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「ハケンの品格」からアフター・コロナ時代が見える スーパー派遣・篠原涼子がえぐり出す、沈みゆく日本企業 - 田部康喜 (コラムニスト)

(azatvaleev/gettyimages)

日本テレビ系「ハケンの品格」(毎週水曜午後10時)は、残業と不可能という文字が辞書にない、スーパー派遣の大前春子(篠原涼子)が13年ぶりに登場して、沈みゆく日本企業の問題点をえぐり出す傑作ドラマのシーズン2である。物語が描き出す企業社会から、アフター・コロナ時代の課題が見えてくる。

老舗食品商社の「S&F」の営業企画課長である、里中賢介(小泉孝太郎)は派遣会社の「ハケンライフ」に要請して、13年前に会社の危機を救った春子(篠原)を再び職場に呼び寄せる。里中は会社が変わろうとしなければ、生き残れないと危機感を抱いている。春子の起用は、そのための布石になると考えた。

第1回(6月17日)から第3回(7月1日)まで、春子は持っている、多彩な資格、例えばロシア語会話や調理師、カレーマイスターなどと過去の派遣経験を活かして次々に問題を解決していった。

新入社員の井手裕太郎(杉野遥亮)が匿名で社内の様子を動画でSNSにアップロードした際に、社員食堂の名物カレーを作っている、アルバイトのコック・牟田吉男(六角精児)が冷凍庫に頭から入り込む様子を映り込んでしまった。食品商社としてはあるまじき「バイト・テロ」と受け止められて、取引先から取引の中止の連絡が殺到する。

真相は、経費の削減のために牟田が解雇され、最後にキッチンや冷凍庫を掃除していたのだった。牟田がいなくなって、名物カレーの味はすっかり落ちて、春子がカレー作りに挑むことになった。春子は名物カレーを復活させ、S&Fに対する「バイト・テロ」の汚名も晴らした。

シーズン1からシーズン2にかけての約10年の間に、日本の非正規雇用の比率は急速に高まった。2009年の33.7%から19年には38.3%。15歳から24歳の層でみると、45.0%から50.9%である。

新型コロナウイルスによって、テレワークなどが企業に導入されるなかで、日本のサラリーパーソンの働き方の問題点が改めて浮き彫りになっている。OECD加盟国の時間当たりの労働生産性(2018年)において、日本は36カ国中21位である。

米国の人事コンサルティング会社の調査によると、従業員の企業に対するエンゲージメントつまり「組織の成功に貢献しようとするモチベーションの高さと組織の目標達成のために自分が努力しようとする意思の強さ」は、日本は28カ国中圧倒的な最下位の38%だった。トップのインド77%、続いてデンマーク67%、メキシコ63%、5位の米国が59%、中国57%。英国、ドイツ、フランスなどの欧州先進国も40%前後だった。日本のサラリーパーソンは、企業のなかで幸福ではない。

春子が見せる日本企業の〝変革〟

第4話(7月8日)に至って、春子の前にいよいよ、企業の組織の壁が立ちはだかる。春子が働いている、営業企画課などを束ねる営業事業部長の宇野一平(塚地武雄)は、新人教育に飲みニケーション(飲み会)を重視して、自分の営業マン時代の苦労と自慢話を繰り返す。新入社員の井手(杉野)に対して、春子が稟議書の判の押し方や資料のホッチキスの止め方などを指導するのを見て、「新人の指導は社員の仕事だ。派遣が口出しをするな」と怒る。しかし、社員たちは潮が引くように宇野の周辺からいなくなって、結局は最低限の指導を春子に業務命令する。

井手は新人として初の営業に向かう前日に、サンプルのおでんセットを地下の冷蔵倉庫から準備するように、派遣の福岡亜紀(古谷彩子)と千葉小夏(山本舞香)に指示した。井手があらかじめサンプルから除いておくように指示されたにもかかわらず分別しておかなかったので、社内ルールに沿わない食品表示がある分をふたりの派遣は正規のものと混ぜてしまった。部内は早急に回収を図ろうと騒然となる。この騒ぎのなかで、井手は姿をくらます。

春子は、地下の冷蔵倉庫内で井手を見つける。彼は、サンプルを正規のモノと回収しなければならない分とを仕分けしていた。自分がやらなければならなかった仕事をしなかったばかりに、派遣のふたりが責任を問われたのを悔いた。

雷による一時的な停電によって、冷蔵倉庫の扉のセキュリティが誤作動をするようになって、春子と井手は閉じ込められる。こごえるような空気のなかで、井手は着ていたジャンパーを春子に着せかける。

井手は春子に退社したいという。「会社に縛られたくない。仕事とプライバシーを区別したい。自分のスキルを活かしたい。広い世界に羽ばたきたい」と。「大前さんの生きざまって、僕と似てますね」と井手はいう。「ふざけないでください。派遣は休んだら食べていけません。甘やかされた社員とは違います。こんなところにいて、私のお時給は高いんです」と春子は言い切る。春子が扉を掃除用のモップの柄で規則的に叩いた結果、守衛が気づいて、ふたりは脱出できた。

職場に戻って、井手は春子のもとに頭を下げたうえで「僕はスーパー派遣を目指します」という。春子は「無理です。正社員として使い物にならないヘタレは派遣にはなれません。多少は見込みがあるヘタレかと」。

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