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「夏に収束」予想外れ 記録的な猛暑の米国で感染が増え続けているのはなぜか?

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フェニックス(アリゾナ州)西部に位置するメリーヴェイルでは、新型コロナウイルスの検査を受けるために夜明け前から自家用車で数百人が詰めかけた。 Matt York/AP/Shutterstock

夏の暑さが新型コロナウイルスの感染拡大を収束させると考えてた科学者がいて、そしてトランプ米大統領は断言していた。しかし、現在米テキサス州、アリゾナ州、フロリダ州では気温が記録的に上昇し、40度を越える猛暑となっているにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染も拡大している。それは、なぜなのか?

夏になれば収束すると思われていたーー。

2020年2月、トランプ米大統領は「4月には気温の上昇と共にウイルスが消え去る、と多くの人が考えている」と主張。さらに数ヶ月後には、「体内に日光を取り込む」ことで太陽の驚異の力によってウイルスが死滅する、などという常識はずれの持論を展開した。

ところが、新型コロナウイルスもインフルエンザと同じく高温、日光、多湿によって消え去るだろうと推測したのは、トランプだけではない。多くの科学者もまた、第二波が予想される秋の終わり頃までの数ヶ月間は、感染が一段落するだろうと考えていたのだ。トランプの娘婿で大統領顧問も務めるジャレッド・クシュナーも2020年4月、「6月までに、全米のほとんどの地域は以前の状態に戻るだろう。そして7月までに米国が完全に復活することを願う」と発言している。

そして7月も中旬に差し掛かった今、どうなっているだろう。猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大は手に負えない状態で、米国内では330万人以上が感染し、死亡者数は13万5000人を超えた。感染拡大のホットスポットとなっているテキサス州、アリゾナ州、フロリダ州などは記録的な酷暑に襲われているが、ウイルスが夏の暑さで収束するというには程遠い状況だ。7月12日、フェニックス(アリゾナ州)では今年最高の46.7℃を記録した。またマイアミ(フロリダ州)でも7月7〜10日は記録的な暑さに見舞われ、数週間前には1週間の気温が過去最高を記録した。筆者のいるテキサスでは、7月13日にアマリロとラボックで43.3℃、サンアントニオで41.7℃と今月最高の気温を記録したが、病院の遺体安置所が不足したために公衆衛生当局が冷蔵トラックを導入している状態だ。

・トランプ氏がマスク工場視察、騒音の中で流れていた曲は「死ぬのは奴らだ」

何がどうなっているのだろうか?

「良い質問だ。答えがあるかどうかも私にはわからない」と、ベイラー大学国立熱帯医学校(ヒューストン)のピーター・ホッテズ学長は言う。ホッテズは、米国内で屈指の感染症専門家でもある。

研究室での実験では、一般的な呼吸器系ウイルスは日光や気温、特に湿度が感染に影響することがわかっている。そこで例えば病院では、ウイルスを死滅させる目的で日常的に紫外線を使用している。また湿度によって、ウイルスを含む飛沫が空気中にどれだけ長く浮遊するかが決まってくる。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)そのものは脂肪膜で包まれていて、ある程度温度が上昇するとステーキのように焼けてしまう。

ではなぜ、研究室と実世界とでまったく異なる結果になっているのだろうか。「日光、気温、湿度によるウイルス減退の明確な関係性が解明された訳ではない」とホッテズはメールで回答してくれた。理由のひとつは、病院でウイルス除去に使用されている紫外線(UVC)は、日光として大気を通り抜けてくる紫外線(UVCよりも波長が長く地球上のほとんどの生命にとって不可欠なUVAとUVB)とは異なる点にある。また、新型コロナウイルスは新しいタイプのウイルスのため、誰も免疫を持っていない。だから気温、日光、湿度がウイルスに対して多少の影響を与えていたとしても、現時点で効果を測定することは不可能だ。「新しいタイプのウイルス病原体は免疫のない人々に感染して広まるため、季節と関係ないというのが一般的な説だ」とホッテズは説明する。

気温が上がるとエアコンの効いた部屋に人々が密集するから感染が拡大するのだ、と主張する科学者もいる。しかしホッテズは根拠が薄いと反論する。「結局のところ、このウイルスに関してわからないことがまだまだ多い。米国南部地方全体では引き続き感染が拡大し、入院患者や死亡者の数も増え続けるだろう。さらに、国内の他の地域へも拡大すると考えるべきだ」

ジョージタウン大学グローバル健康科学&安全保障センターで准研究教授を務めるコリン・カールソンは、酷暑とウイルスとの関係性について、やや異なる見解を持っている。カールソンは、科学者たちが答えを見出せないのは新型コロナウイルスに関して研究途上にあるという理由だけではない、と主張する。トランプを始めとする日和見主義の政治家らに都合よく利用されてしまうような欠点だらけの理論を急場しのぎで発表するような過ちを、科学者たちが犯してきたからだという。

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