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「棋士は遅い時間になればなるほどテンションが上がる」AbemaTVトーナメントの舞台裏 ABEMA将棋チャンネルプロデューサーに聞く #2 - 宮田 聖子

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藤井聡太棋聖の活躍で人気チャンネルに 歴代1位の視聴数を叩き出した対局とは から続く

 新型コロナウイルス感染症流行によって将棋イベントはのきなみ中止、タイトル戦が延期される中、将棋ファンの話題の中心になったのは4月4日から放送されている第3回AbemaTVトーナメントだった。

 インタビュー後半では、誕生までのいきさつや、裏話、そしてこれからやってみたい企画などについて聞いてみた。

(全2回の2回目。#1を読む)

※文中の段位などは、インタビュー当時のものです

◆ ◆ ◆

将棋を観て楽しむという文化の間口を広げたい

――AbemaTVトーナメントは、第1回から超早指しで行っています。羽生善治九段(当時竜王)のアイディアとのことですが、この企画が誕生したいきさつを教えてください。


過去に麻雀プロの資格を持っていたゼネラルプロデューサーの塚本泰隆さん

塚本 AbemaTVトーナメントや、炎の七番勝負など特別番組に共通していることとして、将棋を観て楽しむという文化の間口を広げたいという思いがあります。ニコニコ動画さんが先に将棋番組を配信していて、将棋を観る文化というのはありました。それをもっと広げたい。もともとの将棋ファンだけでなく、ちょっと興味があるくらいの人にも見てもらいたいし、ABEMAは若者に親しまれているメディアなので、若い層にも見てもらいたい。

 持ち時間5分で1手指すごとに5秒増えるフィッシャールールは、羽生九段から「時間の短いルールでやるのも面白いのでは」と話があり、取り入れることにしました。羽生九段の親しんでいるチェスで導入されているルールということでした。長時間考える将棋はもちろん魅力的ではあるけれど、超早指しならば、幅広い層が気軽に楽しめるライトな将棋番組が作れる。新たに「将棋って面白い、楽しい」と気付いてくれるきっかけとなるのではないかと考えました。

――第3回は3人の団体戦という新しい試みになりました。団体戦にした理由はなんでしょう。

塚本 私は2018年の麻雀のMリーグの立ち上げ、中継にも関わっています。Mリーグは企業がチームを持つ形でトップ選手のチームで争います。チームのために戦う姿、勝った仲間をハイタッチで迎える様子など、大きな反響を呼び大人気となっています。将棋も麻雀も頭脳スポーツという点では共通しており、将棋でも団体戦を取り入れたら、盛り上がるのではないかと考えました。

――チーム紹介ビデオが評判になりましたね。稲葉陽八段の「恋愛の失敗談」では「高校時代に連絡先を聞いた女の子の彼氏が不良で、不良グループに囲まれ、この世の終わりかと思った」とびっくりするようなエピソードが明かされたり、笑ってしまう話が次々に出てきました。

谷井 チーム紹介映像では、棋士同士で、恋愛のことなどきわどい質問をしてもらうパターンがよくありました。こちらとしては、濁していただいてもかまわなかったのですが、ストレートに答えてくれました。「普段できないことができたから、いい経験になった」と言って下さる棋士もいましたし、楽しい雰囲気の作品となり視聴者からも大変好評でした。

棋士の新たな魅力も伝えたい

――作戦会議や、仲間の対局を見守る控室の様子を映すのも評判になっています。

塚本 これもMリーグでの知見が大きいですね。Mリーグでは、裏側を見せることで、選手の関係性や人間性が伝わり、ファンが増えました。AbemaTVトーナメントは早指しで大逆転とか何が起こるか分かりません。チームメイトの対局を見ての反応や、応援する様子、棋士同士のやりとりを見せることで盛り上がり、棋士の新たな魅力が伝わり、ファンが増えるという確信がありました。

――出演した棋士一人ひとりの人気が出るような演出で、藤井聡太七段の人気だけで終わらないようにしたいという意図もあるのですね。対局の合間に流すビデオでは石井健太郎六段「優勝賞金の使い道は?」、近藤誠也七段「師匠に差し上げます」、渡辺明三冠「そんなわけないだろう!」というようなチームでのコントも披露されました。Abemaドリームチームでも羽生善治リーダー(九段)が三枚堂達也七段のボケに「そっちじゃないだろう」とツッコミを入れ、「ちょっと無茶ぶり?」と思ったことも。棋士の皆さんの反応はいかがでしたか?

塚本 恥ずかしがってNGになったり、噛んでうまくいかなかったりもありませんでした。むしろ、予想以上に皆さん楽しんでやってくださいました。こちらの「皆さんのファンを増やしたい」という思いを理解して、自分が注目してもらえる良い機会ととらえてもらったと思います。

――サイバーエージェントでは新卒採用にも、ドラフト制度を取り入れていると聞きました。今回のトーナメントでドラフトを実施したのは、そんな背景もあったのですか。

塚本 採用だけでなく、ドラフトはサイバーエージェントの文化として根付いている制度で、藤田社長が積極的に取り入れてきました。ドラフトのように選択をするということが、ドラマを生むという確信があったので、日本将棋連盟さんに今回はドラフトを取り入れたいと話をしました。最終的に、タイトルホルダーとA級の棋士の皆さんにドラフトをしていただくことができました。

棋士の皆さんが、個性あるチームになるように考えてくれた面はあると思います

――黄色いジャンパーを着て3人で指宿観光をする様子が竜王戦のブログで紹介された、豊島将之二冠、佐々木勇気七段、斎藤明日斗四段のチーム「GOOD BOYS」や、同級生3人の木村一基王位、行方尚史九段、野月浩貴八段のチーム「酔象」など、ファンが喜ぶ特徴のあるチームがそろいました。指名はすべてリーダー棋士にお任せだったのでしょうか。

塚本 もちろん、誰を指名してくれとか頼んだりしていません。ただ、棋士の皆さんが、個性あるチームになるように考えてくれた面はあると思います。ドラフトで指名があまり重ならず、くじの出番が少なかったのは意外でした。こちらは6人くらいで並んでくじを引くシーンを想像していたのですが(笑)。棋士なので、いろいろ他チームの指名を読んだり裏をかいたりしたのでしょうね。

――藤田社長も「Abemaドリームチーム」の総監督として出演されましたね。

塚本 羽生九段と藤田はABEMAができる前から親交があります。羽生九段のアイディアを生かしたAbemaTVトーナメントをどのようにするかは、第1回からずっと藤田と相談しながら進めてきました。今回は、総監督として作戦会議室にも登場し、羽生九段vs藤井七段の対局では「羽生さんが負ける姿って見たくないですね。藤井君が勝つ姿は見たいのだけど」と。チームは負けてしまいましたが、第3回全体は「立ち上がって観ることがあるくらい面白い」と評価していました。

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