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ベストティーチャー×BLOGOS 第1回「TOEICって結局ありなの?」

TOEIC は「日本人による日本人のための試験」

新卒入社時。昇進時。転職時。海外赴任時。部署配属時。そのすべてで必要とされることがあるのが、言わずと知れたTOEICスコアだ。まずは下記の表を見て欲しい。
新卒採用昇進昇格等海外赴任等
・特定部署
900以上松下電器(国際広報担当)
850以上NTTコミュニケーションズ富士通
三菱商事
800以上住友不動産
野村不動産
日立製作所
KDDI
日本マクドナルド
730以上ソフトバンク
武田薬品工業(研究職)
丸紅(入社5年)
三井物産(入社3年)
三菱商事(課長)
楽天(上級管理職)
住友商事(管理職)
日本IBM(次長)
住友商事
双日
丸紅
三井物産
三菱商事
700以上NTT東日本
ファーストリテイリング
三菱電機
ヤマト運輸
旭化成
ブリヂストン
三菱自動車(事務職)
伊藤忠商事(入社4年)
シャープ(課長職)
ファーストリテイリング(本部管理職)
伊藤忠商事
資生堂
シャープ
みずほ証券
キリンビール
600以上アサヒビール
佐川グローバルロジスティクス
シチズンホールディングス
出光興産
王子製紙
大正製薬
大和ハウス工業
ニトリホールディングス
三井物産
双日(主任クラス)
ソニー(係長級・課長級)
ブリヂストン(開発企画職上級)
住友林業(係長)
マツダ(課長職)
日立製作所(課長)
トヨタ自動車(係長)
富士通(入社2年)
日本IBM(課長)
丸紅(入社5年)
日商岩井(課長代理)
キヤノン
大成建設
富士通(エンジニア・事業企画)

各種報道・企業HPより作成


これは日本企業において必要とされるTOEICスコアの一覧表だ。商社やグローバル展開しているメーカーが目立つが、様々な業種の企業がTOEICスコアを社員に要求していることが分かる。

だが、TOEICは本当に英語力を図る指標として適当なのだろうか。実はTOEICは、1979年にタイム社アジア総支配人であった北岡靖男氏が、これからの日本には英語力を客観的に測定できる試験が必要だと考え、米国最大の公的テスト開発機関ETSに依頼して開発された「日本向けのテスト」だ。当初は新しいテストであったため受験者が少なく苦戦していたが、1986年に当時の通商産業省の認可を受けた財団法人となり財界に浸透していった。

TOEICはそもそも「日本人による日本人のための試験」であり、TOEICスコアはグローバルスタンダードではない。現に日本以外でTOEICが標準なのは韓国のみであったが、その韓国でさえ現在はTOEICから脱却しようとしている。2008年サムソン等のトップ韓国企業は、TOEICでの評価をやめて別の基準を採用している。TOEICはリーディングとヒアリングという受動的能力のみを測定しており、スピーキングやライティングという英語のアウトプット力を計るのには必ずしも適していないためだ。ちなみに欧州やインドではBULATSが主流となっている。

学習の努力が報われやすいこともTOEICのメリット


企業の経営方針によって、さらには企業内の仕事内容によって、社員に必要とされる英語力は異なるはずだが、それをTOEICスコアという一つの指標で判断することに限界があるのかもしれない。日本で受験できる主な英語の試験と検定試験は全部で63種類あると言われている。留学時に必要とされるTOEFLなどの試験はさておき、日本人のビジネスパーソンが受験している3大試験を比較してみた。

TOEIC英検BULATS
正式名称Test of English for International Communication実用英語技能検定Business Language Testing Service
目的英語でのコミュニケーション能力を評価(但しリーディングとリスニングという受動的な能力のみ)実社会で役立つ世界レベルの英語力を測る資格試験で、聞く・話す・読む・書くの4技能を適切に測定仕事で必要な言語能力を、聴解、読解、文法、語彙、作文、会話から測定
採点方法10-990点レベル分け0-100点で英語能力を判定
試験時間120分45~130分45~60分
試験科目リスニング100問(45分)、リーディング100問一次試験:筆記+リスニング、二次試験:個人面接一問一答のコンピューターテストで聴解力、読解力、文法の知識、語彙力
特徴世界90か国500万人が受験するが日本人と韓国人が大半読解・ヒアリングだけではなく面接があるためスピーキング力が問われるEUを中心として広く世界に普及しているビジネス英語能力テスト

各種報道・企業HPより作成


TOEICとその他の試験(TOEIC、BULATS)の最大の違いは、スピーキングテストがあるか、だろう。日本人の大半は義務教育や大学受験時に単語や文法や英文読解を勉強してきており、英語を読めるが話せない。また、英語を話して間違えることを極度に恐れていることから、話す機会を積極的に作ろうとしない。英語面接がある試験には及び腰になりがちだろう。スピーキングテストのないTOEICがここまで普及した理由は、ここにもあるのかもしれない。

但し、TOEICもデメリットばかりではない。日本における最大の英語系試験としてもたらした功績は大きい。英語学習者の間でTOEICは約2ヶ月に1回開催されるお祭りであり、学習のペースメーカーとして間違いなく機能している。また、近年はテクニック偏重の傾向があるにせよ、勉強した分だけ努力がTOEICスコアに反映されるため、モチベーションは上がる。さらに、英語が話せると一言で言っても、何を持って話せるとするのかの計測が難しいが、TOEICはリーディング力とヒアリング力の計測が客観性を持って可能であり、それを就職や転職時に証明書として利用することができる。

TOEICは、「日本人による日本人のためのテスト」であり必ずしも世界標準ではない。また、リーディングとヒアリングに特化しており、アウトプットの能力を計測するには不十分だ。スピーキングの能力を測りたいのであれば、BULATSのような試験もある。それでもTOEICは学習のペースメーカーやモチベーションアップの手段としては有効で、日本人にとって大きな意味を持っている。TOEICに向けの学習をしている読者は、自分にとってTOEICとは何かを、今一度考えみてはいかがだろうか。

今回のまとめ


・TOEICは、「日本人による日本人のためのテスト」であり必ずしも世界標準ではない
・スピーキングの能力を測りたいのなら、BULATSのような試験もある
・それでも学習のペースメーカーやモチベーションアップの手段としては有効 。

※次回TOEIC座談会記事は、10月中旬の公開を予定しています。

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