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新型コロナ接触確認アプリ「COCOA」 6割普及に必要なこと

新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA(ココア)」(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触した可能性を知らせるスマートフォン向けアプリ、通称「接触確認アプリ(COCOA)」はもうダウンロードしただろうか。「個人情報が漏れそう」「メリットはあるの?」という声を聞くが、我々はCOCOAを利用するべきなのだろうか。スマホアプリに詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、COCOAを利用する意義と普及への障壁について解説する。

【写真】シンガポールのコロナ追跡アプリ

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 接触確認アプリ「COCOA」とは、Bluetoothを利用して、新型コロナウイルス感染者と接触した可能性について通知を受け取れるアプリだ。過去14日以内に半径1メートル15分以上接触した相手が感染した場合に通知が来るようになっている。厚生労働省が新型コロナウイルス感染症対策テックチームと連携して開発したもので、iOS端末はApp Store、Android端末はGoogle Playから無料でインストールできる。

目標は人口6割も現状500万ダウンロード

「(COCOAは)人口の6割が利用することが目標」という言葉が独り歩きしているが、なぜ人口の6割なのか。

 安倍晋三首相がアプリ導入を発表した記者会見で言及した「6割」という数字の根拠は、2020年4月にオックスフォード大学のクリストフ・フレイザー教授の研究グループが発表したシミュレーションだ。同じ会見で首相は「人口の6割近くにアプリが普及し、濃厚接触者を早期の隔離につなげることができれば、ロックダウンを避けることが可能となります」と発言した。

 しかし日本の人口の6割とは、ユーザー数8400万人に上るLINEに匹敵するくらいの利用者が必要ということになる。残念ながら7月3日時点でアプリのダウンロード数は約531万件であり、目標には遠く及ばない状態だ。なぜ、導入する人が増えないのか。

「個人情報が抜かれそうで抵抗がある」とある40代主婦はいう。「誰と会ったとかどこに行ったとかわかると嫌だし、面倒くさいし、だから別に(インストールしなくても)いいかな」。

 50代主婦も、やはりインストールはしていない。「この間テレビでちらっと見たけど、スマホにはあまりアプリとか入れたくないし、やり方もよくわからないし。そもそも普段から車で移動しているし、あまり人と会わないし、ねえ」。

 取材したところ、インストールをしていない人は大抵、個人情報の観点から警戒しているか、やり方がわからないとか面倒くさい、自分とは無関係と思っている人が多いようだ。

情報はスマホだけに記録され、消去も容易

 多くの人が引っかかるのが、個人情報のことだろう。素性の怪しいアプリを入れてしまい個人情報が流出する事件は多発しており、警戒心を持つのはおかしなことではない。本当に個人情報は漏れないのか、どこか自分のあずかり知らぬ場所に保存や記録などはされないのか。

 COCOAはGoogleとAppleが新型コロナウイルスの感染防止のために開発したAPI(※アプリ相互のやりとりに必要な接続仕様)を用いているが、GoogleもAppleも個人情報を把握できない仕組みになっている。そして、COCOAが関知した接触履歴などの情報は政府を含めどこにも送信されず、自分のスマホの中のみに暗号化して記録される。つまり、COCOAによって得られる情報を知ることができるのは、基本的に自分のみなのだ。

 また利用する際も、氏名・電話番号・メールアドレスなどの個人情報登録の必要もなく、GPS情報を利用したり収集することもない。どこにいるかという位置の情報を記録せず、他のスマホが発しているCOCOA情報との接触だけをスマホに記録しているだけなのだ。つまり、そもそも個人情報が漏れるとか、自分のスマホの外のどこかにCOCOAの履歴が記録されるということも一切ない。

 さらに、端末内の記録も14日間を過ぎると自動的に無効となる。その上、アプリを削除すれば記録も完全に削除できるようになっている。

 たとえ感染者との接触が通知されても、前述のように位置情報を記録せず別のCOCOAインストール済みスマホとの接触履歴しかないので、具体的にいつどこで誰と接触したのかお互いにわからない。だから相手との関係性などがどこかに記録、保存されることもないので、プライバシーは守られる。

 つまり、個人情報やプライバシーという観点からすれば、一切問題はないと考えていいのだ。

「位置情報を利用しないはずなのに、設定で位置情報をオンにすることを求められた」という声も聞く。これは、AndroidはOSの仕様上、Bluetooth機能を有効にするために位置情報をONにする必要があるためである。あくまでBluetooth機能を有効にするために必要な設定というだけであり、位置情報は一切使用していないので安心してほしい。

自分の保険、大切な人を守る2つの意義

 アプリのダウンロードは、正直心理的、或いは物理的敷居が高いという人も多いだろう。しかし、COCOAにはインストールするだけの大きなメリットがある。それは、自分自身に対する保険と、家族や大切な人を守るという意味の2つがある。

 これまで、自分の感染が疑われても、なかなか保健所などがPCR検査をしてくれないという話は多くの人が聞いたことがあるはずだ。しかし、COCOAで感染者との接触通知がきた場合はスムーズに受診できるようになる。受診が遅れて治療が遅れ、病状が悪化したという話もあった。少しでも早い治療に結びつけるためにも、万一に備えて、保険として入れておくと安心なのではないか。

 また、若い人などは感染しても熱も出ず無症状のことが多いと言われている。そのため、知らない間にウイルスをうつされ、無自覚に拡散してしまう恐れがある。だが、このアプリを使っておくことで、自らの感染に気づかず周囲の家族や友人などにうつしてしまうリスクが軽減できるのだ。大切な人を守るために入れておくことも重要なのではないだろうか。

 実は、COCOAには課題が山積みだ。リリース当初、アプリストアで「COCOA」などで検索しても表示されなかったこと。iOSの場合iOS13.5以降が対象となるため、iPhone6やiPhone5利用者では使えないこと。そもそもスマホ利用者限定のため、スマホを所有していない人は対象外となることなどだ。

 またCOCOAでは、感染した陽性者は自ら管理システムから発行された処理番号を入力する必要がある。これは感染していないのに陽性だと報告するいたずらを防ぐ目的でもあったのだが、発行されていない文字列を入力しても「完了しました」と表示される不具合などもあった。これらの不具合は修正され、7月頭には本格運用が始まっている。

 このアプリの効用は、感染者も濃厚接触者もスマホ利用者・アプリ利用者である場合に限られる。つまり、アプリの利用者が増えれば増えるほど精度が高くなることが期待できるのだ。利用者が増えるほどに効果が期待できる、という部分は、予防接種の意義や効果と似ているかもしれない。新型コロナウイルスにはまだ、有効なワクチンも治療法も存在していない。そのなかで、濃厚接触により感染が広まると分かっているウイルスへの備えとして、COCOAの利用はかなり有効なはずだ。

 東京都では連日感染者数が100人超となっており、まだまだ油断できない日々が続く。もう、「なんとなく怖い、面倒くさい」で利用しない時期ではない。アプリの利用が広がることで、自分自身の命を守り、大切な人に感染させるリスクも減る。今は任意による導入に頼っているが、スマホ販売やOSメジャーアップデートの際に、自動的にインストールされる仕組みに組み込まれてもよいのではないか。今後大規模イベントも可能となるが、「COCOAインストール」をイベント参加者の必須要件としたり、学校や保護者会などで生徒や保護者、地域住民を対象にCOCOAを紹介する会を開いたり、一部実施している店もあるがCOCOAを見せることで割引などが受けられる「COCOA割」などを行ってもいいだろう。

 また先日、陽性者が同アプリで登録した数が3人だったことが明らかになった。同期間での感染者数は約1200人に上り、陽性者の登録の少なさが課題となっている。現在は陽性者が自ら登録する任意性だが、陽性が明らかになった場合はその場でアプリをインストールしてもらったり、処理番号入力を勧めたりなどの対策をしてもいいのかもしれない。インストール率や利用率を上げることで守れる命がある。今後の施策や動きにも期待したい。

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