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動かなくなった為替相場

円が1㌦360円だった頃から近年まで円ドル相場はローラーコースターのように上下し、急激な円高の度に経済界を中心に衝撃が走りました。金融当局は手を尽くし、安定化を図りますが、時としてそれをあざ笑うかのように当局の目標ラインをことごとく打ち破ったこともあります。

そんな激しい相場を抑える為替介入もアメリカからの厳しいけん制、更には2016年には為替操作国監視リストなるものが出来、為替を人為的にコントロールするのが難しくなりました。ところが皮肉にもその頃から円ドルの為替の変動幅は落ち着いてくるのです。1995年からの統計を見ると年間変動幅は常に二けた%、20%を超えた年もしばしばあり、最大の振れ幅だったのは98年の27.65%でありました。それが15年に初の1桁幅である8.36%に収まります。翌16年は再び18.48%となるものの大きく動いたのはこれが最後でした。

17年9.61%、18年8.80%、19年7.24%と年を追うごとにその変動幅が収まってきているのです。実は縮小する変動幅はユーロ円にも見て取れ、2008年には34.52%も動いたのに18、19年はともに一けたに収まっています。またユーロドルでみても19年は6.03%と安定的になったといってよいでしょう。

為替介入をしていた時代とは大違いですが、一体何が原因なのでしょうか?

見方はいくつかあると思います。一つは円がスイスフランと並び安全資産(Safe Haven)と考えられていた定義づけが少し変わり、そこに米ドルが加わったとみる発想です。つまり、ドルも円もスイスフランも同じ枠組みに収まってしまったのです。その証拠に円スイスフランも2017年から変動幅が一けた%になりどんどん動きが狭まり19年に至っては5.34%しか動いていないのです。

ではドルインデックスを見るとどうでしょうか?2002年のドットコムバブルの頃に115をつけたものがリーマンショックの頃に71まで落ち込みます。その後超長期の三角持ち合い形成入りとなり、特に18年半ばからは過去に例をみないほどピタッと動きが収縮しているのです。

為替が動く理由はいくつもあります。各国の経済力を反映するというのが教科書的な発想ですが、その後、金利水準や政治的安定感、さらに資源価格など数多くのファクターが為替を支配するようになります。とすれば一つの考察としてはグローバル化が進んだことで先進国同士の為替は破壊的衝撃を与えるほどの事態が生じなくなったという仮定は成り立つかもしれません。

日経に「円相場、バイデン政権ならどうなるか」という編集委員記事があります。タイトルと記事内容はやや違い、バイデン政権ならどうなるというより政権交代があるなら為替に対して日本政府は慎重に対応しなくてはならない」という趣旨に読めます。個人的にはバイデン政権になっても円ドルの関係、あるいはドルインデックスの安定感はさして変わらないとみています。

過去、為替が大きく動いたのはプラザ合意や欧州金融危機など国家間の力関係において衝撃的な変更がなされたときであり、それが安定化するまでに非常に時間がかかったのが歴史だったと思います。ところが日米欧を見るならば影響度の大きい金利水準は似たような状況となり、インフレ率も経済成長率もある意味同程度と捉えることが出来ます。その点からすれはドル円やユーロ円は安定ペアになりつつあるのかもしれません。

むしろ今後気を付けなくてはいけないのは中国元の動きでこちらはまだどこに向かっていくのかさっぱり読めません。もともとは非常に弱い通貨だったものが急激に強くなったこともあり、1994年に管理フロート相場制を採用、以降こちらもピタッと変動幅は収まっています。ただ、この枠組みは人為的なものであるゆえに何らかの拍子でこれが外れた場合、本来の相場探しが始まり、大きな衝撃が起きるとみています。

為替といえば「ミセスワタナベ」に代表されるFXをする個人投資家を思い出すのですが、為替とはそもそも二国間のシーソー関係でしかない上に動きの幅が小さくなれば儲け代が少なくなり、魅力は減退しているのではないでしょうか?世界の個人のFXトレーダーの半数以上が日本人とされ、アクティブに取引を行っている人は30万人程度ではないかとされます。ただ、あまりにも難しく寝ているうちにストップロスとなったり、ストップロスをかけていなくて大損して市場から退場する人も多いように見受けられます。

為替は安定しているに越したことはなく、トレーダーのおもちゃにされても困るわけで、ここ数年の動きは経済的にはありがたい状況にあるといえそうです。

では今日はこのぐらいで。

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