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怪物・松坂大輔は〝晩節〟を汚しているのか? - 新田日明 (スポーツライター)

思わずため息をついた人は多かったはずだ。埼玉西武ライオンズ・松坂大輔投手が5日に茨城県内の病院で「脊椎内視鏡頚椎手術」を受け、復帰までに2、3カ月の期間を要する見込みという。退院日の12日に詳細を発表した球団側によれば、今季中に何とか復帰できる見通しを立ててはいるようだ。


(LightFieldStudios/gettyimages)

しかし、それも疑問符は拭えない。順調にリハビリを経て回復したとしても、実戦登板はシーズン終盤の可能性が大。3年連続の連覇を狙うチームにとって、まだ雌雄を決していない大事な時期であれば、故障明けで今年9月には40歳を迎えている右腕をいきなり本番真っただ中の一軍マウンドへ送り込むことはかなり勇気がいる。

そう考えると、この人には今季も所属チームの戦力にならないまま終わってしまいそうな気配が漂う。せっかく昨オフ、14年ぶりに古巣へ復帰したというのに一体何をやっているんだと多くの獅子党が嘆きたくなるのも至極当然のことだ。

今年は新型コロナウイルスの影響で開幕が約3カ月遅れで開幕となった。緊急事態宣言の発令中にはチーム練習の自粛を余儀なくされ、松坂も難しい調整を強いられたことであろう。だが、そうかと言ってコンディション不良を招いた自己管理不足の責任からは残念ながら逃避できない。他の選手も同じ条件のもと、キッチリと仕上げた上でコロナ禍のシーズンに臨んでいる。

予定通りの開幕であれば当初は先発ローテーション入りを果たし、開幕3戦目に登板する予定だった。少なくともこの頃までは周囲の期待値も、それなりに高かった。ところがコロナ禍によって開幕延期が決まると3月下旬に右膝へコンディショニング維持のための注射を打ち、一転して別メニュー調整を強いられるようになった辺りから怪しい雲行きに包まれるようになる。6月7日の練習試合・中日ドラゴンズ戦(メットライフドーム)で1イニングのみ登板し、無安打無失点に抑えたものの開幕二軍スタートが決まった。

関係者の話を総合すると、やはりこの時点から身体に〝異変〟が生じていた模様だ。その後は右手のしびれなどが顕著に症状として現れるようになったことで、手術の決断に至ったとされている。

以前から松坂と面識の深い元西武OBは次のように苦言を呈する。

「大輔はオンライン上でメディアに対して取材の場を設けるなど、とにかく公の場に出て自分の言葉をきちんと発するべきだ。そうでないと、これまでとまた同じことの繰り返しになる」 

聞くところによれば、松坂はここ最近、以前にも増してメディアに対する不信感が増幅しているという。自分に関するマイナスの記事が多いことに神経を尖らせ、かなりナーバスになっているとの話もよく耳にする。そういう流れに則って彼が今回の当該記事を目にするようなことがあれば、やはりピリつくのかもしれない。

しかしながら前出のOBの指摘通り、ダンマリを決め込む姿勢を貫くことによって得する要素はほとんどない。単に〝都合が悪いから逃げている〟という印象を与える一方で、バッシングに拍車がかかるのは当たり前である。

2015年から福岡ソフトバンクスホークスに3年12億円とも報じられた超大型契約で3シーズン在籍したが、まともな戦力にはならず故障や手術でほとんど全てを棒に振った。「給料泥棒」とぶっ叩かれながら退団し、2018年から入団テストを経て中日ドラゴンズへ移籍。かつての西武時代を知る当時監督の森繁和氏やフロントの編成部に友利結氏が在籍していたこともプラスに働き、このドラゴンズ移籍1年目は6勝4敗、防御率3.74でカムバック賞を受賞した。

とはいえ、その一瞬の輝きもここまでだった。翌年の2019年はキャンプ中にファンから手を引っ張られたことが原因とされている右肩の故障を患い、開幕からファーム暮らし。さらにそのリハビリ中には治療先でゴルフに興じていた様子が写真週刊誌に激写され、袋叩きになった。

メジャーリーグから日本プロ野球界へUターン以降、昨季までの5シーズンを振り返ってみれば、それなりに戦力として機能したのは2018年のみ。そのシーズンも実際のところ、当時の森監督が松坂の疲労蓄積を軽減させるためローテ間隔を空けたり、本拠地のナゴヤドームでの登板に極力集中させるような〝温情〟ともとれる起用を施したりしたことも追い風になっていた。

最後の栄光があることを信じたい

前出のOBは「もしかしたら大輔は自分が特別扱いされていることを分かっていないのか、あるいは気付いていても認めたくないとしてスネているのかもしれないが」と前置きし、次のように続けた。

「厳しい言い方かもしれないが、5年のうちで僅か1年しか働けていないのに、40歳まで現役を続けていられるのは松坂大輔のブランドとネームバリューがあるからこそ。普通の選手ならば、まずありえない。しかも、その2018年シーズンだって監督がモリシゲ(森繁和氏の愛称)さんじゃなかったら、どうなっていたか分からない。これだけ恵まれた環境にありながら、この程度の働きしかできていないのだから、メディアやファンから批判されるのは仕方がないと受け止め、むしろきちんと向き合って前向きに進んでいくべき。そういう覚悟があるからこそ大輔は今もプレーしているものだと思っているが、こうやってコソコソするかのような対応をずっと繰り返している姿を見ていると、単純に現役にしがみついているだけなのかと邪推せざるを得なくもなってくる」

補足すると、松坂本人だけの問題ではない。これまで大甘な契約を結んだ球団側にも、責任はあるように思う。昨オフに14年ぶりとなる古巣復帰のチャンスを与え、事実上のラストロードとして引退への花道を設ける選択をとった西武にとって功労者の松坂獲得は確かに勇気ある決断だった。それでも松坂自身がこのような体たらくと不遜とも感じられるかのような態度を連発させていると、晩節を汚してしまうことにもなりかねない。

引退前にもう一花咲かせ、堂々と公の場で胸を張れるような姿を見せられれば、想像もつかないドラマチック過ぎる展開に世の中は飲み込まれ、今までの批判の嵐もおそらく封印できるだろう。かつて日米で「怪物」と呼ばれ、伝説を築き上げてきた男に最後の栄光があることを信じたい。 

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