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都議補選4連勝後の鹿児島県知事選敗北で自民に逆風と言われるが野党も逆風。真に勝ったのは無党派層の民意


先日、7月5日に行われた都知事選、都議補選について高橋亮平コラムでも『データで見る都知事選と、永田町で噂される9月解散総選挙・小池総理の可能性』、『自民4戦全勝だった都議補選、来年の都議本戦に向け本当に勝ったのはあの政党』と書かせてもらい、自民党にとって追い風であることから、9月解散もあると指摘した。

こんな中、7月12日、鹿児島県知事選の投開票が行われ、自民公明の推薦する現職知事が落選したというニュースが飛び込んできた。

1週間前の都議補選を4選全勝で乗り切った自民党の追い風に水を指し、野党支持者たちは自民現職落選!と盛り上がったわけだが、この鹿児島県知事選、必ずしもそういったシンプルなものではないように感じる。

今回はそんな鹿児島県知事選について書いていきたい。

まず、今回、自民党、公明党が推薦したのは現職の三反園氏、4年前は民進党、社民党が支援する野党候補だった。

初当選が野党支援の新人首長が現職となって2期目の選挙を自民党、公明党が支援するケースはそれほど珍しいわけではない。

現職になるとむしろオール与党のような構図にしてしまい2期目を戦うということは、むしろ全国中に多くある。

しかし一方で、一度選挙で全力で戦うと、当然相手側には敵対する人たちも多くなる。枠組みとしては自公推薦でも、今回の選挙においても県議なども含め多くの造反があったと聞く。

自民党は当初、鹿児島市長の出馬を期待していたようが実現できず、「勝てる候補」ということで、結果的に事前データで他候補予定者を圧倒していた三反園氏の推薦を決めていくことになったようだ。


今回の鹿児島県知事選挙、現職に元職がぶつかり7人が乱立する乱戦となった。一般に当選者が1名の首長選挙においては、候補者が多くなると票が分散されるため、現職有利の選挙になると言われている。

また、選挙区が全県区である知事選や参院選などにおいては、選挙区が広過ぎるため、政党選挙や組織選挙がベースになり、表面的には無所属で立候補はしても、実質的な政党支援候補でなければ難しいとも言われる。

結果、この鹿児島県知事選挙では、無所属の新人、塩田氏が222,676票を獲得して当選するのだが、どこを切っても選挙の常識を覆すような、ある種、極めて稀な、新しい選挙の結果になったように思う。

こんな稀有な選挙になった要因はいくつかあるが、その1つ目が、先述の現職である三反園氏が自公推薦候補でありながら、前回は民進社民の支援候補であったということになる。

2つ目に、対立候補の元職であった伊藤氏が立憲推薦候補でありながら、現職だった前回は自公の支援候補であったということがある。

つまり、今回の鹿児島県知事選は、前回の野党候補が自公候補に、自公候補が野党候補になった「ねじれ構造」の中で行われた選挙であったことが大きく影響している。

この現職、元職の2名に結果的に当選する塩田氏を加えた、実質3名による闘いとなったわけだが、3名の得票を見ると、町村部では現職の三反園氏が取っているにも関わらず、市部での票で塩田氏が差をつけた選挙であることが分かる。

支持政党の基礎票を検討する参考に、2019年、2016年の参院選の比例での政党獲得票を載せたが、今回の知事選も前回の知事選も、自公候補は自公支持層の票を取り切れていないことが見えてくるほか、野党候補は、野党支持表から大幅に増やして得票していることが分かる。


より地域別に、各候補がどの地域で強かったのかを見ていくため、当選した塩田氏の得票を100%として各候補の得票の割合を調べてみると、46自治体中32自治体で、現職の三反園氏が勝っていたことが分かる。

とくに町村部では圧倒的な強さが見て取れる。同時に、前回の選挙における同様の割合を調べると、極めて似たようなエリアで、当時の現職伊藤氏が圧倒的な強さを示していることも分かる。

つまり、鹿児島というお土地柄もあるのか、町村部においては、現職知事が圧倒的に強いということが見えてくる。


では、なぜ現職の知事が2回連続で負けたのだろうか。

それはあらためて、当選した候補と、残りの候補の各自治体における得票の差を見れば明らかになる。

今回の知事選で当選した塩田氏と2着となった現職、三反園氏の得票の差は26,735票、市部だけで見ると、その差は37,625票に広がる一方で、町村部では逆に三反園氏の方が10,893票も塩田氏を上回る。

さらに詳細を見ていくと、その敗因は、鹿児島市の43,912票差であったことであることが明らかになる。

つまり、大都市鹿児島市におけるいわゆる浮動票が大きく塩田氏に流れた結果が今回の知事選の全てを決めたと言っても過言ではないのではないだろうか。

ちなみに前回2016年の知事選においてもほぼ同じような減少が起こっており、鹿児島市内で69,278票差をつけたことで新人の三反園氏が勝利していた。


今回の選挙がこのようになった要因の3つ目に、実質的な保守3分裂選挙ということがある。

NHKが投票日当日に行った出口調査によると、自民党支持層のうち自公推薦だった現職の三反園氏が確保したのは40%弱、今回当選した新人の塩田氏が30%程度を占めたほか、前回自公支持で戦った立憲推薦元職の伊藤氏も20%を占めたとされている。

表面的に支持政党を見ると、自公が支援したのは三反園氏であるかのように見えるが、立憲推薦の伊藤氏も含め、実質的にはこれまで積み上げてきた保守系基盤を元にした選挙であり、保守王国と言われる鹿児島県の中で、保守票をどこが取れるかという3分裂選挙がベースであったことが見えてくる。

地域別に見えてもその殆どの地域で三反園氏は自公票の多くを取りこぼしている一方で、伊藤氏は立憲支持候補ということでは説明がつかないほどに票を伸ばしている、もっと言えば共産党支持層すら共産党候補に投票していないという有様だ。

鹿児島県の知事選挙においては、実態的にはこうした保守分裂選挙をベースに浮動票により勝敗が決る選挙であるため、表面的な自公候補が破れたことが、必ずしも自民党に逆風が吹いているということはまったくない。

現に、前回の知事選でも現職の自公候補は破れているが、同年に行われた参院選では鹿児島県では自民党が圧勝している。


今回の鹿児島県知事選挙では、結局のところ都市部である鹿児島市内での無党派層の大半の支持を得ることができた塩田氏が勝利した。

NHKの出口調査では、無党派層の投票先を見ると、塩田氏が40%以上を確保し、三反園氏に倍近くの差をつけたとされる。

しいて言うなら、次の国政選挙において、この無党派層の支持をどこが得られるかということは、唯一、関心事としてはあるかもしれない。

参考までに2019年と2016年の参院選の各党の獲得票の差も調べてみた。自民公明も獲得票を減らしているが、野党も同様にその票を減らしている。

今回の知事選では、政党による枠組み選挙に屈しずに、民意を示した鹿児島県の有権者の皆さんに敬意を示すとともに、こうした無党派層が選挙結果を変えることが起きるようになってきたことを、与野党ともに真摯に受け止めながら、国民に政党が乖離することがない新しい政治を期待したいと思う。

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