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日本人は「三密の回避」をもっと深めるべきだ ~「日本モデル」vs.「西浦モデル2.0」の正念場(その2)~

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 東京の新規陽性者拡大の傾向は、先行きが見えない状態が続いている。一日当たりの新規陽性者数は、4月上旬の水準に近いが、無症状者の積極検査によって判明している陽性者も相当数含まれていることから、評価が難しい。実際、顕著な新規陽性者が増加が始まってから一カ月以上たっているが、死者・重症患者は増加する傾向が見られない。この傾向は全国を見ても同じで、7月になってからの死者数は8名程度で、ここ数日も死者数0が続いている。この現象をどう理解するかは、非常に大きな課題であろう。

 実は致死率の低下は、全世界的な傾向である。Worldometersで毎日の陽性者数と死者数の推移をグラフで比べるだけで、一目瞭然だ。前者は右肩上がりで伸び続けているが、後者は伸び止まっている。つまり一日当たりの新規陽性者が増え続けているのに、一日あたりの死者数は、増えていないのだ。これはなぜだろうか。

https://www.worldometers.info/coronavirus/worldwide-graphs/

 何らかの抗体ができているのではないか、ウイルスの性質が変わったのではないか、といった大胆な仮説を示唆する方もいるようだが、裏付けになるものがなく、私は何も言えない。

 各国で高齢者や慢性疾患者の死亡率が高いことがよく知られているため、政策的または自然な弱者の防衛策がとられるようになったのではないか、と推察することもできるはずだ。

 アメリカは、6月中旬から新規陽性者数が再増加し続けているのに、新規死亡者が同じようには増加していない典型的な国である(微増は見られるが)。Black Lives Matter運動の盛り上がりで多くの人々が密接な対人接触を持ってしまったときでも、死亡率が高いと思われる階層の人々は、さすがに自重していたのではないか。

 なお、今やヨーロッパ(の主要国)は、新規陽性者数も増やすことがなく、ロックダウン解除を果たしている優等生だ。ロックダウン解除してもナイトクラブだけは閉鎖し続けたり、公共機関や屋内会合ではマスク着用を義務付けたりするなどの積極的な社会政策がとられている。日本がヨーロッパを見習うなら、今だ。数カ月前、「ヨーロッパの厳格なロックダウンを日本も模倣せよ」と叫んでいた人たちが、今になって地道にヨーロッパ各国の取り組みを学ぼうとする関心を失っているのは、私には理解できない。

 以前に世界各地域の致死率などを見た文章を書いたことがある。その6月15日時点の数字と、4週間後の7月11日の数字を比べてみよう。

(6月15日)

地域

準地域

感染者数(/mil)

死者数(/mil)

致死率(%)

アフリカ

 

184.89

4.93

2.66

 

北アフリカ

297.43

12.5

4.2

 

東アフリカ

57.36

0.95

1.65

 

中部アフリカ

134.31

3.04

2.26

 

南部アフリカ

1,047.09

22.02

2.1

 

西アフリカ

134.31

2.64

1.96

米州

 

3,837.07

201.55

5.25

 

北米

6,150.57

341.97

5.56

 

カリビアン

783.18

21.09

2.69

 

中米

1,076.38

102.58

9.53

 

南米

3,294.55

139.56

4.24

アジア

 

355.73

8.82

2.48

 

中央アジア

401.99

2.59

0.65

 

東アジア

69.32

3.54

5.11

 

東南アジア

178.19

5.25

2.95

 

南アジア

410.99

11.86

2.89

 

西アジア

1,993.77

28.03

1.41

ヨーロッパ

 

2,824.89

233.14

8.25

 

東欧

2,410.86

42.63

1.77

 

北欧

2,845.24

345.06

12.13

 

南欧

3,913.74

421.49

10.77

 

西欧

2,583.41

289.33

11.2

オセアニア

 

218.83

3.03

1.39

 

(7月11日)

地域

準地域

感染者数(/mil)

死者数(/mil)

致死率(%)

アフリカ

 

449.29

9.98

2.22

 

北アフリカ

528.92

23.84

4.51

 

東アフリカ

105.79

1.66

1.57

 

中部アフリカ

227.06

4.80

2.12

 

南部アフリカ

4,137.98

60.83

1.47

 

西アフリカ

258.19

4.39

1.70

米州

 

6,764.70

285.78

4.22

 

北米

9,550.96

397.51

4.16

 

カリビアン

1,380.66

30.01

2.17

 

中米

2,357.63

213.31

9.05

 

南米

6,723.29

244.40

3.64

アジア

 

647.46

15.31

2.36

 

中央アジア

1,332.47

9.36

0.70

 

東アジア

73.13

3.41

4.66

 

東南アジア

289.22

8.19

2.83

 

南アジア

847.86

23.26

2.74

 

西アジア

3,209.06

47.29

1.47

ヨーロッパ

 

3,284.84

250.44

7.62

 

東欧

3,310.19

63.70

1.92

 

北欧

2,964.91

371.34

12.52

 

南欧

4,212.91

438.02

10.40

 

西欧

2,761.78

294.99

10.68

オセアニア

 

284.83

3.18

1.12

 

 この4週間で、ヨーロッパの陽性者は1.16倍、死者数は1.07倍になったが、世界全体では陽性者は1・62倍、死者数は1.31倍だ。これに対して致死率(死者数÷陽性者数)は、世界平均では0・8倍にまで下がったが、ヨーロッパでは0.92倍にとどまった。つまりヨーロッパは依然として致死率が非常に高く、世界平均よりも低下率も鈍いが、新規感染者数を世界平均よりも大きく抑制することによって、死者数の抑制にも成功しているのである。政策的努力が大きいと言えるだろう。見習うべき点が多々あるはずだ。

 なお従来から日本では、死者数の抑え込みを重視してきている。そのために医療崩壊を起こさないことを至上命題にもしてきた。たとえば6月15日から7月11日の間に、日本の陽性者総数は1.21倍になったが、死者数は1.05倍でしか増加しなかった。1カ月の死者数は54人だった。致死率は、5.35%から4.65%に下がった。

日本も死者数の抑制は維持している。最近の新規陽性者数の増加が、積極検査の結果としての無発症若者層がかなりの比率を占めていたことが関係していると考えるのは、的外れではないのである。

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