- 2020年07月14日 16:51
自民4戦全勝だった都議補選、来年の都議本戦に向け本当に勝ったのはあの政党
1/2都知事選については先日、高橋亮平のコラムでも『データで見る都知事選と、永田町で噂される9月解散総選挙・小池総理の可能性』と書かせてもらったが、今回は、同日に実施された東京都議会議員補欠選挙について、データから来年実施される都議選の本選などについて想定しながら、今回の都議補選の真の勝者は誰だったのかを考えてみたい。
今回、都議補選が行われたのは、大田区、北区、日野市、北多摩第三の4選挙区。大田区と北区は、維新の柳ヶ瀬議員と音喜多議員が共に参議院選挙への転身で辞職して欠員になった議席を、日野市は、自民の古賀 元議員の死去による欠員、北多摩第三は、共産のいび 元議員の辞職による欠員となった議席を、それぞれ補うために実施されたものだった。

元々議席を持っていた政党からすれば、その議席は守りたいものとも考えがちだが、複数議席を争う本選の都議会議員選挙と、欠員となった1議席を争う補欠選挙とでは、その情勢は大きく異なる。
先日のコラムにも書いたが、自民党にとっては、今回の4つの都議補選に全勝したことで、早期解散への追い風が吹き始めている。
1議席を争う都議補選は、2021年に行われる都議選の本選より、衆議院選挙の小選挙区の構図と似ている。
選挙で自公が連携すれば勝てることが見えたことが、衆院選における小選挙区での勝算が見えてきことが背景にあるからだ。
さて今回は、そんな都議補選を来年の都議本選でどう影響するのかという視点で、あらためて選挙区別に見ていくことにしたい。

まず最初は、定数8と都議選の中でも最大となる大田区から見ていこう。
先述の通り、2017年の都議選で唯一の維新の議席だった柳ヶ瀬議員が、参院選出馬のために辞職して欠員となった1議席を争うことになった選挙に、自民党の元職の鈴木氏のほか、野党共闘候補として立憲の松木氏、維新の松田氏など今回の4補選で最多の6候補が乱立した。
結果の得票だけを見ると、自民の鈴木氏が11万票を獲得して圧勝という形にも見えるが、次回都議選を考えると、鈴木氏にとっては、非常に厳しい結果とも言えるかもしれない。
前回行われた2017年の都議会議員選挙は、小池知事による都民ファーストブームが起こった選挙であり、自民党にとっても、民進党にとっても大変な逆風の中で行われた選挙だった。

大田区での都議選、都議補選の得票を政党ごとに推移で見ていくと、2013年に自民・公明を合わせると13万票獲得していたものが、2017年の逆風の中で自民党単独では2万票ほど減らしているが、公明党が5千票ほど増やし自公では12万票と微減。
これが今回の補選では、自公連携の中にあったにも関わらず、自民候補の鈴木氏が獲得したのは、さらに1万票少ない11万票だった。
野党共闘の枠組みについても見ていこう。
都議選本選においては、旧民主党系と共産党はこれまで連携することはなく、むしろ単独政党としてそれぞれ所属候補で戦ってきたわけだが、この民主系候補と共産系候補の得票を足して仮に野党共闘票としてその得票の推移を見ていくことにする。
2013年の都議選では、民主候補と共産候補の得票を足すと5万5千票ほどだったが、2017年の都議選では共産党が躍進したこともあリ6万票ほどに増えていた。
これが今回の都議補選ではさらに上乗せし、7万票ほどに伸びた。
このことから考えると、立民候補は3着になったものの、2021年の都議本選では野党共闘枠で2議席、上手く枠配分すれば3議席の可能性すら見えてきたようにも見える。
しかし、そうは言っても野党共闘で今回積み増ししたのは1万票ほど。
今回の大田区における都議補選で各党が本来めざすべきは、2017年の選挙で都民ファーストが獲得した9万票ほどをどこが上積みできるかということだったはずだ。
この争いは、結果的には、維新の1人勝ちだったことが見えてくる。
維新は、2013年の都議選では2人擁立で2万5千票以上獲得していたが、2017年の本選では柳ケ瀬氏に1本化したことで2万票ほどに減らしたものの維新唯一の都議会の議席を確保したのがこの選挙区となった。
この票が、今回の都議補選では一気に8万票ほどまで約4倍に伸びているのだ。

今回の自民党候補の11万票を自公連立が最大限に機能した票だとすると、この内約5万票は公明党の票ということになる。
今回の補選で鈴木氏が当選したことで自民党の現職は3人になったわけだが、3人で6万票しかないと考えると、現職とはいえこの票数だけでは3人全員の当選は非常に厳しい状況になる可能性が高い。
候補者を2名に絞れば確実に当選できるだろうが、今回の補選で現職が3人に戻ったことで、逆に本選に大きな課題が生まれた可能性もある。
この大田区の情勢だけで言えば、小池知事や都民ファーストがどうなっていくのか、自民党の関係性などにも大きく左右されることになりそうだ。
一方で維新は今回の得票だけ見れば3議席を取れるだけの得票。
本選には都民ファーストの現職2人が出てくるほか、来年の都議選までには政界再編なども含め、この枠組がどうなって行くかはわからないが、維新と都民ファーストを合わせて2議席はほぼ確定、3議席も見えてきている。
今回の得票だけ見ると、大田区は維新で松田氏ともう1枠合わせ2議席も固くなってきているのではないだろうか。

野党共闘の方も2から3枠を争う構造になりそう。
共産は2人擁立しても当選は現職1人、立憲も松木氏に1本化すれば1議席は確実だと思える。
不確定要素としては、今回の都知事選でも一定数の得票のあったれいわなども候補者を出せば議席を獲得する可能性があり、その擁立の仕方によっては立憲は影響を受ける可能性もある。

では続いて2つ目の選挙区、北区を見ていこう。
北区の都議会本選は3議席、2013年の都議選では4議席から2017年の都議選では3議席に減ったことで激戦となり、現職の自民党都議が落選し、3議席の選挙区でありながら自民党が議席を持たないという2017年の都議選の象徴的な選挙区の1つとなった。
ちなみにこの落選した都議は、その後の衆議院選で比例当選し、現在は衆議院議員になっている。
今回の都議補選は、現職だった音喜多議員が、参院選出馬のために辞職して欠員となった1議席を争うことになった選挙に、自民党の山田氏、都民ファーストの天風氏、維新の佐藤氏、立憲の斉藤氏など5人が立候補した。
維新の参議院議員となった音喜多氏の議席であることから維新としても重要選挙区だが、2017年当時音喜多氏は都民ファーストに所属して取った議席でもあり、都民ファーストとしては現職のいない選挙区ということで今回の補選で唯一新人候補を擁立した。
結果は、自民党の山田氏が5万票を獲得したわけだが、次回都議選を考えると、この選挙区の山田氏にとっても、非常に厳しい結果とも言えるかもしれない。
北区での都議選、都議補選の得票を政党ごとに推移で見ていくと、2013年の都議選では自公候補の得票数を合わせると6万3千票、2017年は自民党は5千票減らして現職を落選させたが、公明党は6千票増やしており、自公でも6万4千票と増やしている。
ところが今回、この自公票は5万2千票へと1万2千票も減らしているのだ。
一方で野党共闘の方も、2013年の都議選の民主票と共産票を合わせると4万5千票あったものが、2017年の都議選では3万8千票に減らし、今回の都議補選ではさらに3万6千票へと減らしている。
今回の北区の補選で最も注目されたのが、都知事選の小池知事とのセットで選挙を行なった際に都民ファーストがどれだけ取るかというところだったが、大方の予想通り不発に終わった。