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密室の安倍内閣 コロナ会合の議事録を未作成

「議事概要」だけでは検証不能

安倍政権がコロナウイルス対策の記録を十分に残していないことが明らかになってきた。検証不能で教訓が残らないため、次の感染拡大への対応がまた後手に回る恐れがある。

端緒は5月、共同通信が専門家会議の議事録が未作成だと報じたことだった。政府は議事録の簡易版である「議事概要」をウェブ公表しているが、発言の全てを記した議事録は別に残されていると認識されていたため、大きなニュースとなった。

議事概要にある発言は抜粋で発言者名も伏せられている。これでは、政府にとって不都合な意見が意図的に省かれたり、密室をいいことに政府方針を追認するだけの無責任な発言が相次ぐ恐れがある。

日本のコロナ対策には「謎」がある。PCR検査の対象者を重症者に限定した対応だ。政府は「限られた医療体制の中で医療崩壊を防ぐためだった」とするが、国民の中には「五輪開催にこだわり、入国制限の遅れも隠したいから、意図的に感染者数を少なく見せようとしたのでは」という疑念がくすぶる。

詳細な議事録がなければ、こうした疑念は払拭(ふっしょく)できず、次の感染拡大に備える効果的な対策はつくれない。世論の批判が高まった。

政府は押し切られる形で、6月12日の第16回の専門家会議からの「議事概要」には発言者名を記載することや、第1回の会議からの速記録を10年後に国立公文書館に移管して原則公開することを約束した。だが、この約束には「カラクリ」がある。感染が拡大する中で重要な対策が話し合われた第1~15回の会議の議事概要の作り直しはしない。つまり、肝心の会議の中身は速記録が開示される10年先まで分からないのだ。

だが、コロナ対策の記録をめぐる最大の問題は、政府の意思決定過程が分かる会議録が残されていないことだ。
官僚作文のセレモニー

まず、安倍晋三首相を含む全閣僚が出席して対策を正式決定する「対策本部」の議事録の問題だ。官邸はウェブで公開しているが、読めば誰もが違和感を覚えるはずだ。質疑がなく、各大臣が官僚の作文を読み上げているだけだからだ。

例えば、3月28日の対策本部では、クラスター対策や医療体制整備を強化する基本的対処方針が決まった。議事録を読むと、担当大臣と専門家代表の尾身茂氏から報告があった後、菅義偉官房長官が「対策本部として決定したいと思いますが、よろしいでしょうか」と発言。「異議なし」の声が上がり、最後に安倍首相が官僚の作文を読み上げて終わっている。つまり「セレモニー」なのだ。

政府のコロナ対策はどこで決まるのか。その一つは、対策本部の前に官邸の首相執務室で開かれる「連絡会議」だ。首相や一部の高官で議論が交わされ、学校の全国一斉休校もここで決まったとされるが、その記録はやはり「議事概要」しか作られていない。

政府は6月、連絡会議の議事概要を蓮舫参院議員(立憲民主党)の請求に応じて開示した。2月15、26、27日の3日分で、出席者を見ると、安倍首相、菅官房長官、関係閣僚らに加え、杉田和博官房副長官、北村滋国家安全保障局長、今井尚哉、長谷川栄一両首相補佐官ら安倍氏側近の「官邸官僚」が勢ぞろいだ。

3回の会議の時間は20~50分とあるが、議事内容の記載は6~19行。各省の報告内容が簡単に書かれているだけだ。質疑の記述はなく、首相や高官が会議中にどんな意見を述べ、どんな指示を出したのか全く分からない。

政府は、今回のコロナ禍を公文書管理ガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定し、対応から得られた教訓を将来に残せるよう詳細な記録を残すとしている。だが連絡会議は「決定を行なう会議ではない」として詳細な議事録を作る対象から外している。

3・11の教訓はどこへ

この「歴史的緊急事態」の仕組みができたのは、2011年3月11日の東日本大震災で当時の民主党政権が対策会議の議事録を残していなかった反省からだ。

当時、野党だった菅官房長官は自身のブログにこうつづった。

「千年に一度という大災害に対して、政府がどう考え、いかに対処したかを検証し、そこから教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録はその最も基本となる資料です。それを作成していなかったのは明らかな法律違反であるとともに、国民への背信行為です」

麻生太郎副総理も当時、民主党をこう批判していた。「失政を隠ぺいするために(議事録を)作らせてないのか。疑いをもたれるのも当然じゃないか」。

いずれも金言だ。今こそ実行に移すべきだ。

 【政府のコロナ対策と公文書管理】 政府のコロナ対策会議は主に4つある。①首相を本部長に全閣僚で方針を決める「対策本部」②首相ら一部の高官らが実質的な議論を行なう「連絡会議」③対策本部に医学的な見地から助言を行う「専門家会議」(分科会に以降)④政府が緊急事態宣言の可否を専門家に諮る「諮問委員会」。
政府は①の対策本部と④の諮問委員会は議事録を作成。②の「連絡会議」と③の「専門家会議」は簡易版の議事概要を作成する。このほか、首相を含む高官は少人数で頻繁に打ち合わせているが、記録を作っても公文書として扱われていない可能性が高い。

(社会新報2020年7月15日号)

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