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dancyu編集長が教える「吉野家の牛丼を最高においしく味わう食べ方」

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かつカレーは「右から2番目」から食べる

かつカレーは、とんかつとカレーの融合です。とんかつのサクッとした旨さとカレーのスパイシーな味わいを楽しみつつ、融合の美味を楽しむものなのです。そのため、多くのかつカレーは、とんかつの手前半分くらいにカレーがかかったスタイルになっています。ロースかつの場合、通常は奥側が脂身、手前が肉になるように置かれています。つまり、脂身が多い奥の部分はカリッとした衣で軽やかに食べることができ、手前の肉部分にはカレーがかかって濃厚な旨味を楽しめるのです。天才的な構造ですね!

これをより美味しく食べるには、カットされたとんかつの「右から2番目」のパーツから左へと食べ進めていきます。


イラスト=中村隆

単体のとんかつの場合は、「左から3番目」あたりの肉と脂身のバランスが最適なところから食べ始めるのが王道ですが、かつカレーの場合は、カレーが加わることでこの部分の旨味が強くなってしまい、最初の一口としてはインパクトが強すぎます。そこで、脂身の少ない右側から脂身の多い左側へと食べ進むことで「淡→濃」という味わいのグラデーションを楽しむのです。

ソースをかける場合はとんかつの断面に

なぜ、「右から2番目」なのか。「一番右側」は衣に覆われていて(店によってはほぼ衣状態)、とんかつとしてはバランスが悪いので、最初にカレーをかけて皿の端に置いておき、最後に食べます。衣たっぷりのとんかつをカレーの“ヅケ”にしておくのです。衣とカレーが一体化して、混沌とした状態を味わうのもかつカレーの醍醐味。最後に、この罪悪感たっぷりの本能的旨さを堪能しましょう。そのために2番目から食べ始めるのです。

もちろん、これらはご飯と一緒に食べ進めるのですが、とんかつの脂身の強さやカレーのスパイシー加減などに合わせて、ご飯やカレーの量を調整します。

さらに上達したら、①ご飯の上にカレーがかかったとんかつをのせる、②とんかつの上にご飯とカレーをのせる、③カレーとご飯を混ぜてからとんかつをのせる……といった応用もこなせるはずです。また、途中でちょっと口を変えたい場合に、塩やソースを使う高等技術もありますが、特にソースの場合は、衣にかけずにとんかつの断面にかけてください。そうすることで、衣の香ばしさを失うことなく、味に奥行きをつけることができます。

鰻重は「スライド」と「山椒挟み」

鰻重は、通常は横向きに鰻が置かれていて、手前に上半身、奥に下半身が置かれています(鰻が一尾入っている場合)。手前の左側が頭方向で、奥の右側が尻尾方向というのが一般的です。鰻は、頭の近くは身質がきめ細かく、腹の辺りは一番脂がのっていて、尻尾のほうは身が締まっています。ということは、頭のほうから尻尾に向かって食べていけば、ふわっとした食感から入り、徐々に脂の旨味を感じてピークに向かい、その後、しっかりした身の味わいを楽しんでフィニッシュ、という理想的な展開が実現します。つまり、鰻重は手前の左から右へ、奥の左から右へと食べ進めばいいわけです。

植野広生『dancyu“食いしん坊”編集長の極上ひとりメシ』(ポプラ新書)
植野広生『dancyu“食いしん坊”編集長の極上ひとりメシ』(ポプラ新書)

鰻丼はかき込むように食べるのが醍醐味ですが、鰻重はできるだけ美しく食べたい。ご飯粒があちこちに散らばった状態で食べてしまっては興醒めです。そこで、まず手前左側(鰻の頭側)に箸を入れ、鰻とご飯一口分をすくい取ります。次に、その右隣の一口分に箸を入れ、お重の左側の縁まで“スライド”させて食べます。お重の“壁”に“当てる”ことで鰻とご飯が崩れずに食べられるのです。これを繰り返せば、手前半分を綺麗に食べることができます。次いで、奥の半分も同様に左側からスライドさせて食べ進めます。こうすると、無計画に箸を入れた結果、食べ散らかして残ったご飯粒を箸でかき集めるような事態になることはありません。

ただ、これは右利きの場合。左利きの方は、お重を反転させて手前と奥を逆にしてください。そして奥の右側から“スライド食べ”をしていけば、同じように鰻の頭から尻尾へ、美しく食べることができます。

また、うな重の蓋を開けるとすぐに山椒を満遍なくふりかける方もいますが、これはいただけません。鰻が山椒の香りに支配されてしまいます(本当に美味しい鰻なら山椒は要らないくらいです)。

まずはそのまま食べ、もっとも脂がのっている手前の右側や奥の左側あたり(鰻の腹のあたり)まで食べ進んだら、山椒を使います。それも、上から山椒をふると、食べたときに口の中が山椒の香りになってしまいます。そこで、鰻をめくってご飯の上にふります。鰻とご飯の間に山椒をふることで、鰻の香りや味を感じた後から山椒の香りがふわっと来るようにするのです。

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植野 広生(うえの・こうせい)

dancyu編集長

1962年、栃木県生まれ。法政大学法学部卒業。上京後すぐに、銀座のグランドキャバレー「モンテカルロ」で黒服のアルバイトを始める。その後、鰻屋や珈琲屋、アイスクリーム屋など多数の飲食店でアルバイトを経験。卒業後、新聞記者を経て、出版社で経済誌の編集を担当。その傍ら、大石勝太(おおいし・かつた。「おいしかった」のシャレ)のペンネームで「dancyu」「週刊文春」などで食の記事を手掛ける。2001年、プレジデント社に入社、以来「dancyu」の編集を担当し、2017年4月に編集長に就任。趣味は料理と音楽。食と音楽のイベントを手掛けるほか、ラジオパーソナリティーなど幅広く活動。「情熱大陸」「プロフェッショナル~仕事の流儀~」などテレビやラジオの出演多数。

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(dancyu編集長 植野 広生)

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