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仏、マスク着用求め殺される

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Ulala(ライター・ブロガー)

 【まとめ】

・仏、マスク着用を求めたバス運転手が乗客に暴行され死亡。

・バスの運転手は危険な職業。安全確保対策が不十分。

・内務大臣は安易な暴力事件を「仏社会の本質的な問題」と認識。

「なぜ、規則のマスクをするよういっただけで、彼が殺されなければいけなかったのか?」

そんな言葉でニュースは始まった。

フランスでマスク着用を巡り、痛ましい事件がおきたのである。7月5日、19時15分、その事件は起こった。バスの運転手フィリップ・モンギヨさん(59歳)がマスクを着用していない利用者数人にマスク着用を求めたところ、この利用者たちから暴行を受けたのだ。その後、モンギヨさんは病院に搬送されたものの、次の日には脳死と診断され、ついには回復することなく10日に亡くなった

■ 事件の概要

事件が起こった場所はフランス南西部バイヨンヌという小さな町だ。週末も終わろうとしていた日曜日の出来事であった。モンギヨさんは、その日、バスで帰ってきた18歳の自分の娘に仕事中に偶然であっている。そこで「これが今日の最後の仕事だよ。じゃあ後で」と声をかけて、いつものようにその日最後のルートを走り始めたのだ。しかしその時には、この仕事が今日どころか生涯で最後の仕事となり、その後、2度と生きて自宅に帰れなくなるとは夢にも思っていなかっただろう。あの時、娘さんにかけた言葉が家族への最後の言葉となったのだ。

バスと一言いってもモンギヨさんが運転していたバスは、従来の運転手の横にある乗車口から利用者が乗り込みお金を払うという小さなバスではない。トラムバスという、いわゆる路面電車をバスにしたような形態のバスだ。車両は2台連結されており全長18mで、全部で4カ所の乗り降り口がある。バイヨンヌ駅を過ぎたあと、後方の入り口から利用者が乗り込んできた。入口が多いため無銭乗車も多く、その時は後方まで行って乗車券をもっているかの確認をおこなっていた。しかしその時すでに、車内にはマスクをしていない3人の乗客が座っており、乗車券のチェックついでに、その3人にもマスクをするように注意をしたのだ。バイヨンヌがある地域は、フランスの中でも特に新型コロナウイルスの感染者が少なく無防備な人も多いが、フランス全体で公共交通機関内でのマスク着用が義務付けられているため、マスク着用を求めることは当然のことだ。

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しかし、そのことに腹を立てた一人の乗客が、乗車券の確認を行っていたモンギヨさんに罵声を浴びせながら後方から殴りつけた。その拍子にモンギヨさんはバスから転落し、歩道に投げ出されたのだ。すぐには起き上がれなかった。そんなモンギヨさんを、マスクをしていなかった乗客二人が、頭部、上半身を集中的に蹴り続けたのだ。その後、暴行者は立ち去ったが、道端に置き去りにされたモンギヨさんは、救急隊が駆け付けた時にはすでに意識不明の状態であり、そのまますぐに緊急搬送され手術が行われ最善が尽くされたものの、翌日、脳死と判定されたのである。

■ 運転手の人柄とバスの運転手を脅かす危険

モンギヨさんは、バスの運転手として32年働いてきた人物だ。今回の事件は、あと一年足らずで定年退職することになっていた矢先の出来事でもあった。その日の朝は、奥さんと一緒に家の窓の掃除をしたり、キャンピングカーの写真をFacebookにあげ、バカンスに行くのを楽しみにしていた。夜、彼の帰りを待っていた奥さんは、夕食に大きなミックスサラダを用意して待っていた。食事のあとは浜辺で一緒にアイスクリームを食べようとも計画していたのだ。それが緊急で病院にいかなくてはいけなくなったときに状況は一変した。

30年一緒に働き、現在はすでに退職している元同僚のジョン=ピエール・マルタンさんはこう語る。「いつも彼が従業員約200人の毎年の食事会を企画していたんだ。ほんとうにいいやつだった。まだ信じられない。」同僚のドニ・ランベールさんも、こう続ける「彼は信念を持ち、人生のルールを持っている人だった。とても礼儀正しい人だったんだよ。」同僚たちは、口々に、モンギヨさんの身の上に起きたことを嘆き、この事件と同様なことが自分たちの身に起こるかもしれない現実について恐怖を感じた。

ランベールさんは、5年前に刺されそうになったこともあるといい、いかにバスの運転手が危険な仕事であるかを語る。バスの中でタバコを吸っていたのでバスから降りるよう求めたところ、ナイフを出してきたというのだ。冬よりも夏の期間の方がさらに危険度が高まる。組合によれば、この8日間で3件の運転手に対しての暴行事件があったそうだ。しかし、警察は何もしない。会社も安全策を講じない。同じバス会社で働く運転手たちは事件に抗議して、最低でもモンギヨさんの葬儀が終わるまでの乗務を拒否した。彼らは、現状では運転手の安全確保対策が不十分だとし、安全策の強化を強く求めたのだ。

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