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不倫容認派も混乱する「渡部不倫」は何が問題だったのか

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キャラクターとふたりでさまざまなポーズをとってくれたのだが、こういう場合、取材側の立場でいえば「あのタレントはすごくサービス精神があるなあ」と感心するものだ。ところが筆者には微妙な違和感があった。なぜか渡部氏が楽しそうに見えなかったからだ。

キャラクターに接するとき、人は思わず本性が出るものだ。世間にはいい顔をしながら、カメラが回っていないところではキャラクターに冷たい有名人、政治家はたくさんいる。興味がないなら、最初から無関心でいればいいのだが、カメラが回っているところではつい、「キャラクターにもやさしい自分」を演じてしまうのだろう。

最低限の「人への敬意」と「一瞬の愛」が欠けていた

だが、渡部氏の態度はそれとも少し違っていた。キャラクターに近づいたのは彼のほうだからだ。ハイタッチでもしながらすれ違ってしまえばそれですんだ。わざわざ寄ってきたのは彼なのに、心から楽しんでハグしているようには見えなかった。

そのときふと思ったのは、「彼は、キャラクターに自ら近づいていく自分が好き」なのではないかということだった。

今回の一件でも、彼には女性を支配したいとか、モテている自分の力を見せつけようとか、そういう気持ちはなかったのではないかと思う。ただ、「連絡すればいつでもどこでもやらせてくれる女がいる自分が好き」なのではないだろうか。

努力を重ねて売れっ子になった彼は、その努力の過程で人への最低限の敬意や感謝をどこかに置き忘れてしまったのかもしれない。それだけ過酷な下積み生活だったのか、向上心の強さにそれらが押しつぶされていったのかは不明だが。

売れっ子になり、お笑いだけでなく仕事の幅を広げていったのも彼の計画通りだっただろう。世間が羨(うらや)むような女性と結婚したのもシナリオ通り。「渡部建とはこうあるべき」にのっとって、彼は自分を演出してきた。だが、人は常に完璧ではいられない。「性欲が強い」のか「いろいろな女性としたい」のか、彼の本当の欲求はわからないが、少なくとも「女遊びをしたい」のは本性だろう。ただ、バレないようにどう対処すべきかの項目がシナリオから抜けていた。

たとえ遊びでも、他者への愛は必要だ。これは男女を入れ替えて考えも同じこと。今の時代、「男遊び」が好きな女性は少なからずいる。だがそこにはやはり最低限の人への敬意と一瞬の愛が必要なのだ。それがないとしっぺ返しを食らう。

渡部氏もある意味では被害者かもしれない

渡部氏には危機管理がなかったとよく言われるが、あれほど仕事上で自分をプロデュースしてきた彼がこんなに叩かれるのは、正義から逸脱しただけでなく、長年にわたって周りへの「敬意と愛」が足りなかったせいなのではないだろうか。

ではなぜ、彼に「最低限の敬意と愛」がなかったのか。下積み生活から売れっ子へとジャンプアップしていく中で、一般大衆は彼に期待をし続けた。それが彼にはプレッシャーになったのかもしれない。何もかも勝ち取りたかった彼ではあるが、「汗水垂らして」がんばる姿は見せたくないというええかっこしいのところも垣間見える。

亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)
亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)

お笑い芸人という肩書を背負いながらも、スマートでスタイリッシュでいたい欲求が強かった彼は、自らの本心であるエログロ欲求との間で大きな葛藤を抱えていたのではないだろうか。そしてスマートでスタイリッシュな彼を求めたのもまた、一般大衆である。大衆が彼を追いつめたとまでは言えないかもしれない。自らが望む「完璧な渡部建」と「エログロ渡部」とを演じ分けられず、そこに妙なケチ臭さまで匂わせてしまったのは本人の失態であろう。

とはいえ……である。やはり他人の不倫を過剰なまでに叩き続けるのは尋常ではない。会見を開かなかったずるさまでバッシングされているが、失職させ、蟄居(ちっきょ)させているのはメディアも含めた「一般大衆」だろう。ゲスい遊びを繰り広げたのは彼自身であり、妻は被害者ではある。だが、そんな彼を今、追いつめているのはわれわれであり、彼もまた、ある意味で“被害者”となっているのかもしれない。

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亀山 早苗(かめやま・さなえ)

フリーライター

1960年生まれ。明治大学文学部卒業後、フリーライターとして活動を始める。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』(ともに新潮文庫)『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』(扶桑社)など著書多数。

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(フリーライター 亀山 早苗)

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