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肉や卵や乳製品はどのように生産されているのか?――アニマルウェルフェア畜産への転向 - 岡田千尋 / アニマルライツセンター代表理事

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肉や卵や乳製品はどのように生産されているのか?

皆さんの食卓に登場する肉や卵や乳製品がどのように生産されているのか、知っているだろうか。知らないのであれば、知っておいたほうが自身を守るためになると私は思う。

まず、それら畜産物にされる動物たちが本来どのような動物なのか、知ってほしい。それは後で説明する適正な飼育=アニマルウェルフェアに配慮した飼育を理解することにつながるからだ。

鶏の朝は早い。日の出の30分ほど前から活動を始め、オスはコケコッコーと雄叫びを上げる。光の角度に応じて行動をしており、夕暮れ30分前に寝床に戻り、止まり木で眠る。

この行動には意味がある。暗くなると夜目の利かない鶏は動きが取れない。そのため、捕食者に襲われがちな夜はできるだけ高いところで眠りたいという欲求があるのだ。1羽あたり15センチ以上の長さの止まり木を与えることで、恐怖感と攻撃性を軽減し、身体の調子を改善することが分かっている(注1)。

同じ理由から、産卵時は無防備になる上、時間もかかるため、巣を作りその中に隠れて卵を産む習性を持つ。巣を求める欲求はとても強く、自分が一番安心でき、快適な巣を求めて産卵の90分前から営巣したり、適切な巣箱を探し回る。27時間の絶食後でさえ、エサよりも巣箱を選ぶ行動が観察されているなど、巣箱を求める欲求は食欲より強いのだ(注2,3)。

鶏は日中の60%の時間、1万回以上を地面等をつついて採食を行う。餌を与えられていて栄養を摂る必要が無い場合でもこの行動は行われる(注4)。探索欲求は動物の強い本能なのだ。

私たちがお風呂に入るように、鶏は砂浴びをして羽毛や皮膚についた寄生虫や汚れを落とす。喉をキューと鳴らして目を細めながら、全身に乾燥した砂を何度も何度も振りかけ、砂浴び終了後には全身をブルブルッと震わせて砂を落とす。さらに日光浴をすることで殺菌し、心身の健康を保つ。どの動物も同じだが、動物たちは自分たちで健康を保つ方法をちゃんと知っている。ちなみにオスはこのときメスたちの安全を確保するためにすっくと立ち、目を光らせ、メスは安心して砂浴びに興じる。

驚かれることも多いが、鶏の知能は、犬、チンパンジー、ゾウ、イルカ、さらに人間のような高度に知能のある種と同等と言われる。100羽の仲間の顔を見分けることができるし、色や形を見分け数を数えることもできる。未来に起こりうることを予測する能力もある。2017年1月2日、科学雑誌Animal Cognitionに掲載された神経科学者のLori Marinoによる論文では、鶏の持つ高い知覚・認知能力があり、たとえば以下のような能力が明らかにされた。

・鶏は数と基本的な算術を理解している。

・鶏は考え、論理的推理をする能力を持っている。たとえば、彼らは演繹(えんえき)という論理的思考を行う能力があり、これは人間が約7歳で発達する能力である。

・鶏は時間間隔を知覚し、将来の出来事を予測できるように見える。

・鶏は人間に似た複雑な方法で社会的スキルとルールを学び、行動的に洗練されている。

ともに暮らすとよく分かるが、鶏のコミュニケーション能力の高さには驚かされる。仲間を思いやったり、お世話したりする行動も見せるし、親友を作ってともに行動する様子も見られる。

現在の日本の卵生産は、これらの本能や能力をすべて奪っている。

日本の卵の99%以上は、バタリーケージという狭い金網のケージで生産される。鶏1羽に与えられる面積は自分の体よりも小さく、ほとんど身動きがとれない。一列に並ぶことも出来ないため、1羽が餌を食べている時、別の鶏は後ろでじっと待機する。体が押さえつけられて身動きがとれないまま長時間も我慢している姿や、仲間に押しつぶされている姿を私たちもよく見かける。

羽をばたつかせると金網にぶつかり骨折し、地面を歩かないために長く伸び切った爪が隙間に挟まり足を骨折し、腫れあがり内出血し、もちろん痛い。体が隙間に挟まり、動けなくなったまま餓死する鶏もいる。ケージの中ではやることがなく、自分の足をつついたり、食べていないのに餌をつつき続けたりという異常行動を起こしている。

近年は外の光が入らないウィンドレス鶏舎が増加し、開放鶏舎という外との仕切りはカーテン程度の鶏舎は減少している。それぞれ悪い所がある。ウィンドレス鶏舎の場合、まずその空気のひどさだ。防塵マスクなしでは長くは居られない。

糞尿の臭い、鳥たちの脂粉、糞が乾燥したホコリ、ファンのゴーッという音と、何万も詰め込まれている鶏が金網を踏むカチャカチャという音が響き渡る。ちなみにウィンドレスといっても、野生動物や猫、ハエやゴキブリが普通に這い回る。鳥インフルエンザを防ぐと誤解されがちだが、日本の鳥インフルエンザの多くがウィンドレス鶏舎かセミウィンドレス鶏舎で起きている。

外気の入らない鶏舎では糞にはウジが湧きやすい。なにより、その密閉された薄暗い空間の異常性は、すべての動物を精神的に追い詰めるだろう。

開放鶏舎の場合はそのケージの狭さがひどい。1羽または2羽ごと収容するためほぼ拘束状態で身動きが取れない。彼女たちは羽根を少しも広げることなく一生を終えるだろう。1羽ごとの場合は仲間との交流もできない。

いずれの鶏舎も、鶏たちは運動ができない。運動ができなければカルシウムが不足したり身体機能は弱る。放牧(屋内と屋外を自由に行き来できる飼育)の鶏と比較すると、ケージの鶏の骨の厚みは2分の1から3分の1まで薄い。私たちが2016年に保護した鶏たちも、骨が薄くなりすぎてレントゲンにほとんど映らなかった。

カルシウムが不足する理由はもう一つある。本来鶏は年間10~20個程度しか卵を産まないにも関わらず、品種改変により年間300個も卵を生むようになってしまった。カルシウムと栄養素を毎日奪われつづけ、骨や子宮や卵巣がぼろぼろになる。

これが、日本人が年間平均337個食べている卵生産の実情だ。

OIE(世界動物保健機関)は、動物の利用には、可能な範囲で倫理的責任を果たす義務があることを陸生動物規約の中に明記している。採卵鶏の場合、このバタリーケージは非倫理的であることが明らかであり、世界中が廃止していっている。EU、スイス、ニュージーランド、ブータン、インドなどは法的に禁止を決めている。アメリカの5つの州で、2022~5年以内にケージ飼育の卵を州内で販売してはならないと決定している。

大手ファーストフード店やスーパー、加工食品企業など1800社以上がケージフリー宣言をしており、欧米では2025年までにケージ飼育の卵はほとんどなくなっていくだろうと予測される。南米や南アフリカ、中国や韓国、シンガポールやタイなどの企業がこれに続いている。日本でもこの数年間でケージ飼育をやめ平飼いに切り替えることを宣言している企業が複数出てきた。ヒルトンやインターコンチネンタル、コストコ、スターバックス、その他日本のホテルなどだ(注5)。

肉用の鶏はどうか。

基本的に肉用鶏は平飼いだが、超過密だ。日本での過密度合いは、EUの平均1.4倍、最大1.78倍であり、日本がたくさんの鶏肉を輸入しているブラジルと比較すると平均1.64倍、最大1.88倍に及ぶ。過密だと、日に日に足元の砂が糞尿でどろどろになっていき、砂浴びができなくなり、少し動こうとしても仲間がどかなくては動けないという状態になる。足元が糞尿であると足の裏が焼けただれる。生後40日、50日の赤ちゃんの足の裏と膝関節部分が炎症で焼けただれ真っ黒になっているのだ。

品種改変でも苦しんでいる。本来鶏は150日ほどかけて大きくなる動物だが、50日で大きくなるように品種改変させられてきた。骨と肉だけが急激に成長し、体を支えることができない。ブロイラーたちはポテポテと不器用に歩き、どてっと尻餅をつくように座り込む。歩行困難、腹水症、心臓疾患などになりやすいことが指摘されている。

イギリスの研究では、ブロイラーの30%近くは体を支えることが難しく歩行困難になり、3%はほとんど歩行不能となり、100羽に1羽は心臓疾患で死亡することが報告されている。「ブロイラーの1/4は、一生の1/3を慢性的な疼痛の中で生きているだろう」という研究者もいる(注6)。50日で屠殺されるが、そのとき鶏たちは体だけが大きい赤ちゃんであり、まだぴよぴよと鳴いている。

欧米、タイなどを中心に、改善が進んでいる。ベターチキンコミットメントという、飼育密度を大幅に改善し、品種改変が進みすぎない多少自然な品種を選択し、とまり木などエンリッチメントを入れ、自然光を入れ、屠殺方法も現在最も人道的と言われるガスで気絶させる方法をとるという基準を、企業が約束するようになっている。北米のバーガーキングや英国などのKFCなど290社(2020年4月時点)がそれを2026年までに達成すると約束している。

日本も一部の地鶏などはこれらの基準をすべてではないがクリアできる。しかし、日本産の鶏肉のほとんどはそうではない。

豚はどうだろうか。

子豚を生む機械として扱われる母豚の飼育が世界的な課題である。彼女たちは自分の体の大きさと同じ大きさの鉄の柵=妊娠ストールに入れられ、身動きがとれない状態で飼育される。この妊娠ストールを使用している養豚場が90%に及び、この割合が日本では増加している。顔を動かせるのは左右45度づつ程度のみで、真横を向くことすら出来ない。

豚は日中の75%を探索し遊び泥浴びをし活発に動き回る動物であるにも関わらず、この妊娠ストールの中では何一つやることがない。彼女たちにできることは、時々落ちてくる餌を食べること、水を飲むこと、目の前の鉄棒をガリガリと噛みつづけることと、食べ物がないのに口をもぐもぐと動かし続けることだけだ。口を動かし続ける豚の口の周りには白いよだれの泡が溜まる。しかもできるだけ少量の餌で済まそうとする生産農家は、この環境の豚にとって唯一の楽しみであろう餌を制限するところも多い。

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