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憂歌団とTHE BLUE HEARTSのライブ盤から見る日本のブルース

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ハンマー / THE BLUE HEARTS
リンダ リンダ / THE BLUE HEARTS

THE BLUE HEARTSの1996年に発売になったライブアルバム『LIVE ALL SOLD OUT』から「ハンマー」、「リンダ リンダ」の2曲を続けてお聴きいただきました。「ハンマー」は1987年2月に出た自主制作シングル『人にやさしく』のカップリングですね。「リンダ リンダ」は同年5月に出たメジャーデビューシングルです。このライブレコーディングは1991年のNHKホールと1992年の武道館。そういう意味では後期の録音ということになりますね。THE BLUE HEARTSがどういうバンドかという説明には、こんなわかりやすいに曲はないかなと思ったりもしました。「ハンマー」では、ハンマーが僕らの頭の上で振り下ろされるんです。ハンマーが世界中至る所で打ち下ろされる。打ち下ろされる側の歌なんですね。「リンダ リンダ」もそうです。忌み嫌われるドブネズミみたいに美しくなりたいと歌っているわけです。ドブネズミを美しいと歌っているのは、憂歌団と通じますね。最初の全国ツアーもドブネズミツアーでした。

THE BLUE HEARTSを初めて観たのは1987年の日比谷野外音楽堂でした。ドブネズミツアーの前で、東京でのお披露目のコンサート。4月に日比谷野外音楽堂でラフィン・ノーズがライブをやって、事故で亡くなってしまう方いた。THE BLUE HEARTSはパンクバンドでしたから、会場に警備があって、客席の通路の間に鉄柵が組まれて移動できないという異常な状態でライブが始まったんです。そしたら甲本ヒロトさんが「何だか動物園みてえだな」と言ったのが印象的でした。ステージから同情されるライブでありました。その後に1987年8月に熊本県阿蘇郡で行われた野外イベント、BEAT CHILDに、THE BLUE HEARTSも出たんです。その時もヒロトさんは「ウッドストックみたいだな」とおっしゃっていました。BEAT CHILDの時にはまだこの曲は誕生していなかったなと思いました。「青空」

青空 / THE BLUE HEARTS

1988年にリリースされた3枚目のアルバム『TRAIN-TRAIN』の中の曲です。西部劇ですよ、騎兵隊とインディアンが出てきます。1970年代以前、アメリカのハリウッド製の西部劇映画というのは騎兵隊がインディアンを征伐するというストーリーだったんですね。1960年代の終わりからアメリカのニューシネマが出てきて、騎兵隊の人はインディアンを侵略したんじゃないか?インディアンにも生存権があるという新しい歴史観の西部劇がたくさん生まれました。この「青空」でも、”生まれたところや皮膚や目の色で何がわかるというんだろう”と歌っております。今のニュース、特にアメリカの人種問題そのもののような歌ですね。これは1992年6月の武道館の演奏なんですね。1996年のライブアルバム『LIVE ALL SOLD OUT』からお聴きいただきました。でもTHE BLUE HEARTSの解散は1995年、ライブアルバムは解散発表後に発売されている。活動としては1994年のライブが最後だったわけで、バンドの存続中にライブアルバムは出なかったんだなあと今回改めて気づきましたね。ライブアルバムという形よりも、生のライブだというのが彼らの心意気だったんではないかなと思いながら、その熱気を感じていただこうと思います。「キスしてほしい」、「終わらない歌」二曲続けてどうぞ。

キスしてほしい / THE BLUE HEARTS
終わらない歌 / THE BLUE HEARTS

どちらも1992年6月の武道館ライブ公演からです。THE BLUE HEARTSは、甲本ヒロトさん、真島昌利さん、河口純之助さん、梶原徹也さんの四人組ですね。作詞作曲がヒロトさんとマーシーさん。この2人はピュアですね。ロックンロールの一番シンプルな形とピュアな衝動を持ち続けてる2人です。マーシーさんはギタリストですから、キース・リチャーズとかチャック・ベリーなどのロックン・ロール。ヒロトさんの音楽の目覚めは中学生で出会ったセックス・ピストルズで、パンクですね。日本のバンドだとシーナ&ザ・ロケッツでした。でも私がヒロトさんを改めて好きになったのは、エルヴィス・プレスリーの故郷であるメンフィスを訪ねた時でした。心からロックンロールが好きだっていうことと、エルヴィスの生誕地を訪問することの興奮がすごく初々しく伝わってきて。僕もエルヴィスからロックに入った人間として、年代を超えてると思った記憶がありました。

先ほどの憂歌団の曲にも、メンフィスが出てきましたからね。ヒロトさんのインタビューを読んでいると、ブルースシンガーの名前がいっぱい出てきます。そして去年、ヒロトさんと勘太郎さんがブギ連というブルースデュオを組んで『ブギ連』というアルバムを出しました。これが素晴らしいんです。勘太郎さんのブルースのギターとヒロトさんのボーカルなんですけど、ヒロトさんの声って決してブルース声じゃない。木村さんみたいにこれぞブルースという声ではないんですけども、ヒロトさんのあの声で歌うブルースと勘太郎さんのギターがものすごく合っていて。こういうブルースのアルバムが出たんだと思った記憶があります。アルバム『ブギ連』、機会があればぜひ耳を通してみてください。それでは最後の曲「TRAIN-TRAIN」。

TRAIN-TRAIN / THE BLUE HEARTS

魂のライブ盤ということで憂歌団とTHE BLUE HEARTSをお送りしましたが、ブルースってどういう音楽なんだろうと思った時にこんな歌詞を引用するとどうでしょう。「弱い者が夕暮れ さらに弱い者を叩く その音が響き渡ればブルースは加速していく いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない」という音楽。説明になってるか分かりませんが、2020年夏の世界の歌だなと思いました。THE BLUE HEARTSの1988年の曲「TRAIN-TRAIN」。1994年の武道館での収録、最後のTHE BLUE HEARTSと言ってもいいのかもしれません。

憂歌団のライブ盤『生聞59分』とTHE BLUE HEARTSの『LIVE ALL SOLD OUT』を紹介いたしました。流れているのは、この番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。THE BLUE HEARTSの2人は今、ザ・クロマニヨンズとして活動されていて来年15周年ですね。憂歌団は、それぞれ活動していて、2014年に憂歌兄弟を結成。この時のライブを見て、僕は初めてインタビューしました。憂歌団のライブはその前にも何度か観ているんですが、忘れられないのは阪神淡路大震災の時、神戸のライブハウス、チキンジョージが倒壊した。その時の再開ライブをチケットを買って観に行ったんですけど、そこに憂歌団が出ていたんです。会場に、1970年代の知り合いだった、さこ大介というシンガーソングライターがいて、デイリースポーツに勤めながら曲を作ったりライブをやっていて、憂歌団にも曲を書いているんです。彼がいたんです。「田家さん、木村紹介するよ」と言われて紹介されて、僕も始めましてと挨拶をして再開ライブのチケットにサインしてもらった記憶があります。さこ大介、元気かなと思いますが、チキンジョージは今年で40周年なんですね。40周年おめでとうございます。でもライブは密だからいいんです。来週もそんな放送になればと思いながら、今月もこの特集を続けます。

<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
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