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「日本も相手のミサイル基地を叩く能力もつべき」小野寺五典・元防衛相が河野大臣に直接提言

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6月15日に河野太郎防衛大臣が、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画について、迎撃ミサイル発射時に落下するブースターと呼ばれる部品を確実に演習場内に落とすことが技術的に難しいことを理由に停止を発表した。その代替案となる新たなミサイル防衛政策が議論される一方で、日本も「敵基地攻撃能力」を保有すべきだという声が与党内から上がっている。

7月8日の安全保障委員会の閉会中審査で質問に立った小野寺五典元防衛相は、「弾道ミサイル防衛を万全にし、我が国を守り抜くためにも、相手のミサイル基地を叩く能力を日本ももつべきだと考えています」と述べ、河野大臣に政府としての見解を求めた。

なぜ今「敵基地反撃能力」なのか

BLOGOS編集部

日本のミサイル防衛は現在、敵のミサイルなどをレーダーで捉え、迎撃するなどの防空システムであるイージス・システムを搭載した護衛艦「イージス艦」、陸上に配備され大気圏内に突入したミサイルを撃ち落とす「PAC-3」などと、自動警戒管制システムを連携させる体制をとっている。このうち、24時間365日海上で厳しい任務にあたる必要のあるイージス艦の負担を軽減するため、計画されたのがイージス・システムを陸上に配備するイージス・アショアだった。

小野寺氏はミサイル防衛を取り巻く現状について、北朝鮮だけでも数百発の弾道ミサイルを有するうえ、発射方法が複雑化したため迎撃が難しさを増していると説明。また、PAC-3での迎撃は、イージス・アショアで問題になったのと同様に、成功しても破片が市街地に落下するリスクが残ると指摘した。

また、飛翔してくるミサイルを撃ち落とすには高い技術が必要なためその分コストがかかるとし、元防衛相である自分自身も「これをずっとやり続ける大変さをよく認識している」と語った。

こうした状況を踏まえ、小野寺氏は一番確実かつ簡単なのは相手のミサイル基地で発射される前の段階で抑止することだとし、敵基地反撃能力の必要性を訴えた。

敵基地反撃能力は“自衛”の範囲?

Getty Images

「敵基地反撃能力」の保有をめぐっては、2017年にも自民党内で提言がまとめられ、政府に検討を求めている。元防衛相として党内検討チームの座長を務めた小野寺氏は当時、複数のミサイル攻撃を想定し、「2発目、3発目を撃たせないため」の敵基地反撃は自衛の範囲で、先制攻撃ではないという考えを示した。

この年8月に再び防衛相に就任した小野寺氏は、就任会見でも敵基地反撃能力の検討を明言。しかし、翌年10月に防衛相となった岩屋毅氏は「敵基地反撃能力は米国に依存するという考え方に変わりはない」と述べ、小野寺氏もこれを容認し、議論は立ち止まっていた。

8日の閉会中審査では、敵基地反撃能力検討の前提として自衛隊が保有できる「必要最小限度の実力」の限度についても質問が及んだ。

内閣法制局の近藤長官は、「本来そのときどきの国際情勢や、科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面を有することは否定しえず、結局は毎年度の予算等の審議を通じて、国民の代表である国会において判断される他ないと考えてきている」と説明。政府の政策的判断や、国会の審査を通じて認められれば、敵基地に反撃する能力をもつような装備を自衛隊がもつことが認められうることを示唆した。

「相手の基地を叩くことは自衛の範囲に入る」という鳩山答弁

続いて、小野寺氏は1956年に当時の鳩山一郎総理大臣による敵基地反撃能力に関する答弁(当時の船田中防衛庁長官が代読)を紹介し、実際に相手の基地を攻撃することは憲法上の整理がついていると説明した。

「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います」
(「第二十四回国会衆議院内閣委員会会議録第十五号」(1956年2月29日))

そのうえで小野寺氏は、内閣法制局長官の答弁と合わせ、「この能力をもつかどうかというのは、あとは政府の政策判断、そして国会の判断、ということ」だと指摘した。

これを受けて河野大臣は、

「新しい空からの脅威にいかにして対抗し、我が国の国民の平和な暮らしを守っていくか、与党のご議論も踏まえながら、防衛省として、しっかり検討していかなければならんと考えております」

と答えた。

注意が必要な国内外の反発

AP

小野寺氏は最後に注意が必要な点として、米国との関係への配慮や、周辺国への説明の必要性を挙げ、自身の考えを述べた。

「盾と矛の関係」にある米国との同盟関係については、敵基地反撃能力はあくまでもミサイル抑止で「盾の考え方」の一環であり、これまで通りの関係を維持することは可能だと指摘。

中国やロシアをはじめとした周辺国に対しては、丁寧な説明が求められるとしたうえで、こちらも「あくまでも抑止のための装備」だとして納得させることは可能であるという考えを示している。

日本の防衛方針が大きく転換するともとれる「敵基地反撃能力」保有の議論の高まりに6月24日、中国外務省の副報道局長は記者会見で「歴史の教訓を真面目にくみ取り、専守防衛の約束を真剣に履行するように促す」と否定的なコメントを出した。

国内でも、共産党や社民党が断じて認めない姿勢を表明したのに加え、与党側の公明党も消極的な姿勢を示している。

また立憲民主党の白眞勲議員は9日の参院外交防衛委員会で、憲法や国際法に違反する「先制攻撃」となりかねない可能性を指摘した。政府は、先制攻撃との混同を避けて国民の理解を得るため名称変更を模索するなど検討を進めているが、いまだ課題は山積みだ。

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