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新型コロナで景気悪化、それでも家賃が上がっているワケ

コロナ禍で景気悪化が著しい。

内閣府が7月7日に発表した5月の景気動向指数(CI、2015年=100)の速報値は景気の現状を示す一致指数が4カ月連続で低下し、前月比5.5ポイント低い74.6に。総務省が6月30日に発表した5月の労働力調査では完全失業率(季節調整値)が前月から0.3ポイント上昇し、2.9%と3年ぶりの高い水準となっており、緊急事態宣言で急増した休業者423万人が失業に移行すると来年前半には6%台に及ぶという予測もある。

ところが、不思議なことに家賃は下がっていない。それどころか、アットホーム株式会社が6月29日に発表した全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2020年5月)を見ると家賃は上がっているのである。同ニュースリリースの冒頭にある全体概況は以下の通り。

●首都圏のマンションの平均募集家賃は、東京23区・神奈川県・埼玉県が全面積帯で前年同月を上回り、神奈川県・埼玉県は前月比も上昇。
●名古屋市・福岡市のマンションの平均募集家賃は、全面積帯で前年同月を上回る。
●アパートの平均募集家賃は東京23区・仙台市・名古屋市・大阪市・福岡市で全面積帯とも前年同月を上回る。

細かくデータを見ていくと地域、物件によっては前月比では多少の下落があるものの、全般としては横ばい、上昇が大半で、特に東京23区、埼玉県、福岡県福岡市のマンションでは3%以上の上昇が目に付く。

同社のデータだけではなく、他のデータではどうかと公益財団法人東日本不動産流通機構が出している首都圏賃貸居住用物件の取引動向で2020年1~3月分と2019年10~12月で㎡単価を比べてみても結果はほぼ同じ。千葉県、神奈川県の一部でごくわずかに下がっている物件、地域はあるものの、全体としては上がっているのである。

スルガショックで新築物件にブレーキ

BLOGOS編集部

これには大きく分けて2つの要因がある。ひとつは賃貸住宅の着工数が2018年以降延々と減り続けてきていること。2018年に発覚したスルガ銀行による不正融資で不動産投資に急ブレーキがかかり、そのままの状態が今も続いているのである。持ち家は2019年8月以降、分譲マンションは2019年11月以降、いずれも着工数は減ってきてはいるが、減少率なども合わせて比べてみると賃貸住宅の着工は持ち家よりも大きく減っているのである。

一方で首都圏に流入する人口は減ってはいない。 2020年06月11日に東京都総務局は東京都の人口が推計で1400万人を超えたことを発表しており、さすがに5月は減少しているものの、2020年4月までは例年同様に人口流入があったのだ。

そのためか、2020年は年明けから「弾切れ」という言葉をよく聞いた。部屋を借りたいと不動産会社を訪れる人は一定数以上いるものの紹介できる物件がないというのである。それ以降、コロナ禍で工事がストップしていた現場があることを考えると、近々に家賃が下がる可能性は低い。

東京23区の家賃は有効求人倍率に影響を受ける

写真AC

だが、可能性がないわけではない。賃貸住宅市場レポートなど各種の不動産情報を手がけるタスの主任研究員・藤井和之氏によると東京23区の場合、賃料は求人倍率等に強い影響を受けているという。

「日本の場合、賃料は景気動向と連動しておらず、景気悪化にかなり遅れて動きます。多くの契約が2年となっており、その間に家賃が変動することがないためで、これを賃料の粘着性、遅行性などといいます。

ところが、各種データを検証してみたところ、東京23区の賃料動向は求人倍率などに強い影響を受けています。リーマンショック時も求人倍率が1倍を切って1年ほどで賃料が下落しており、今回も求人倍率が1倍を切った辺りから下がるかもしれません」。

2020年2月に1.45倍だった求人倍率(除学卒)は3月に1.39倍、4月に1.32倍と下がってきており、5月には1.20倍に。このまま下がり続けた場合には賃料が下がる可能性が出てくるかもしれない。

コロナ不況で家を買う人が減る可能性も

写真AC

ただ、リーマンショック時とは異なる状況もある。先行きの見えないコロナ禍下でこのまま着工数が減り続けるかもしれないという可能性。そして、もうひとつは住宅を買う人の減少で賃貸住宅の需給がさらにひっ迫するかもしれないという可能性だ。

「ニュースではこの夏のボーナス減少が取り沙汰されていますが、夏に留まらず、冬はもっと下がるかもしれませんし、給料そのものが下がる可能性も。となると、住宅のような大きな買い物は控えようと思う人が増え、現在の賃貸住宅に住み続けることに。当然、住宅の数が足りなくなるので、家賃は今後も下がらず、住替えもそうそう簡単には行かなくなるかもしれません」。

リクルート住まいカンパニーやライフル、デベロップジャパンなどの調査によると、自粛期間中にテレワークを経験した人たちは住替えを希望する人が少なくない。だが、しばらくは借りるにせよ、買うにせよ、そうそう簡単には動けない状況が続くかもしれないのである。

ちなみに、こうした状況下にあって今後、多少変化が期待できそうなのは東京23区の周縁部や東京市部、横浜の湾岸エリアなどのコンパクトなワンルームの多かったエリアと藤井氏。「狭さ、古さが敬遠されて空室の多かったエリアですが、家賃の手頃な部屋に住替えたいニーズを考えると、こうしたエリアに目を向ける人が出てくるかもしれませんね」。

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