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「石炭火力からの撤退と原発ゼロを同時にめざせ」(朝日新聞社説)だと?〜自分でもできもしない非科学的な無理難題を政府に要求することはやめていただきたい

6月5日、「令和元年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2020)が閣議決定されました。

『エネルギー白書2020』は資源エネルギー庁公式サイトで公開されています。

経済産業省 資源エネルギー庁
令和元年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/

過去九年間のこの国の電源構成の推移を見てみましょう。

※『エネルギー白書2020』の公開データより『木走日記』作成

見やすいようにグラフにしてみます。

※『エネルギー白書2020』の公開データより『木走日記』作成

我が国のエネルギー政策にとってまさに激動の9年であったと言えましょう。

2010年、当時の構成を見てみますと、原子力が25%を占めていました、石炭・天然ガス・石油等の化石系は66%でした。

※『木走日記』作成

政府は原子力の比率を高め化石系の比率を減らし、CO2削減策を推進すると計画していましたが、2011年福島第一原発事故が発生し、原子力発電増設の計画は急ブレーキ、それどころか既存の原発も次々に停止に追い込まれます。

2014年にはついに原子力発電は0%になります。

※『木走日記』作成

当然ながら失った25%の電源を埋め合わせるために、石炭・天然ガス・石油等の化石系は87%にまで膨らみます。

太陽光(2%)や風力(1%)など再生可能エネルギーは、原子力に替わるベースロード電源(基幹電源)にはなりませんでした。

そして、2018年、原子力が6%まで復活し、太陽光も6%に伸び、化石系は77%まで減少します。

※『木走日記』作成

ベースロード電源(基幹電源)と期待された25%のシェアだった原子力が、3.11以後、0%まで落ち込み現在も一部メディアの強い反対もあり稼働再開がなかなかままなりません。

季節や天候などに大きく左右される再エネ系が原子力に替わる安定電源に成長することはおそらく多くの困難を要します。

結果、我が国の現在の電源は天然ガス(38%)、石炭(32%)、石油等(7%)と、化石系に依存している状態です。

今確認しましたように激動の9年間でした。

決してベストの電源構成ではありませんが、日本にとって現実的に電源不足に陥らないためのギリギリの選択の結果だと評価できます。

・・・

さて朝日新聞の8日付けの社説です。

この状態で、さんざん原子力発電に反対してきた朝日新聞は、今度は「石炭火力からの撤退」を日本政府に求めています。

(社説)石炭火力削減 温暖化防ぐ道筋を描け
2020年7月8日 5時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S14540962.html?iref=pc_rensai_long_16_article

朝日新聞社説は「石炭火力」を「再エネに置き換えていく」ことを強く主張、ただし「原発も」「ゼロをめざ」せと乱暴です。

 排出量を抜本的に削減するのなら、旧式の石炭火力を高効率型に更新するのではなく、再エネに置き換えていくことこそ求められる。原発もCO2を出さないが、事故のリスクをなくすために将来はゼロをめざす必要がある。それまでに再エネの拡大を急ぐべきだ。

社説は最後に、「石炭火力からの撤退とその期限を決め、電源構成を抜本的に見直す」、「そこへの道筋を具体的に描」くべきだ、「安倍政権の姿勢が問われている」と結ばれています。

 まずは石炭火力からの撤退とその期限を決め、電源構成を抜本的に見直す。そして、そこへの道筋を具体的に描く。気候危機対策に本腰を入れるのか、安倍政権の姿勢が問われている。

2010年当時の主要ベースロード電源(2位の石炭(28%)と3位の原子力(25%))、この53%の電源からゼロにせよというのです。

撤退する(再エネに置き換えていく)シナリオを具体的に示せと、朝日新聞は無理難題を政府に要求しています。

朝日新聞論説室に言いたいです。

「温暖化防ぐ道筋を描け」と社説で唱えるならば、あなた方がまず、「石炭火力からの撤退とその期限を決め、電源構成を抜本的に見直す。そして、そこへの道筋を具体的に描く」ことを、科学的に責任を持って示してほしい。

自分でもできもしない非科学的な無理難題を政府に要求することはやめていただきたいです。

(木走まさみず)

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