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中国・三峡ダムを襲う豪雨、「ブラック・スワン」を無視してよいのか

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同記事では、「29日には三峡ダムの貯水池の水位が最高警戒水位を2メートル超え、147メートルに上昇」、「三峡ダムの耐久性はほぼ臨界点に達していると言えるのではないか」としていたが、その後も、長江流域の豪雨は続き、7月10日には、ロイターが【中国長江流域の豪雨で氾濫警報、三峡ダムは警戒水位超える】と題する記事で、

流域にある巨大ダムの三峡ダムでは貯水量が増え、放水しても追いつかない状況。水利省によると、警戒水位を3.5メートル上回っているという。

と報じた。

三峡ダムの水位については、【長江水文】と題するサイトがあり、三峡ダムを含む、長江流域の水位の1時間ごとの最新情報が公開されている。それによると、三峡ダムの水位は、警戒水位の145メートルを大きく超え、13日午後2時の時点では、153.68メートルと、警戒水位を8メートル以上も上回っており、毎秒の入水が37000立方メートル、出水が19200立方メートルで、差し引き17800立方メートルであり、1日に換算すると、約15億4000立方メートルが貯水されつつあることになる(日本の最大の貯水量のダムは、岐阜県の徳山ダムで、総貯水容量6億6000万立方メートルである)。

福島香織氏【長江大洪水、流域住民が恐怖におののく三峡ダム決壊】(JBpress)によると、

湖北省宜昌市は6月11日に、三峡ダムの水位を145メートルの増水期制限水位まで下げたと発表した。例年より早めに洪水防止のための貯水調節を行い、6月8日に前倒しで221.5億立方メートルの水を下流域に排出して145メートル(正確には144.99メートル)にまでに下げたのだ。この調節放水の量は西湖(杭州にある世界遺産の湖)1550個分という膨大なものである。

三峡ダムの堤防の高さは185メートルで、蓄水期はおよそ175メートルまで水がためられている。これを長江の増水期前に145メートルまで水位をさげて、増水に備えるのだ。この30メートルの水位差が、長い中国の歴史で繰り返されてきた長江の大洪水を防止する役割を果たすといわれてきた。

とのことであり、145メートルという「警戒水位」を超えることで、ただちに氾濫や決壊の危険が生じるわけではない。

しかし、三峡ダムの下流域にある中国最大の淡水湖の鄱陽湖で、12日午前0時(日本時間同1時)に、星子水文観測所の水位が1998年の大洪水時の水位22.52メートルを超え、観測史上の過去最高水位を突破したと報じられており(AFP)、三峡ダムからの出水量を絞って、下流域の洪水の拡大を防止しなければならず、その分、三峡ダムの水位は、今後も、急速に上昇していく可能性が高い。

上記中国のサイトには、【長江流域の降雨予測】のサイトも併設されており、それによると、長江流域では、今後、7月18日頃にかけて、かなりの雨量が予想されている。

豪雨による大規模ながけ崩れ、地滑りが起きて津波が発生したり、近隣で地震が起きたりした場合、ダムの決壊とまではいかなくても、その機能が大きく損なわれ、下流域の洪水が極めて深刻な事態となる。長江下流には、武漢、杭州、上海等、多数の日本企業の拠点がある都市もあり、大洪水に見舞われた場合の被害は深刻なものとなりかねない。

台湾系、香港系メディアは、中国政府に対して批判的であり、右翼系のメディアなどは、中国国内の問題の深刻さを過大視、強調する傾向があることは確かである。当然のことながら、中国政府は、「三峡ダム」の決壊の危険性を真っ向から否定しており、情報の真偽や危険性の評価は慎重に行う必要がある。

しかし、海外メディアを中心とする報道の内容や、現在の水位、入出水量、下流の洪水の状況などからすると、三峡ダムをめぐる危険性は、「万が一」から「千が一」のレベルに高まっているように思える。

新型コロナウイルスに関しても、当初、中国で重要な情報が隠蔽された疑いが指摘されていす。三峡ダムが仮に危険な状態になっているとしても、中国当局が、人命を優先した速やかな情報公開を行うのかどうかは不明だ。

この問題を、日本でも、重大な問題として受け止め、入手し得る情報を基に、専門家による分析を行い、リスクレベルを検討することが必要な段階に来ているように思える。

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