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尖閣問題はつとめて冷静な対応を

ナショナリズムは、扱い方を間違えると大ケガをします。そして領土問題には、妥協というものがありません。だからこそ、かつて1972年9月27日の第3回日中首脳会議において、田中角栄と周恩来は「しばらく尖閣諸島は放っておこう。将来、石油が必要なくなれば揉めることはない」と、棚上げすることに同意しましたし、‘78年には、鄧小平が「次の世代に任せよう」と言ったのです。外交担当者のギリギリの知恵であったと思います。

いま、日中両国は引くに引けない状態になっています。その原因が、私は前原誠司元国交相にあると思っています。
2010年9月、尖閣周辺でカワハギが異常発生していました。日本では料亭で扱われる高級魚ですから、中国漁船が目の色を変えました。その漁船を、海上保安庁が公務執行妨害で逮捕しました。小泉政権時までは、ただ領海から追放していたケースでした。
この「逮捕」が、鄧小平以来の「棚上げ」の約束違反だったのです。なぜなら、在宅起訴という略式裁判ではあっても、日本の国内法において裁かれ、日本の裁判所の書類にハンコを押してしまえば、その時点で日本の法律が及ぶ範囲であるということを認めることになるからです。おそらく、前原氏はそのことに考えが及ばなかったのでしょう。そうでなければ、司法に判断を託すはずがありません。
ここで「鄧小平との約束は反故になった」と中国が判断しても仕方ありません。中国側の行動が激しさを増してきたのは、それ以降です。

このまま両者がメンツをかけて主張を強めていけば、日中関係に取り返しのつかない亀裂が入ります。しかし最近、少しですが実務者同士のコミュニケーションが回復してきている気配があります。今回国が尖閣諸島を購入することに決めたのも、石原都知事が東京都のものとして購入したら、中国を刺激しすぎることを危惧するからだと、外交チャネルで伝えているのではないでしょうか。

日本人としては、もっと中国に対して毅然とした態度に出てほしいと思うのが自然でしょう。1年ほど前、愛知県で市民と対話する機会があり、そのようなご意見をたくさんお聞きしました。愛国心からの言葉だと思います。そのとき私は、こう聞きました。

「もし武力衝突になったとしたら、あなたは闘いに行きますか?」
それに対して「自分は行かないが、アメリカが行くでしょう。そのための日米安保じゃないですか」という意見が多く聞かれました。
しかし、日本人が自らの命を賭して闘わない地で、アメリカの青年が命を落とすわけがありません。このまま日中の関係が悪化して、尖閣の地で武力衝突という事態になったとき、果たして日本人はどのように闘うつもりでしょうか。

お互いに刺激し合わないよう、冷静な対応を ──
私の意見は、これに尽きます。最近の中国は、ネットの世論に敏感です。外交的なバランスと、国内世論への対応とで苦労するのは、中国も日本も同じ。それでも、日中両政府が大人の対応をし、双方の国益のために事態の鎮静化が図られることを心から望んでいます。

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