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「政治の混乱が霞が関に飛び火」二転三転のGo To トラベル、元観光庁長官の溝畑宏氏に聞く


 大都市圏を中心に新規感染者が増加、自治体によって賛否が分かれる中、ついに政府の「Go To トラベル」事業がスタートした。

・【映像】元観光庁長官と考える 問題山積みの"GoTo" 観光業界に悲鳴

 21日の『ABEMA Prime』では、元観光庁長官の溝畑宏・大阪観光局理事長に、一連の「Go To キャンペーン」の意義や効果、そして政府の対応について話を聞いた。

■「タイミングや、手法のところで不安や混乱を及ぼしている」


 まず、観光業界をめぐる現状認識について、溝畑氏は次のように話す。

「観光業界はほとんどの人が零細事業なので、観光支援をしなければ8月以降は倒産、もしくは廃業寸前の方がいっぱい出てくる。特に大阪はそういう方が多く、これ以上の遅れは死活問題になる。だからこそ8月スタートを想定して、全国200の自治体が近場を回る観光支援をしてきたし、大阪でも“大阪の人・関西の人いらっしゃい"キャンペーン”を実施してきた。

自粛によって経済がズタズタになり、しかも国債を乱発しているので財政もボロボロだ。ここから先は、旅行者と、それを受け入れる観光事業者、地域住民が感染防止でしっかりスクラムを組んで、経済を動かさなければならない。失敗もあると思うが、少しずつ右肩上がりに持っていく路線にしなければ、経済はいよいよどん底になる」。


 その上で溝畑氏は「ずばり言うと、Go To トラベルはちょっと早かったかなという感じがする」と指摘する。「観光業は本当に大変な状態なので、できるだけお客さんを動かして、ステージを上げていくという考え方は間違ってはいない。ただ地方公共団体の立場からすると、この4連休で感染拡大を抑えてから8月に移った方が、受け入れはしやすかった。タイミングや、手法のところで不安や混乱を及ぼしていると思う」。

 また、「まず、なぜ東京を除外したかということの基準がない。逆に、再開する場合は何を基準にするのだろうか。それがはっきりしないままでは、キャンペーンにエントリーもしづらい。キャンセル料の補填も、どこまで対応するのかについての議論がないまま国費を充てるというのは、ちょっと乱暴ではないか。

旅行会社の方がかわいそうではあるが、やはりこちらも客観的な基準がないという意味では問題だ。結局、旅行会社を助けてあげようという思いで始めた制度なのに、キャンセルの手続き等で経営が悪化している旅行会社もあるくらい、本末転倒になっている面がある」とも指摘した。

■「道筋を示した上で、蛇口を開け締めすればよかった」


 実際、官邸からは決定・変更、事業者からは現場の混乱と、板挟みになっている国交省や観光庁からは悲鳴が上がっているという。ある国交省幹部は「現場は参っている。政治判断はいいが、実務を担うのはうち。キャンセル料補償は選挙が近いからでは?国交省としては不本意だ。緊急事態宣言が出されて強制的にGoToが終わってリセットされるのがいい」と話しているという。

「私も東日本大震災の時に“自粛を止めたい”と話すと、厚労省や外務省など他省庁から“何を観光で先走っているのか”という横やりを入れられた。会見でレディー・ガガさんにキスをされた時にも、“こうやって海外に発信している”と説明しても“こんな不謹慎なことを、馬鹿野郎”とめちゃめちゃ怒られた。

今回も、感染拡大防止に意欲のある人、経済再生に意欲のある人、様々な不安のある人がいる。それぞれにしっかり目配りしながら、トータルで“これでいく”と道筋を示した上で、蛇口を開け締めすればよかった。それが入口のところでブラブラしているから、国民の過剰反応が起こっている。政治の混乱がもろに霞が関にも飛び火してしまっていて、不幸なパターンだ」(溝畑氏)。


 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「分科会の尾身茂先生は、“旅行に行くこと自体は問題がない。ただし、行った先で3密になるような状況になったり、居酒屋で大声を出しながら飲んだりしてはいけない”ということをおっしゃっていた。これは普段の東京にいても同じことだ。

最近では若い人を中心に滞在型のゲストハウスに泊まるという旅行スタイルも出てきている。コロナの前は“これからの日本は観光で食っていく”と言っていたくらいなのだから、感染防止対策とバランスを取りつつ、政治はしっかりメッセージを発信しなければならない」とコメント。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は「東日本大震災以降、旅行代理店を介して被災地に行けるというパッケージが復興事業で一つの文化になっていた。ただ、今回は感染症、医療の問題が出てくるので、意思決定のハンドルは国が全て握るのではなく、地方に握らせた方がいい部分がある。また、一口に旅行業界といっても、大きい代理店と、中小の代理店や旅館があって、どうしても前者の意見が強くなってしまっていると思う。

そういう中で、本当に地方経済を維持するという観点でこの政策が通ったのか。その意味でも先走っていないかと気になる」と指摘。「そもそもこれまでの日本の観光政策では、インバウンドが上手くいき過ぎた結果、伸ばしておくべき分野があることを分かりつつ投資ができなかった事情がある。今回のことで、それが露出していることも知って欲しい」と話した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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