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Go To、アベノマスク…愚策で国民を翻弄する「陰の総理」今井氏の末路

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血税を使いながら、お粗末極まりない景気刺激策

今井尚哉(たかや)(61)という男がいる。肩書は内閣総理大臣補佐官。週刊ポストは安倍官邸の「陰の総理」と呼んでいるが、彼の肉声はほとんど聞こえてこない。今井の下にいる経済産業省の後輩、佐伯耕三秘書官は、週刊文春が「官邸の金正恩」と呼ばれていると書いている。

首相官邸に入る安倍晋三首相(右)。左は今井尚哉首相補佐官=東京都千代田区、2020年7月7日
首相官邸に入る安倍晋三首相(右)。左は今井尚哉首相補佐官=東京都千代田区、2020年7月7日 - 写真=毎日新聞社/アフロ

一強といわれ、長期政権を続ける安倍首相を差し置いて、「陰の総理」がいるということは、安倍首相は単なるお飾りで、日本を動かしているのは今井補佐官ということか。だがいろいろな報道をつぶさに見てみると、しょせん虎の威を借る狐に過ぎないようである。

週刊誌報道によると、森友学園の国有地払い下げの経緯をまとめた文書を改ざんしろと命じたのも、ポスト安倍の有力候補になってきた菅官房長官をスキャンダルで潰しにかかったのも、酷評されたアベノマスクを配ったのも、電通と組んでコロナ対策事業のカネの中抜きをしたのも今井とその一味ということのようである。

極めつきは「Go To Travel キャンペーン」であろう。後で触れるが、国民の血税を湯水のように使ってお粗末極まりない景気刺激策を考え、地方の首長たちからも痛烈に批判されたのである。

朝日新聞(7月20日付)の世論調査では「Go To」に対して、22日から始めることに74%が反対している上、「開始時期や対象地域を決めるまでの安倍政権の一連の対応も『評価しない』が74%を占めた」。またコロナ感染拡大防止に向けて、安倍が「指導力を発揮していない」が66%、安倍内閣の支持率は33%だった。

今井程度の人間を安倍首相はなぜ重用しているのか。その疑問を解くカギは今井の経歴にあるようだ。

今井氏のおじと岸信介の関係

今井は東京大学法学部を卒業して通商産業省(現経産省)に入省する。主として産業政策やエネルギー畑を歩んでいる。この経歴が、3.11の福島第一原発事故の後、再稼働を進めたい安倍の意を汲んで、関西電力大飯発電所の再稼働に尽力することにつながる。

第一次安倍政権の時、内閣官房に出向して内閣総理大臣秘書になったことで、安倍に認められていくのだが、今井と安倍は昔からつながりがあった。今井のおじには今井善衛元通産事務次官と、新日本製鐵会長と経団連会長を歴任した今井敬がいる。安倍の祖父の岸信介と善衛は商工官僚同士だった。同じエリート育ち、そんな思いもあって安倍も今井に胸襟を開いていったのではないか。

だが、安倍は持病の潰瘍性大腸炎もあり、突然辞任してしまう。失意のどん底にいた安倍を誘い出し、ゴルフや山登りに誘ったのが今井だったという。今井にしても、安倍が再び政権へ返り咲くとは考えていなかっただろうから、この時期にある種の友情が芽生えたのかもしれない。予期せぬ第二次安倍政権発足後、安倍は今井を政務担当の総理秘書官に就かせる。

ここから政権が長期化するにつれて、今井も自分の権力を拡大していく。

側近でさえ今井氏の許可なしには首相に会えない

中でも今井が一番熱心だったのは、江戸時代の五代将軍徳川綱吉に仕えて権勢をほしいままにした側用人・柳沢吉保のように、「主への情報の出入りを時に遮断し、時にねじ曲げ、主の寵愛と権力を得た」手法を真似たのだと、週刊現代(7/18号)が書いている。

「総理の日程を管理する秘書官を兼務しているのがキモです。総理の指示を下ろすのも、総理が相談するのも、情報を集約して総理に上げるのもすべて今井さん。総理は今井さんの切れ者ぶりに惚れ込み、任せきっている」(自民党中堅議員)

どんなに安倍側近を自任する人間だろうが、今井が認めなければ、安倍との面会はかなわないそうである。

昔、田中角栄の秘書に早坂茂三というのがいた。東京タイムズ出身だったが、態度の大きなことでは、オヤジの角栄を凌いでいた。

だいぶ前になるが、私が角栄のインタビューの了解を取り、社から出ようというとき、早坂から電話がかかってきて、「オレを通していないからインタビューはさせない」といわれ、ドタキャンされたことがあった。今でもそのことを思い出すと怒りに震えてくる。

早坂がいなかったら、角栄の評判はもう一、二段上がっていただろう。

外交のブレーンに「涙目」で口答えする

今井の話に戻ろう。彼の戦略は、安倍に徹底的に忠誠を尽くしながら、自分の敵になりそうな人間を潰していくというものだ。

安倍のインテリジェンス分野のブレーンは、元外務次官で初代国家安全保障局長の谷内正太郎だった。

17年5月、自民党の二階俊博幹事長が安倍の親書をもって中国の習近平国家主席を訪れた。その時同行した今井が、親書の一部を勝手に書き換えてしまったそうだ。

「これに谷内が激怒、今井の帰国後、官邸で口論となった。今井は興奮のあまり、目に涙を浮かべながら谷内に口答えした」(外務省キャリア)

だが、自分の書いた親書を部下が勝手に書き換えたのを叱責するのは安倍のほうであろう。安倍はそれをしなかった。あるいは、元々今井が下書きを書いたのかもしれない。

この喧嘩、谷内の負けである。谷内の対中・対ロ外交が手詰まりになると、安倍は外交の打開策まで今井に聞くようになったという。

昨年9月、谷内は局長の座を降りた。

谷内が退場すると、今井のターゲットは菅義偉官房長官に向いた。「令和オジサン」などといわれ、陰険で底意地が悪そうだと一般受けしなかった菅が、一躍、ポスト安倍の先頭に躍り出たのである。今井がこれを露骨に警戒したというが、それはそうだろう。安倍との仲がぎくしゃくしている菅が首相になれば、自分の居場所はなくなる。

「菅からの宣戦布告」ととらえ…

実質的な菅派結成の動きも急になり、昨年9月の内閣改造では、菅が後見人となって小泉進次郎、菅原一秀、河井克行が初入閣した。週刊現代によれば、今井が「一線を踏み越えた」と判断したのは、8月に小泉進次郎が滝川クリステルとの結婚報告で、まず、菅のところへ行き、その後に安倍のところへ向かったことだという。

「今井は『菅からの宣戦布告』ととらえたわけです」(全国紙政治部デスク)。あまりにも短絡的過ぎると思うが、その後、進次郎の女性スキャンダル、菅原経産相の有権者買収疑惑、河井法相の公選法違反疑惑などが続けて報じられたところを見ると、誰かが意図的に漏らしたと考えても不思議ではなかろう。

それも、全てを報じたのは週刊文春であった。菅が重用していた和泉洋人首相補佐官と部下の大坪寛子厚生労働省大臣官房審議官の「不倫」も、報じたのは文春である。

週刊誌を使って政敵のスキャンダルを流し、失脚させようという手法は昔からよくある。だが、今回のやり方は、もし万が一、今井陣営がリークしていたのだとすれば、あまりにも露骨すぎるやり方である。

文書改竄は「忖度ではなく『やれ』と言われたのだろう」

森友学園問題で、安倍と妻の昭恵の関与が取りざたされていた時、安倍は野党の追及に対して、「私や妻が関わっていたとすれば、総理も議員も辞める」と口を滑らしてしまった。

当時の佐川宣寿理財局長が矢面に立ち、安倍を忖度して懸命に否定し続けていた時、払い下げ経緯をまとめた文書の改竄を命じたのは今井だといわれている。

前川喜平元文部科学次官は、かつて週刊朝日で、こう語っている。

「官僚が、これほど危険な行為を、官邸に何の相談も報告もなしに独断で行うはずがない。文書の詳細さを見れば、現場がいかに本件を特例的な措置と捉えていたかがわかる。忖度ではなく、官邸にいる誰かから『やれ』と言われたのだろう」

「私は、その“誰か”が総理秘書官の今井尚哉氏ではないかとにらんでいる。国有地の売買をめぐるような案件で、経済産業省出身の一職員である谷査恵子氏(当時昭恵の秘書役=筆者注)の独断で、財務省を動かすことは、まず不可能。谷氏の上司にあたる今井氏が、財務省に何らかの影響を与えたのでは」

忖度官僚たちに与えた餌は、出世である。佐川は国税庁長官になり、佐川の後を引き継いで安倍を守った太田充は財務省事務次官に抜擢された。

コロナ対策をきっかけに迷走が始まった

政敵を次々に潰し、野党の不甲斐なさもあって、安倍政権は永久に続くのではないかと思われていた。だが、新型コロナウイルス感染拡大が政権内部の驕りや堕落を炙り出したのだから皮肉である。

習近平主席の訪日や東京五輪開催にこだわり続けたために、中国をはじめとする外国からの旅行客の入国を阻止することが遅れ、その後もコロナへの対応策が後手後手に回ってしまった。コロナの専門家会議をつくったが、感染拡大を恐れ、安倍首相は独断で突然、「小中高の一斉休校」をいい出し、教師、児童、親たちを大混乱させてしまった。

これが安倍政権が迷走を始めた第一歩だった。

4月には緊急事態宣言を発表して全国民に自粛要請をした。だが、補償もない要請では、コロナよりも、将来の生活への不安の方が大きく、国民の間に動揺が広がってしまった。

そんな国民の不安に答えることもせず、今度は国民一人一人にマスクを配るといい出したのである。こんなものに約400億円もかけるのなら、PCR検査の機器を増やす、医療現場が崩壊しないよう早急に手を打つなど、もっとやるべきことがあるだろうと、多くの国民は首を傾げ、官邸の連中はコロナに感染しておかしくなったのではないかと、より不安を増幅したのである。

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