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誰もが予想だにしなかったソウル市長の“セクハラ疑惑”…韓国のMeToo運動との関わりは

 娘に遺言のような言葉を残し行方不明になっていた朴元淳ソウル市長の遺体がソウル北部の山中で見つかった。遺書には「すべての皆様に申し訳ない。私と人生を共にして下さったすべての皆様に感謝する。火葬して灰を両親の墓に撒いてくれ。みんな、さようなら」と書かれていたという。

・【映像】ソウル市長はなぜ自殺? 背景には#MeToo運動?

 複数の韓国メディアによると、失踪の前日、「女性秘書がセクハラ被害を警察に訴える」と報じられ、「告訴状には2017年から3年にわたっての被害内容(何度も体を触られた。性的羞恥を感じる写真を送ってきた。ソウル市庁には他にも被害者がいる)」といった情報も流れていたという。

■誰もが予想しなかった朴市長の“セクハラ疑惑”

 “南北融和”を掲げる文在寅大統領とは司法修習で同期だった朴市長。文氏の大統領就任後は南北首脳会談にも同行、昨年はソウル市として北朝鮮に対し1億円相当の食糧支援を行うなど、政権に近く、大統領候補の1人とも目されていた。

 さらに朴市長は1993年、韓国社会に向け“セクハラは違法だ”と訴えるなど、“人権派弁護士”としても知られており、市長就任後も男女平等委員会を設置、慰安婦問題で被害を訴える女性らの法的支援活動に参加するなどの実績もある人物だった。

 ジャーナリストの崔碩栄氏によると、文在寅政権に入ってから、大物政治家とセクハラの問題が相次いでいるのだという。実際、安熙正・前忠清南道知事が秘書への性暴行で辞任、後に懲役3年6カ月の実刑判決が確定、呉巨敦・前釜山市長が女性市議会議員らに対し、体を触るなどのセクハラで辞任している。

 それでも朴市長の疑惑については「意外だった。驚いている」と話す。「人格者というイメージがあり、ソウル市民の支持も得ている方だった。政策の失敗や疑惑も無かった。仮に経済的・金銭的問題、もしくはパワハラといったことがあったとしても、セクハラというのは想像もつかない。誰も予想しなかったと思うし、彼のことを支持していなかった人たちでさえ、本当にそれが原因なのかと半信半疑、というくらいだ」。

 そうした状況があっただけに、市長を支持していた人たちの中には、被害者とされる女性を批判する声もある」という。「MeToo運動は被害者を守るための運動だが、韓国では女性の証言だけで男性が有罪判決を受けてしまうなど、“被害者中心主義”という言葉が出るくらい、どちらかというと男性側が不利になってしまうような雰囲気があるので、男性たちが女性と距離を置く、女性との飲み会を避けるといった傾向も出てきている。朴市長は実績も人気もある政治家だっただけに、自殺に追い込まれた“悲劇の人”という見方も出ている。

 その上で崔氏は「朴市長が亡くなってしまった以上、警察はこれ以上の捜査をしないと思うし、真実は分からないままという可能性が高い」。

■韓国の女性たちに勇気を与えた『82年生まれ、キム・ジヨン』…むしろ日本の方が抑圧されている可能性も?

 韓国MeToo運動で訴えられたのは、“ノーベル文学賞候補”と期待された詩人のコ・ウン氏や世界3大映画祭で受賞歴のある映画監督のキム・ギドク氏、スター俳優のチョ・ジェヒョン氏、ベテラン俳優チョ・ミンギ氏など、政治家だけにとどまらない。

 こうした韓国のMeToo運動で思い起こされるのが、2016年に刊行された『82年生まれ、キム・ジヨン』の存在だ。韓国のジェンダー意識に関わる社会問題などを織り交ぜ、女性の生きづらさを描いた小説で、2018年以降、MeToo運動の盛り上がりと共に部数を伸ばし130万部を突破。昨年には映画化され、日本でも10月に公開される予定となっている。

 ライターの金香清氏によると、韓国は民主主義のスタートが遅く、人々に強い憧れがあった。また、2016年には朴槿恵大統領に対する“ろうそくデモ”で“声を上げる”という意識が高まり、さらにMeToo運動によって女性たちの人権意識が高まった」と話す。そうした中、同作が共感を呼び、MeToo運動のシンボルになったのだという。崔氏も「小説が直接運動に関係しているわけではないが、女性たちに勇気を与え、自己主張できるようになったという意味はあると思う」と話す。

 ライターの速水健朗氏は「確かに『82年生まれ、キム・ジヨン』がMeToo運動と直接的に関わるわけではないが、儒教社会、男性優位社会の中で、親が勉強のできる主人公ではなく、そうではない弟の方に進学のための予算を割く話など、“あるあるネタ”として女性の生きづらさが積み重なっていく様子が描かれている。政治家の権力が強すぎることへの反動と、女性が声を上げられるようになったということが掛け算になっている部分もあるのではないかと思った」とコメント。

 「“通学の時に痴漢に遭う”といったエピソードなど、日本とすごく似ているところもあるが、やはり韓国の男性優位は日本以上だと思うし、家族についても韓国特有のものがあると思う。それでも著名人が告発されるケースについていえば、日本では刑事事件まで行かないことも多い。その意味では韓国の方が開かれている社会かもしれないとも思うし、むしろ日本の方が抑圧されていて、MeTooができないという可能性もある」と指摘していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:ソウル市長はなぜ自殺? 背景には#MeToo運動?

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