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三浦春馬さんの死去をめぐりWHOのガイドラインに準拠しない報道が続々…メディアの伝え方はどうあるべきなのか


 多くの人に衝撃を与えた俳優・三浦春馬さんの訃報。SNSも含むメディアは関連報道一色になっており、2日が経った20日も、テレビの情報番組やネットメディアが様々な形で取り上げ続けている。

・【映像】三浦春馬さん死去 メディアはどう伝えるべき? ”自殺報道ガイドライン”を考える

 こうした状況に対し、WHOが作成した、自殺の連鎖を防ぐための報道の在り方を示したガイドラインを遵守すべきだとの指摘が相次いでいる。ガイドラインでは、「自殺に用いた手段について明確に表現しないこと」「センセーショナルな見出しを使わないこと」などからなる“やってはいけないこと”、そして、「支援策や相談先について正しい情報を提供する」などからなる“やるべきこと”を明記しているが、これらに沿った報じ方をしていない報道機関が少なくないからだ。


 一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」(JSCP)も「著名人の自殺に関する報道は、子供や若者、自殺念慮を抱えている人に強い影響を与え、模倣自殺を招きかねません」と懸念。「メディア関係者各位におかれましては、以下の点にご留意いただき、WHO『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道に徹するよう、お願いいたします」との声明を発表している。

 また、臨床心理士の藤井靖氏は「相談窓口を伝えるという対応だけではなく、窓口につながった後、具体的にどんな対応や援助があったことによって回復できたか、といったことについても紹介し、当事者や周りの人の背中を押せたらいいと思う」としている。

■「メディア自身が考え、判断を」


 元朝日新聞記者で「BuzzFeed Japan」創刊編集長、メディアコラボ代表の古田大輔氏は「病死や事故死は模倣できるものではないが、自死に関しては、その詳細や方法が報じられたことによって、模倣をしてしまう人が出てくることがあった。WHOがこのようなガイドラインを作成し、ブラッシュアップしてきたのも、報道によって自殺者が増えたことが過去に何度もあったからだ。もちろんこのガイドラインが全てではないが、かなりの経験に基づいて作られてきたものだということは考慮しなければならない」と話す。


 「ガイドラインに全く配慮していないようなセンセーショナリズム報道はやめたほうがいいと思う一方、ガイドラインは“報じ方には気をつけなければならない”と書いてあるのであって、“報じるな”とは書いていない。また、トップニュースで流したからといって、そのテレビ局が罰せられるというようなものでもない。仮に三浦さんが亡くなったという情報が1週間経っても全く報じられなかったとしたら、世の中は“一体、何が起きているんだ”と疑問に思うはずだ。まさにグレーゾーンの中で個別のケースひとつひとつについてメディア自身が考え、判断し、最終的には責任を負うものだ」。

 また、詳細を報じた記事がSNSを通して一気に拡散してしまったという事実を踏まえ、「やはりYahoo!ニュースなどに速報が掲載されると、それをTwitterで見た人が驚いてすぐにリツイートしてしまうなど、もはやメディア関係者が注意しているだけでは押し止められない状況にある。だからこそ、いろいろな人たちで広く議論していかなければいけない」と指摘した。

■「特別扱いせず、“正しい報道”を」


 「全国自死遺族連絡会」の代表理事を務める田中幸子さんは「報道は正しく伝えなければならない。そもそも自殺だったのかどうかは検案した医師、警察など一部の関係者、そして遺族しか知らないはず。確証のない情報が流れてしまうことに非常に問題があると思う」とした上で、次のように話す。

 「やはり有名人であればトップニュースになるはずだ。むしろ自死を事故死や病死とは違う死だと扱うのはいかがなものか、とも思っている。自殺対策基本法や自殺総合対策大綱ができ、莫大な税金を使って自殺対策をしているにも関わらず、多くの人は自死について知らない。亡くなったことだけを取り上げるのではなく、幸せに生きていたのに、一生懸命頑張っていたのに、なぜそこに追い込まれたのか、そこを考えるきっかけを作り、自死を身近なものとして関心を寄せてほしい」。


 田中さんがそのような立場を取り、「自殺」ではなく「自死」という言葉を使うのは、警察官だった長男が2005年、加重労働の末に亡くなった経験があるからだ。「新聞やテレビには“宮城県警の現職警察官”として、実名や亡くなった理由も含めてきちんと取り上げてほしかった。しかし、私の情報よりも警察の“自殺はなかった”という情報を信じて、報じてくれなかった。一切触れてほしくないという人がいる一方で、私のようなケースもある。遺族や関係者によって、報道への思いは様々だ」。

 最後に田中さんは「実は“死ぬのはダメだよ”とか、“命を大切に”という言葉も、遺族が非常に傷つく言葉だ。本人は命を粗末にして死んだわけではないし、生きたいのに生きられないというところまで追い詰められてしまったということだ。だからこそ、聞いてあげることが非常に大切だと思っている。私自身は、人は生きるということが本能だし、自死へのハードルは決して低くないと思っている。しかし、悩みや苦しみを抱えて居る時に孤立してしまうと、周りが見えなくなってしまう。周りがLINEや声がけをするだけでも全然違うと思う。それだけで救われる命がある」と話していた。


 自殺防止相談先・電話やSNSには、「こころの健康相談」(統一ダイヤル:0570-064-556 、相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なる)、「生きづらびっと」(LINE ID @yorisoi-chat ※月・火・木・金・日曜日17時~22時30分)などがある。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:三浦春馬さん死去 メディアはどう伝えるべき? ”自殺報道ガイドライン”を考える

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