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【読書感想】白人ナショナリズム-アメリカを揺るがす「文化的反動」

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Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
白人至上主義と自国第一主義が結びついた「白人ナショナリズム」。トランプ政権の誕生以降、注目を集めるオルトライトをはじめ、さまざまな勢力が連なる反動思想だ。反共、反多文化主義、反ポリティカル・コレクトネスといった旧来の保守と共通する性格の一方、軍備拡張や対外関与、グローバル資本主義を否定する。社会の分断が深まるなか、自由主義の盟主アメリカはどこへ行くのか。草の根のリアルな動向を現地から報告。

 もう15年前くらいの話になりますが、アメリカの有名な病院を見学しに行ったことがあります。
 その病院の専門外来には、担当医の写真が掲示してあるのですが、現地の人が、僕たちにこんな説明をしてくれました。

「この病院では、外来担当医は白人、アフリカ系アメリカ人、アジア系、ヒスパニック系のそれぞれの人数が決まっていて、人種差別をしないようになっています」

 僕はそれを聞いて、「えっ?」と思ったのです。
 ということは、医者として能力がすぐれている人が、このシステムによって不採用になっていることも多々あるのではないか、と。
 それって、本当に「平等」とか「公正」って言えるのだろうか?
 「平等」にも、「機会平等」と「結果平等」というのがあって、それは両立できないことはわかるのだけれど、こういう実例を目の当たりにすると、考え込んでしまうのです。
 患者さんにとっても、優秀な医者にみてもらうほうが良いはずなのでは……
 まあでも、そこまでして、「人種差別をしない」仕組みをアピールしているのが、アメリカという国なのだな、とも思ったんですよね。

 著者は、「白人ナショナリズム」を唱えるコミュニティに自ら潜入し、彼らの声を聞いています。

 2019年5月に、アメリカの白人至上主義の指導的存在とされるジャレド・テイラー氏の許可を受け、彼が主宰する雑誌『アメリカン・ルネサンス』(AmRen)の年次会合に参加したときのことも書かれているのです。
 まるで学会のような雰囲気で、人々は礼儀正しく、著者が日本から来たというと、「日本が好きだ」と親しみを示してくれる人も多かったのだとか。
 その一方で、この会議に参加することそのものにリスクが伴い、参加者の写真撮影や氏名を外部に漏らさない、という誓約書にサインさせられてもいます。
 これに参加した、というだけで、会社をクビになったり、学校を退学処分になる可能性が高いのだとか。

 テイラーは「私は人種差別主義者ではない」と断言する。「『白人至上主義者』(white supremacist)という表現には白人が他の人種を支配するというイメージがありますが、いまの白人のそんな力はありません」「もし日本に外国人が数百万単位で入ってきたら、日本人は違和感を覚えませんか? それに異議を唱えたとき、「日本人至上主義者」や「人種差別主義者」というレッテルを貼られたらどう思いますか?」「私たちは白人として、ごく当たり前の権利を主張しているだけです」「『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集委員に任命されたサラ・ジョン(韓国生まれのジャーナリスト)は「白人が嫌いだ」と公言してもさほど批判されないのに、私たちが「ヒスパニック系が嫌いだ」と言うと「白人至上主義者」と批判されるのです」「黒人の命は大切」(Black Lives Matter)ですが、「白人の命は大切」(White Lives Matter)でもあります」「他の人種や合法移民を米国から追い出せと主張しているわけではありません。白人が罪悪感を感じることなく堂々と生活できる空間を求めているだけです」……。
 テイラーは「人種現実主義者」(race realist)、「白人擁護者」(white advocate)という呼称を好んで使う。会合では「白人ナショナリスト」(white nationalist)が多用され、かつSPLCなどの人権団体も使用している表現なので、以下、そう記すことにする。

 多数派が少数派を差別・抑圧してはならない、というのは大事なことだと思います。
 最近のアメリカでは、アフリカ系への差別的な行為が続いており、警察という公権力によって、命が奪われるような事態も起こっています。
 しかしながら、白人の側にも、「自分たちは白人・多数派だからといって、なぜ声をあげることすら許されないのか」という意識が高まっているのです。
 人種的に「多数派」だからといって、すべての白人が幸福に満たされているわけではない。向こうは「白人の問題点を声高にアピールする」ことができるのに、こちらはそれを口にするだけで「人種差別主義者」として排除されてしまう。
 冒頭に書いたような「結果平等」というのは、恩恵を受けられない側にとっては、「人種差別の歴史が間違っていることはわかるが、なぜ、そのツケを自分が払わなければならないのか?」と疑問になるのもわかるような気がします。

 この本のなかでは、そんな白人たちの「言い分」が、丁寧に拾い集められているのです。

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