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厚生労働省「国民生活基礎調査 (2019年調査)」に見る貧困率をどう考えるか?

やや旧聞に属する話題ですが、7月17日に厚生労働省から昨年2019年調査の「国民生活基礎調査」の結果が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。

例年の通り、世帯、所得、健康、介護について取りまとめられていますが、2018年調査はほぼ3年に1度のいわゆる大規模調査の年に当たり、相対的貧困率が算出されています。私は10年ほど前ながら、「相対的貧困率に関する考察: 第14循環における動向」と題した紀要論文を書いたこともあり、貧困や格差の議論は正面から取り上げておきたいと思います。

特に、今回の報告では、子供の相対的貧困率について、特に「大人が1人」というカテゴリーを設けて、ほぼ1人親に近い「大人が1人」の子供の貧困率がとても高い点が浮き彫りになっています。まず、その貧困率の年次推移のグラフを示すと以下の通りです。


上のグラフを見れば明らかなんですが、2019年の貧困ライン、すなわち、等価可処分所得の中央値の半分は127万円となっており、貧困ラインに満たない所得の世帯の構成員の比率である相対的貧困率は15.4%と算出されており、前回調査の2015年から▲0.3%ポイント低下しています。また、17歳以下の子どもの貧困率13.5%と、これも、前回調査の2015年から▲0.4%ポイント低下しています。

なお、いかにもお役所らしくてややこしいことながら、17歳以下で定義される子供がいる世帯のうち、世帯主が18歳以上65歳未満で子供がいる世帯を「子供がいる現役世帯」と呼び、子供だけでなくその世帯員の貧困率は12.6%と、大人の世帯員も含めた貧困率は子供の貧困率よりも低くなっているのですが、逆に、大人が1人の貧困率が48.1%と極めて高くなっています。大人が2人以上の貧困率が10.7%に比べて際立っています。「大人が1人」というのは、おじいさん・おばあさんなどのケースもあるとはいえ、ほぼ1人親に近いんではないかと私は想像しています。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響もあって、私の実感では経済的な格差は拡大しているような気がします。従って、今後の格差是正の議論でも、これらの統計の結果を考えれば、以下の2点が取り上げられることを私は期待しています。まず、第1に、上のグラフでも明らかな通り、青いラインの全体の貧困率が1980年代半ばの12%から2019年には15%を超える水準にほぼ一貫して上昇している点です。加えて、第2に、1人親に近い概念であろうと想像される大人1人の「子供がいる現役世代」の貧困率が極めて高い、すなわち、かつての1990年代終わりの60%超の水準から低下しているとはいえ、まだ50%近い水準にとどまっている点です。


最後に、所得水準についても見ておきたいと思います。すなわち、上のグラフの通りですが、貧困ラインの設定の基礎となる所得の中央値の推移を示しています。1988年から1991年のバブル末期にグンと伸びたのはやや徒花とはいえ、1990年代終わりの300万円に近い水準から2019年には▲40万円近く低下しています。ですから、デフレで価格の低下があるとはいえ、中央値が低下した分、貧困の強度は強まった、と考えるべきです。この点は忘れるべきではありません。

最後の最後に、どうも、経済開発協力機構(OECD)の方で所得定義の新基準が出されたようで、可処分所得の算出に用いる拠出金の中に、新たに自動車税等及び企業年金・個人年金等を追加した新基準に基づき算出した相対的貧困率もリポートに示されています。今日のブログでは、過去の統計からの接続性を優先して旧基準の計数で議論しています。悪しからず。

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