記事
  • 西端真矢

中国・反日デモ暴徒化の背景と、日中関係の今後~~最も基礎から解説!

1/3

中国で連日強烈な反日暴力行動が続き、多くの方から意見を訊かれるので、このブログにまとめてみたいと思います。

もちろん、ネット上には既にたくさんの中国政治専門家の方の解説が現れていますが、専門家だけに、「これくらいの基本背景は分かってるよね」という前提で書かれているものがほとんど。しかし友人たちと話していて思うのは、多くの日本人はこれまで「あの国って何となくうさんくさい」と、中国に関わるのを避けて生きて来たため、中国通の方から見ればごく基礎の基礎の、スーパーベーシックな知識も全く持ち合わせていない。だから、専門家の方々が易しく書いたつもりの解説を読んでも、いま一つ分からないまま終わる‥そんな状況が生まれているように思います。そしてそこから中国に対する新たな誤解や、間違った対処法も生まれてしまうように思うのです。

そこで、私のブログでは、アホらしいから専門家は書かない最も基本的なところから始めて、現在の過激デモがどうして生まれたのか、そして今後どう推移して行くと思われるのか、日本市民は彼らとどうつき合って行けば良いかについての私なりの意見まで、お伝えしたいと思います。

デモ過激化の背景には、中国共産党内部の熾烈な派閥闘争がある!

まず、今回の過激なデモの背景として必ず押さえておかなければならないのは、今、中国が激烈な政治闘争の中にあるということです。しかもその最高潮に達した時期にある。今回の過激デモは決して単純な反日デモではなく、中国内部の政治とものすごく大きな関わりを持っているということを、理解する必要があると思います。

では、今、中国政治で何が起こっているのか。これについて書いてみたいと思います。

私が色々な日本人の方と話していて思うのは、多くの日本人の皆さんは、中国共産党はびしっと一枚岩で一致団結していると思っていらっしゃる。

また、現在の共産党のトップ=総書記であり、したがって国家のトップ(=中国ではその地位を「国家主席」と呼びます)でもある胡錦濤氏が、絶対的な権力を持って党を統率していると思っていらっしゃる。この二つは共に誤解です。

中国共産党上層部には幾つも派閥があり、常に激しい闘争を繰り返しています。また、毛沢東時代とは異なり、現在の最高政治判断は全て会議によって下されています。意外と民主的(笑)なのです。‥しかし、もちろん裏がありますが‥

13億の国を動かすたった9名の人間とは?

さて、この最高政治判断を下す会議を、「中国共産党中央政治局常務委員会」と言います。要するに、共産党の役員会議。普通の国なら国の政治は、選挙によって択ばれた政治家から成る内閣が動かしますが、中国には選挙がなく一党独裁なので、共産党の役員会議で国を動かしてしまっている訳です(恐ろしいことですね‥)。

メンバーは、9名。胡錦濤氏も、震災の時に被災地を訪問に来た温家宝氏も、この常務委員会のメンバーであり、つまり、常務委員です。“チャイナ9”という呼び方がありますが、あれだけの人口を抱える中国を、最終的にはたった9名の人間が動かしているのです。

この常務委員会には、毎月2回開くこと、などといった開催規定がある訳ではありません。何か行政上の問題が生じた時に、その都度召集。そしてあの巨大国の進路が、9名での多数決によって決定されているという仕組みとなっています。

多数決と言うととても民主的で、何だか小学校の学級会のようなほのぼの感がありますが、チャイナ9の多数決。これは世界で最も重い多数決と言えるかも知れません。

さて、この常務委員9名には、序列がつけられています。その序列は、

1)これまでの職務歴

(何省のトップを務めたか。その省の重要度はどのくらいか‥といったこと。日本に例えれば、経済的にあまり規模の大きくない岐阜県のトップを務めていたという実績より、大阪府の知事を務めていた方が評価は上になります)

2)実績

(実際にどんな実績を挙げたか。たとえば、在任中に経済成長を押し上げたとか、犯罪撲滅に成果を挙げたとか)

といった、「或る程度」客観的な評価から成っています。現在、胡錦濤氏が序列1位であるため、共産党の総書記、そして同時に国家主席の地位についているという訳です。

だから、9名の中で胡氏がかなり強い発言権を持っていることはいるのですが、多数決制であるため、常に他の8名と協議・牽制し合いしながら行政を推し進めなければいけない。これが中国政治の実情です。現在の中国の国家主席は、決して独裁的権力を持っている訳ではないのです。

いよいよ今、9人を択ぶ政治の季節

さて、先ほど「或る程度客観的な評価」と書きましたが、ここに大きなからくりがあります。あれだけ大きな国ですから、行政の実務能力がある人間もうようよといる。つまり、常務委員になれそうな人材も多数いるということで、その中で、「誰を常務委員にするのか」という大きな問題が生じるのです。

日本の会社を考えてみて下さい。或る程度大きな会社であれば出世レースというものが展開され、誰が役員になり誰がなれなかったか、その裏にはどんな派閥抗争があったのか‥毎年、人事の季節には社内でひそひそと噂話が飛び交うものです。

これと同じことが人口13億の国家レベルで、中国の常務委員についても起こっています。李と自分は政治信条が近いから李を入れたい。或いは、李なら自分の手足となって動いてくれる人材だから李を入れたい‥現常務委員9名一人一人に思惑があります。

また、常務委員以外の実力者たち‥例えば軍の実力者や、常務委員にはなっていないけれど政治的実力を持つ者、長老‥などなどそれぞれがそれぞれの思惑を持ち、派閥を組み、自分たちの推す候補を入れるために離合集散を繰り返す。これが、現代中国政治の真髄なのです。

では、最終的に、どうやって「誰を常務委員にして、誰は入れない」と決めるのか?これは、常務委員会そのものではなく、もう一つ別の会議によって決められます。

では、その会議は一体いつ開かれるのか?これが、今回の反日デモの過激化と大きな関係を持っていると思われるのです。

そもそも、チャイナ9を択ぶ「常務委員決め会議」。ここにはどんなサイクルがあるのか?例えば毎年1度択ぶのか、どうなのか?

実は、そこには、あっけないほど素朴なきまり、「定年制」が存在します。

日本の会社だと、「社長職は70歳まで」と決まっていてもヒゲで三段腹で愛人が五人いる剛腕社長がむりやり社則を変えて、80歳まで居座り続ける、ということもままあります。しかし中国はここでも意外と民主的で、常務委員は70歳まで。5年に1度開かれる党大会の時点で70歳になる常務委員は、たとえ共産党総書記兼国家主席である胡錦濤氏であっても、必ず退場しなければなりません。

実は、今年2012年とは、まさにこの5年に1度の党大会の年。そして党大会は毎回秋に開かれることが慣例となっており、今から1カ月後の、10月後半頃の開催が有力視されています。つまり、次の5年間の中国トップ9人が、10月にお披露目となる訳です。

特に今回は定年を迎える常務委員がことのほか多く、9名のうち7名が退場します。胡錦濤氏も温家宝氏も退場。がらっと入れ替わる新常務委員に誰を押し込むか、で、今年に入った頃から激烈な政治闘争が繰り広げられているという状況なのです。

ところで、この新メンバー、10月の党大会で「発表される」のであって、「択ばれる」のではありません。実は、毎回、党大会に先立つ7~8月頃、北京の北にある北載河という避暑地でわざわざ特別に非公開の会議を招集し、そこに、チャイナ9メンバー、軍幹部、元老、有力政治家が集まり、じっくりと話し合った末に決定を下すのが慣例です。つまり、新メンバーは党大会前に既に決まっているということ。党大会はそれに承認を出すための場に過ぎないという訳です。

今回も、8月前半に国の有力者が北載河に集まり、秘密会議が開かれていました。しかしどうも今年はそこでは決まり切らなかったらしい、というのがもっぱらの評判です。つまり、チャイナ9の椅子取りゲームは今もまだ続いている。非常に非常に不安定な政治状況であり、そこに新たな要素、「反日」というカードが現れた。今回のデモがこうまで過激化した背景には、このような事情があると思われるのです。

「反日」はただの「反日」ではない。極度に政治的意味を帯びている、という事実

ここでもう一つ押さえておかなければいけない基本事項は、「反日」という概念が中国政治においてどのような意味を持っているか、ということです。

中国では政治闘争が激烈化して来た時に、「反日」が踏み絵にされるということがままあります。A派とB派が対立した時に、「自分たちはどの程度反日か」という問題を持ち出して、

「ほら、B派はかつて我が国を侵略した日本に、こんなに媚を売っている。あんなやつらに国の舵取りをする資格はない!」

と攻撃の材料にするのです。実際、ここを突かれて(これだけが原因ではありませんが)転落した総書記が過去に存在します。1987年の胡耀邦総書記のケースです。胡耀邦氏は現代中国の指導者中、最も強く民主化を推し進めようとしていた人物だと思いますが、それに不満を持つ勢力が、日本と円満な関係を築こうとしていた氏の外交姿勢をウィークポイントと捉え、攻撃。失脚へ導く材料の一つにしました。本当の目的は反日ではなく、民主化を遅らせること。そのダシに日本が使われたのです。

日本人は、このことを頭に叩き込んでおかなければいけないと思います。

中国政治にとって日本とは、水戸黄門の「この印籠が目に入らぬか!」の逆バージョン的存在。「反日!」と叫べば誰も異議は唱えられない、正義の御旗です。

小学校から教育の現場で繰り返し繰り返し叩き込まれ、一種の道徳スローガンのようになっていますから、これに表立って反発を唱えることは、今の中国では難しい。特に政治家にとっては最高に難しい。靖国参拝や尖閣諸島問題など、何か中国人のナショナリズムを刺激する行動を日本側が取った場合、もしも穏当に処理しようとすれば、そこを突かれて失脚してしまうかも知れないのですから。

あわせて読みたい

「中国反日デモ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    丸山議員の診断出した医師に憤り

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    スルガ銀行を助ける金融庁の本音

    大関暁夫

  3. 3

    「ガイアの夜明け」にねつ造疑惑

    和田政宗

  4. 4

    乙武氏の義手・義足姿に大反響

    AbemaTIMES

  5. 5

    専業主婦ではない無職人妻に同情

    キャリコネニュース

  6. 6

    トランプ氏の対中政策は正しい

    奥山真司

  7. 7

    メイ氏辞任 EU離脱の元凶は何か

    舛添要一

  8. 8

    山口 移籍前夜の運営批判が波紋

    女性自身

  9. 9

    書類を即処分 桜を見る会の異常

    猪野 亨

  10. 10

    米中冷戦で日本は主戦場の可能性

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。