日陰作物の耕作と太陽光発電の共存を図る点でユニークである。出典)上海電力日本株式会社

■ 石炭火力はなくなる

石炭火力はコストで敗北したのである。

それからすれば経産省が期待する石炭火力の残存はない。2030年には幾ばくかは残るだろうが2030年代中には運転は終わる。

まず今後には石炭火力の新設はなくなる。検討中や建設中の計画も含めて全て中止となる。利益が低いどころではない。将来には原価でも電力は売れなくなる。その点で事業として成り立たない。

また既存の石炭火力の操業も縮小する。2024年以降には既存石炭火力を動かすより太陽光発電所を新設したほうが有利となる。つまり太陽光ができた分だけ発電量は減るのだ。

その勢いも急だ。太陽光のコストは以降も低下し続ける。そのため建設は活発となる。また日本の場合は電力需要も縮小ベースにある。その分も石炭火力の縮小幅に加わる。

夜間電力供給の役割も長くはない。なにより2034年には太陽光+蓄電池が圧勝する。またそれまでの間も安泰ではない。蓄電池整備がある程度に進めば火力発電の役割はピーク運転にシフトする。その際には起動や停止が容易な天然ガスを燃料としたガスタービン発電が選ばれるからだ。(*8)

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