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小池百合子「冷めた圧勝劇」の不可解さ 報道機関としての責任を放棄した“テレビの大罪” 『女帝』著者・石井妙子が見た都知事選 - 石井 妙子

 都知事選が終わり、予想どおり小池百合子氏が再選を果たした。メディアは「圧勝」と報じた。だが、「圧勝」というには、あまりにも熱の感じられない選挙ではなかったか。

 4年前の都知事選はお祭りのような騒ぎだった。告示日前から連日、テレビは小池氏や他候補者を追いかけて実況中継し、ワイドショーを賑わせていた。

 それなのに今回はいったい、どうしてしまったのか。コロナ禍という問題があったにしろ、テレビは候補者による討論会さえ一度も開かず、街頭演説も報道しなかった。

小池百合子氏 ©共同通信社

 小池氏はイメージ戦略に長けた政治家であり、つねにメディアをコントロールして選挙を戦い、現在の地位を確立してきた。

 そんな小池氏が今回取った作戦は、「雲隠れ戦術」とでもいうべきものだった。4年間の都政を振り返ってみれば、公約はほとんど達成されておらず、討論会に出席すれば他候補から、厳しく追及されたことだろう。また、拙著『女帝 小池百合子』で書いた学歴詐称疑惑といった問題も必ず取沙汰されたであろう。街頭演説に出なかった理由もヤジを飛ばされるのが怖かったからではないか。

当確後に小池都政を批判しはじめたテレビ

 テレビ局は小池氏が出席しないと言うのであれば、彼女以外の候補者だけを集めて、討論会をすべきであった。それが報道機関のあるべき姿であろう。だが、その義務を怠り、討論会そのものを開かなかった。

 7月5日の投票日になって選挙特集を組み、当確が打たれた後で、記者たちが小池都政に対する批判や印象を述べているのを見たが、こうしたことは投票日前にしなければ意味がないのではないか。

 よく、「選挙期間中なので候補者を公平に扱わなくてはならない」という意見をメディアの人間が口にすることがある。しかし、選挙期間中に候補者の問題点を報じてはならない、という法令などない。メディアが自主規制しているだけだ。国民の知る権利に応えるためにも、報道機関はむしろ積極的に候補者の情報をプラスであれ、マイナスであれ、責任を持って出すべきであり、それをしてこそ報道機関といえるのではないか。

 小池氏が討論会や街頭演説を拒んだ結果、他候補はテレビで紹介される機会を奪われた。その一方、小池氏はコロナ報道で連日、会見を行い、テレビに姿が映された。これこそ、公平とは言えない。

「選挙はテレビよ」と豪語していた小池氏

 私は5月29日に拙著『女帝 小池百合子』を出版したが、発売からほぼ2カ月で実売部数20万部を超えている。この本が多くの読者に迎えられた理由のひとつには、知るべき情報が得られないという都民、国民の不満や不安が挙げられるのではないかと思う。

 拙著はネット上では大きな評判となり、また雑誌、ラジオでも様々に取り上げられた。選挙後は一部の新聞社でも取り上げられている。だが、テレビだけは頑なに、今も一切、報じようとしない。

 なぜ、テレビは取り上げようとしないのか。巷間、言われているようにテレビ局は東京都の認可を必要とする機会が多く都庁には逆らいづらい、オリンピックも控えており、都知事に気を遣っているからなのか。仮にそうだとするならば、由々しきことである。ネットが台頭しているとはいえ、テレビの影響力は依然として圧倒的に強い。人々はテレビで報じられないことは、この世で起こっていないと感じてしまう。それを小池氏はよくわかっているのだろう。

 日本新党時代から小池氏は同僚議員に、「選挙はテレビよ」と豪語していたという。テレビを味方につければ勝てるという意味である。

告発者の身の安全をどう守るか

 拙著の中で重要な証言をしている早川玲子さん(仮名)という女性がいる。小池とカイロで同居していた女性である。一部に「匿名であるのはおかしい」という声があるらしい。だが、私は逆にこう問いたい。

 真実を勇気をもって命がけで証言しようとする市井の人に対して、そこまでの負担を強いるのか、と。あるいは、匿名という条件でなら話をしたい、顔や本名は伏せたい、という証言者に対して、それなら必要ない、と断ってしまうのか、と。

 告発者の身の安全、将来を真剣に考えなくてはいけない。日本ではこれまでも勇気をもって真実を告発した人たちが権力者からの逆襲に会い、マスコミからは一瞬だけいいように使われて、大変な思いをする、という例がいくらでもある。私は早川さんをそのような目には絶対に遭わせたくないし、どこまでも守りたい。早川さんの書いた手紙、早川さんの所有する小池氏との写真まで本書では公開しているのだ。後は読者ひとりひとりに判断して頂ければと思う。

 本文(「文藝春秋」8月号)では、私が早川さんと出会うことになった事情を中心に拙著が世に出されるまでの流れを書き、合わせてメディアによって生み出された「小池百合子」という人物を書く中で抱いた所感を述べている。ご一読いただければ、有難い。

◆◆◆

 石井妙子氏の「小池百合子に屈した新聞とテレビ」は「文藝春秋」8月号および「文藝春秋digital」に掲載されています。

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(石井 妙子/文藝春秋 2020年8月号)

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