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「維新八策」を論評する・・・その2

次官・局長級幹部の政治任用

一定の幹部の政治任用は理解できなくはないが、米国型の完全な政治任用とするのかどうか分かりにくい。米国型をそのまま日本に導入するのはなかなかハードルは高い。現行法上、公務員は労働基本権が一部剥奪されたままであるのに、それこそ有無を言わさずに幹部の首を切れるのかといった法律上の難しい問題があり、慎重な制度設計が必要だ。

高級幹部だけではなく公務員全体の権利と義務のバランスを考えてその在り方を検討したうえで制度設計を立てないと、首を切られた幹部から解雇無効と言われて次々に訴訟に持ち込まれ国が敗訴し続ける事態になりかねない。

環太平洋連携協定(TPP)への参加

TPPはまさに新自由主義経済体制を目指そうというものであるが、実際にはアメリカ型のグローバルスタンダードを押しつけようというものである。私は日本の国益上、マイナスの部分があまりにも多すぎるとして絶対反対の立場だ。

TPPをどのように評価するかは、米韓FTAの行方を見ると良い。米韓FTAの延長がTPPのようなものだからだ。米韓FTAによって韓国も大変な影響を受けると思うので、その行方をしっかりと見定めながら日本の国益を判断する方がはるかに賢明だ。

消費税の地方税化と地方交付税制度廃止

消費税についてどう考えるかが示されていないが、とにかく全部地方によこせという姿勢であろう。そうなると国税の確保はどうするのかといった税制全体を考えないと単純な地方税化には賛成できない。

橋下氏は、国については地方交付税を廃止するからそれで良いではないかと言いたいのかもしれないが、そうはいかない。今回の消費税増税は全部社会保障費に充当するという制度設計であるが、毎年1兆円も増えている現状からは実際にはそれだけでも厳しい。消費税の地方税化を進めるとすれば、社会保障の財源は何に求めるか、より厳しい問題が発生する。

そして大都市はこれで良いかもしれないが、人口の少ない県では財政的に厳しいことになるし、市町村はより厳しい。地方税化といっても県税になるのか、市町村税になるのかなど不明である。

私は、地域間格差を是正するための調整機能を地方交付税制度に求めること自体は反対ではないし、当分の間は地方交付税制度で調整することに改善の余地はあるものの、廃止までする必要はないと思う。

道州制導入

私は、将来的に道州制を導入すること自体に反対というものではないが、当面は、住民に身近な行政サービスを提供する基礎自治体を強化することが優先されるべきである。この基礎自治体としては通常は市が考えられる。

市における財源、権限も人材も強化することが地域住民にとっても良いことだと思う。市の行政組織だけではなく市議会やその他の組織も同様に考える。その意味では県の役割を低減していき、そのうえで必要に応じて道州を導入することでよいと思う。つまり最初から道州制ありきと言う考えはとらない。

国が、「上から目線」で道州制を押しつけるというよりも、力をつけた基礎自治体が道州制を採用したいという声が上がってくれば、それを尊重するという姿勢がよいのではないかと思う。

首相公選制導入

首相公選制も大衆受けするのかもしれないが、この制度が果たして国家、国民にとって良いかどうか慎重に考えるべきものだ。日本の場合、残念ながら政党が弱く、必ずしも政党への支持や信頼は高くない。また政党に幅広く国民が参加しているものではないし、地域に根付いているとまでは言えない。支持政党なしといういわゆる無党派は、各種の世論調査では約5割にもなっている。この点は残念だし、反省しなければならないと思うが、これが現実だ。

地方自治体の場合には無所属議員で十分活動できるが、国政の場合、決めるべき課題は多種多様にわたっており、同じような考え方の議員が結集して議会活動などを行うことは必須だと思う。だから政党は必要であり、政治に対する信頼を回復すると共に「政党力」を強化しなければならないが、現実にはそう簡単には進まない。

こうした政治状況下で首相公選制を導入すれば、国民的には人気があっても政党や議会を上手にコントロールできないし、その関係が悪い人が誕生する可能性もある。有名タレントや著名人がいきなり首相になってしまうことでよいか、そうなると政治的には相当の混乱が生じる可能性があるが、国会がキチンと機能するか心配はつきない。 政党、議会や行政で鍛えられたこともない人物や、人気はあっても政治的な識見もないような人物が首相になって本当に大丈夫かとの疑念がつきない。

仮に首相公選制を採用するとなると、公選された首相の権限をどの程度強化するのか、憲法上の問題をも含めこの制度設計も考えないといけない。いずれにせよそう簡単に決着がつくような問題ではないし、幅広い議論を展開し慎重な検討をした上で採用しないととんでもない混乱が生じかねない。

脱原発依存体制

これは賛成。どのようにしていつまでに脱原発を進めるか、単なるスローガンだけではなく具体化が必要だ。

関係首長選への公務員の選挙活動を制限、公務員の身分保障廃止

これは疑問だ。私は、基本的には誰でも政治活動の自由を保障されることが望ましいと考えているので、公務員であろうとも公務に差し支えない範囲で政治活動をやってもらって構わないと思う。

例えば、公務員が休日に特定の政党や政治家のチラシなどを配ったとしても、さほど問題にするほどではないと思うので、この意味では現行法制度の見直しが必要だ。

橋下氏の場合には、大阪市長選で市職員組合などの公務員が相手候補を応援したとの思いが強いので、この点はどうも私憤に属するのではないか。公務員の身分保障も一方的に廃止するのはあまりにもやり過ぎだ。現行制度では、公務員は労働基本権をかなりの部分剥奪されている。労働基本権が剥奪されているのに身分保障は廃止するとなると、あまりにもバランスを欠く。あくまでもバランスをいかにとるのかが大事だと思う。

インターネットを利用した選挙活動の解禁

基本的には賛成だ。その場合、なりすましなどの妨害工作も考えられるので、その対策も考える必要がある。

生活保護受給認定は国の責任で実施

橋下氏は、小さい政府とか地方分権などと言いながら、生活保護については国がやれというのはいかがなものか。この点、実際には大阪市で財政的にも地域的にも厳しい状況を抱えているので、なおさら国に押しつけたいのではないか。

私は、当分の間は国が全国的な生活保護受給基準は作成するものの、実際の適用、運用は現地の実情を国よりもよく知っている地方自治体が担当するという現行制度で良いのではないかと思う。むしろ市町村など福祉事務所の窓口対応がキチンと申請を受け付け、また適切な調査などがなされるようにチェックが必要ではないかと思う。

教育委員会制度の廃止、教育行政制度について自治体の選択制

現在の教育委員会が様々な問題点を抱えていることは否定できないし、今のような教育委員会制度でよいかどうか、私も疑問を持っている。もちろん、立派な方が教育委員に就任されてしっかり活動しているケースもあるが、実際には名ばかり委員であったり、実権は事務方トップの教育長に握られてしまっているケースも多いのではないか。もう少し教育委員会がしっかりして欲しいと思うこともしばしばである。学校でのいじめや自殺問題などでも、教育委員会の在り方が問われていて、教育委員会が機能していないという批判も出ている。

しかし教育委員会を廃止すれば良いというものではない。単純に教育委員会だけの問題ではなく、全体としてどのような教育行政制度を構築するかが問われなければならない。

そして制度の問題もあろうが、実際には人の問題の部分も多いのではないかと思う。教育こそ人だと思う。その意味では、文部科学省が事細かに教育現場に介入するのではなく、優れた教員を養成し採用することは基本だ。

また現場の教員をつまらない報告書書きなどの雑務から解放し、子どもたちとの触れ合いの時間をより多く取れるようにして教育に専念できることの方がもっと重要ではないかと思う。

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