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第444回(2020年7月19日)

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政治経済レポート:OKマガジン(Vol.444)2020.7.19

新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向です。筆者の動画「三耕探究」の中で説明したゲノム構造の変化からわかるように、武漢由来の第1波、欧州の第2波に続き、現在増えているのは第3波です。関連の動画やメルマガ(435号から441号の5本)はホームページからアクセスできます。是非ご覧ください。

1.特段の事情

新型コロナウイルスは人種や国によって感染率や死亡率が違うことがデータから明らかになっています。したがって、感染者の国籍情報は疫学的分析や感染経路の把握上、重要です。その観点から、現在の政府の対応について改善が急務の点が2つあります。

第1に国内感染者の国籍別数が明らかにされていないこと。第2に空港検疫での感染者は、国籍別数以前に日本国籍者、外国籍者の内訳すら明らかにされていないこと。

この問題を入管庁、厚労省と議論し始めた4月当初、担当官から「外国人の人権保護の観点から国籍は公表しない」との見解が示されました。

日本人、外国人の区別なく、人権保護は政府の当然の責務です。一方、国民が死活的犠牲を受け入れて営業自粛や行動制限に協力しているなか、入管庁や厚労省が国民に対して最大限の説明責任を果たすことも当然の責務です。

「外国人の人権保護」と「国民への説明責任」は別の問題であり、前者を理由に後者を軽視することは許されません。

大手メディアが報じない重要なデータがあります。入国拒否国からの入国者数(2月1日から7月9日分)を見ると、審査対象者数52388人のうち「特段の事情」による入国者数51572人となっています。

入国拒否国からは入国できないと考えるのが普通ですが、入国希望者をほぼ全員入国させていることがわかります。

4月3日に入国拒否国が24ヶ国から73の国と地域に拡大されました。この日から「特段の事情」による入国者が急増しています。

「特段の事情」とは何でしょうか。入管庁は「特段の事情」として、日本に滞在する家族に会う必要がある場合、日本の教育機関に在籍する子供が再入国する場合、外国に滞在する親族の見舞いや葬儀に出席する場合など、いくつかの具体例を示しています。

しかし、その内容が不透明なため、入管庁に説明を求めたところ、4月14日、「特段の事情」による入国者の7割以上が国際線航空機のクルーであると明らかにしました。

その間の国際線便数で割ると1便あたりのクルーは20人超となり、全部ジャンボジェットでも多すぎるという不思議さは感じましたが、説明に応じたことは一歩前進と言えます。

残りの3割はクルー以外の入国者です。現在もその説明に変わりはないので、7月8日までに1万5千人以上が入国拒否国から入国していることになります。

段階的に入国拒否を行ったため、それ以前の出国者を「特段の事情」で再入国させる対応には一定の合理性がありました。

しかし、4月からすでに3ヶ月以上経過。今も、相変わらず連日数百人単位で「特段の事情」によって再入国しています。例えば7月5日の場合は1057人であり、仮に7割がクルーであったとしても、300人以上が入国拒否国から再入国したことになります。

入管庁の資料には「永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、又は定住者の在留資格を有する外国人が再入国許可により出国した場合であっても、原則として、特段の事情がないものとして上陸拒否の対象となりますので、上陸拒否の対象地域への渡航を控えていただくようにお願いします」と明記してありますが、現実はほぼ全員を再入国させています。これでは原則になりません。

第3波が現実化し、新型コロナウイルスの特性も未解明で、かつ活発な変異も観察されているなか、水際対策は厳格に行うべきです。

「厳格な入国管理」と「国民への説明責任」を果たすためには、入国拒否国からの「特段の事情」による入国者の国籍別人数の公表とその理由の説明は、国民に対する政府の責務です。

入国規制の緩和も検討が始まっています。「特段の事情」により再入国した者、あるいは第三国経由で入国した入国拒否国籍の外国人に感染者がいたか否かなど、政府の情報開示は不十分すぎます。

2.国籍未確認感染者

大手メディアが報じないもうひとつの重要なデータがあります。国籍別感染者数(7月8日現在)は、感染者総数20010人、うち日本国籍者8170人、外国籍者277人、国籍未確認者11563人。

厚労省は当初、国内感染者の日本国籍者、外国籍者の内訳を不定期に公表していましたが、5月8日、集計方式を変更したことを理由に公表しなくなりました。

5月18日、この対応は問題である旨を厚労省に指摘。厚労省は6月3日に方針を変更し、公表に転じました。上記のデータは、その結果として公表されたものです。

6月12日の財政金融委員会において、それまでの経緯を踏まえて厚労省に3点の質問をしました。政府の認識を促すために麻生副総理の目の前で質疑しました。その後、6月15日付で文書でも回答された内容を含め、概要は以下のとおりです。

(質問1)「感染者数の内訳(日本国籍、外国籍)が公表されなくなったのはなぜか」

(厚労省)「感染症法第十五条に基づく新型コロナウイルス感染症患者の積極的疫学調査についての各自治体から厚労省への報告においては、国籍記載欄を設けている」

(同)「しかしながら、感染源推定に当たって国籍が重要情報と考えられない場合(例えば、2次感染等の感染経路が明らかな場合)等には、自治体は必ずしも国籍を厚労省へ報告していないことから、感染者の国籍を網羅的には把握できていない」

(同)「その後、感染者急増に伴う臨床現場の事情も影響し、一部自治体からは、陽性者総数等のみが報告されるようになり、国籍情報も報告されなくなった」「そのため、5月8日に集計方式を変更し、国籍情報等、全都道府県共通の悉皆集計が不可能となった項目については、公表資料から除外した」

つまり「臨床現場が逼迫し、国籍を報告できなくなった」ということです。

約1万人の感染者が国籍未確認と知って、麻生副総理は「なぜそんなに国籍未確認者がいるのか、不思議だ、初めて聞いた、よくわからない」と発言しました。

(質問2)「新型コロナウイルスの特性は未解明部分が多く、国籍情報は疫学的分析や感染経路の把握上、重要である。過去の感染者分も含め、国籍情報を積極的に把握し、公表すべきではないか」

厚労省は「前問で回答したとおり、感染者の国籍を網羅的には把握できていない。自治体においても、過去に報告した全ての感染者の国籍情報を改めて調査し直すことは事実上困難」としたうえで、「今後は情報把握に努める」と述べました。

過去に遡っての国籍未確認者の国籍確認が困難なことは理解できます。今後の厳格な把握を期待したものの、感染者の国籍未確認者は上記6月3日時点に比べ、本項冒頭で述べた7月8日現在では2416人も増えています。

厚労省としても情報把握に努めると答弁した後も国籍未確認者の増加を放置している姿勢は是正が必要です。

(質問3)「より厳格な国籍情報の把握に努めるとともに、保険証に国籍情報を記載するべきではないか。また、日本在住あるいは中長期滞在の外国人増加に対応し、保険証に国籍情報を記載することにより、外国人の医療サービスの利用状況を把握していくことは、公的医療保険の利用実態把握や医療財政分析、医療資源(病床、医師・看護師、医薬品等)を適切に運用し、国民医療を維持していく観点からも必要と考えるが、どう対応するのか」

厚労省は「ご指摘を踏まえ、国籍情報について、感染症法上の必須報告事項とする必要性、自治体の負担等に留意しつつ、今後の対応を慎重に検討していく」と述べつつ、「患者等のフォローアップのために導入する『新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム』(HER-SYSハーシス)においては、入力項目として国籍が含まれている」と述べ、今後の厳格な情報把握に期待をもたせました。

そのハーシスは、設置対象155自治体(保健所設置先)のうち30自治体以上が依然として未利用。厚労省のみならず、自治体も厳格な対応が必要です。

さらに「公的医療保険制度は要件を満たせば加入できるため、被保険者証に国籍を記載する必要はない。国籍情報を券面に表示することについて、慎重な検討を要する」と答弁。

重要な懸案です。今後も新たな抗原(ウイルスや細菌)や感染症との遭遇が起こりうるなか、疫学的分析、感染経路把握などに資するよう、保険証に国籍情報を記載すべきです。

記載しないのであれば、厚労省はその理由を説明しなければなりません。前段でも述べましたが、「外国人の人権保護」と「国民への説明責任」は二律背反ではありません。両立すべき政府の責務です。

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