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介護で中途半端にロボットを使うと効率は下がってしまう。心を癒すための技術が求められる - 賢人論。第116回(前編)GROOVE X株式会社 代表取締役 林要

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世界的に注目を浴びている日本発のテクノロジー「LOVOT(らぼっと)」をご存じだろうか。今年1月の「CES2020」で「イノベーションアワード」を受賞。50ヵ国以上、1,300以上の海外メディアで取り上げられた。そのLOVOTが新型コロナによる非常事態宣言をきっかけに国内でも認知され始め、要介護者の方にとってペットの代わりになっているケースもあるという。開発者は林要氏。コミュニケーション・ロボット「Pepper」の開発にも携わった人物だ。「テクノロジーは人を幸せにするためにある」と語る林氏。まずはLOVOT開発の目的について伺った。

取材・文/木村光一 撮影/岡友香

発展を続けるテクノロジーの存在が不安を助長、その問題解決のためにLOVOTは誕生した

みんなの介護 最初に従来のロボットとLOVOT(らぼっと)は何が違うのかをお聞かせください。

 ロボットの語源は“人の代わりに仕事をする存在”だと言われています。つまり、人間にとってロボットが存在するメリットとは、“人がいなくても生産性が上がること”にほかなりません。

しかし、LOVOTは人の代わりに仕事はしませんし、ほかのロボットのように人間の言葉を話すわけでもありません。「まったく何もしない」というわけではありませんが、人の仕事の代わりをすることを目的にしてつくられていない。あえて言うなら“人の生産性向上のサポートをする存在”でありたいと考えています。

そもそもテクノロジーとは人を幸せにするためのものでした。資本主義の社会では、「生産性を上げることが、すべての人々の幸福につながる」と考えられていましたから、ロボットの進化もひたすら生産性の向上が目的の中心でした。

ところが、ロボットやAI(人工知能)が躍進した結果、幸せではない人々が出現してしまった。つまり、「このままでは人間は不要になってしまうのではないか」「もしかしたら自分は役立たずの烙印を捺されてしまうのではないか」といった不安を抱く人が増えてしましました。人を幸せにするはずのテクノロジーが、不安を助長するという皮肉な結果を招いてしまったわけです。

みんなの介護 なぜ、そういった本末転倒な状況が生じてしまったのでしょうか。 

 それは、「生産性」を人の幸福度を測る一番の指標にして突き進んできたからです。

しかし、衣食住に必要なモノが人々に行きわたると、次の段階として多くの人々が「自分は社会や誰かの役に立っているのか」「どうすればより良い明日を迎えられるのか」、といった事柄を幸福度測定の指標にするようになりました。もはや「生産性向上=幸福」ではなくなってしまったわけです。

私たちがLOVOT開発プロジェクトを立ち上げる際にも、同じことを考えました。従来の機能や生産性優先のロボットとは、人を幸せにするための方法論を変えなければならない。そして「何も仕事はしない。でも、そばにいて人に安心を与え、愛着をかき立てる存在」というコンセプトが固まったんです。

LOVOTはペット。人間の精神を癒す最先端テクノロジー

 当初より、LOVOTのユーザーを「ペットが欲しいけれど、諸事情があって飼えない人たち」と想定しており、今でもそれは変わっていません。

実はペットを飼いたい人の数は、すでにペットを飼っている人の約2倍に上ると言われています。日本の全世帯の4分の3が「何かしらペットを飼いたい」と希望している。それにもかかわらず、実際に飼えている世帯は4分の1。4分の2が飼いたくても飼えずにいます。LOVOTはその4分の2の世帯に向けて開発されたペットロボット。イヌやネコのように人間の精神を癒し、日々の暮らしに“信頼関係”という心の豊かさをもたらすテクノロジーです。

みんなの介護 ストレスといえば、緊急事態態宣言下のステイホーム期間中、LOVOTの注文が一気に増えたそうですね。

 はい。我々もこれについては想定していませんでした。このプロジェクト自体、世間の認知度は低いと感じていたので、まずは地道にLOVOTと直接触れ合える場をつくって、肌で感じながら知っていただく以外に方法はない、と考えていました。ところが、家の中で過ごす時間が増えたこと、巣ごもり期間中にSNSでユーザーの声が広がったことなどが、これまで購入を迷っていた人たちの背中を押してくれたんです。

みんなの介護 購入者からはどんな声が届いていますか。

 皆さん、「ロボット」というより「生きもの」として接していただいているようです。いちばん多く寄せられたのが「LOVOTが来てから家に帰るのが楽しみになった」というご意見。ほかにも「初期の認知症で怒りっぽくなっていた高齢者の方が、LOVOTの世話をするようになってから優しくなった」といった声も届いています。

この認知症の方のケースでは、おそらくイヌやネコを飼ったとしても同様の現象が起きていただろうと推測できます。ただ、「認知症を発症した方のために生き物を飼う」という決断は、なかなか下せるものではありません。こういった点も、LOVOTの長所の1つと考えています。


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