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”食べるコオロギ”育ててます 日本の昆虫食ビジネスに挑む国内企業の奮闘

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無印良品が「コオロギせんべい」を発売するなど日本国内でも注目が高まっている”昆虫食”。その材料となる食用コオロギの飼育・販売に挑戦する会社が埼玉県内にある。

現在、大手小売向けに出荷するための食用コオロギ生産にも着手している太陽グリーンエナジー(太陽GE)だ。

「食べられるコオロギはどんな種類でどんな味?」「安全性は?」「どうやって育てているの?」

日本ではまだまだ知名度の低い昆虫食事業に挑む企業の姿を取材した。

※記事内には昆虫の画像が掲載されています。苦手な方はご注意ください。

世界で注目が高まる昆虫食とは

写真AC

コオロギやハチ、イナゴといった「虫」を食べる昆虫食の存在が注目された背景のひとつには、世界的な人口増加による食糧危機がある。

2013年、国連食糧農業機関(FAO)が「食品及び資料における昆虫類の役割に注目する報告書」のなかで「昆虫は高脂肪、高タンパク、ビタミン、食物繊維やミネラルに富んだ、高栄養かつ健康的な食糧源となる」と発表。世界的に昆虫食への注目が高まった。

日本では今年5月、無印良品を展開する株式会社良品計画(東京都)が、パウダー状のコオロギをすり込んだせんべいを徳島大学発のベンチャーと協業して開発・販売し話題を呼んだ。

昆虫食を口にする際の注意点は?

栄養価の高さに注目が集まる昆虫食だが、カニやエビなどの「甲殻類アレルギー」を持つ人は注意が必要だ

太陽GEはコオロギの成分について「エビやカニに近い成分が含まれているため、アレルギーを持っている人は控えた方がいい」としている。

基板表面の「緑インク」を作っている会社がコオロギを育て始めた

日本で食用コオロギを育てる太陽GEの荒神文彦社長

そんな昆虫食に事業として日本でいち早く目をつけたのが、太陽GEが所属する太陽ホールディングス(太陽HD、本社東京都)グループだった。

太陽HDグループは大部分のエレクトロニクス製品に入っている基板部分の表面に塗るインク「ソルダーレジスト」の生産を主な柱としていた。

太陽HDグループは電子基板部分の表面に塗るインク「ソルダーレジスト」を事業の柱としていた:写真AC

17年、太陽HDグループの中期経営計画で、エレクトロニクス事業の一本足ではなく、世界的に取り組むべき課題である3つの分野(医療・医薬品、エネルギー、食糧)を新たに事業領域に加え、総合化学企業を目指すことが決まった。

グループのなかで食糧とエネルギーを担当するのが太陽GEだった。

しかし食糧分野は幅が広い。どうやって伸ばしていけばいいのか。

さまざまな議論を行うなかで、手を挙げたのが東京大学で分子生物学を専攻し、外資系大手化学メーカーで殺虫剤の研究を手がけた経験を持つ太陽ファインケミカルの山路宗利さんだった。

「昆虫食が絶対面白い」

FAOの発表から4年が経ち、世界の昆虫食人気が徐々に高まっていたころだった。

「いま、グループでそれをやらない手はない」。山路さんの提案に太陽HDグループの佐藤英志代表はGOサインを出した。

昆虫食業界の活況で対応できないほどの問い合わせが殺到

昆虫食の専門企業である合同会社TAKEOが6月に発売した「福島・ソース味 二本松こおろぎ」には太陽GEのコオロギが使用されている

現在、年間約1トンのコオロギを生産・販売する太陽GEのもとには、対応できないほどの問い合わせが食品メーカーなどから押し寄せている。

同社の荒神文彦社長は「今年は非常に好調。昨年末から問い合わせが非常に増え、対応できていない状況です」とうれしい悲鳴をあげる。

コオロギはすべて国内向けで、生きたものや乾燥させたもの、パウダー状や冷凍などさまざまな形態で販売。主に人が食べる食糧品として出荷している。(一部、昆虫を餌にするペット向けに販売)。

問い合わせ殺到の背景には、世界的な昆虫食人気の高まりや国内メディアの注目度が増したこと、インターネット販売を通して昆虫食が徐々に浸透してきたことなどがある。

「買ってくれる人がいない」という壁

しかし、同社の昆虫食事業は順風満帆だったわけではない。

立ち上げ当時、日本では人間用の食糧品としてほとんど浸透していなかったコオロギの生産・販売。立ちふさがったのは「販路」の壁だった。

買ってくれる人がいなければ、いくら生産しても売れない。当初は人間用ではなくペット向けや動物園向けの餌として購入してもらうことをメインにすることを想定した。

特に注目したのが養殖魚用の餌としての活用だった。魚類はタンパク質などの必須栄養素が不足すると共食いをしてしまう。世界的に魚の養殖が広がるなかで起きている問題が養殖飼料の原料となる魚粉などの不足だ。

そこで、タンパク質代替として昆虫が使えないかと交渉を始めた。しかし取引先が求めるのは一度に1トンや10トンといった量。そのためには数百万匹のコオロギを生産しなくてはならず、ハードルが高かった。

そこで考慮した末に浮かんだ答えが「人間用の食品」。18年から、昆虫科学で食料問題解決を目指す徳島大学発のベンチャー企業「グラリス」と一緒にコオロギの育成を開始した。

「なんでコオロギ?」当初は社内から疑問の声も

Getty Images

グループ内での理解も当初は少なかった。

食糧を考えるうえで農業など他にできるジャンルがあるのではないか。食糧分野の事業としてコオロギ生産を開始した際、社内から起きた声で圧倒的に多かったのは「なんで虫なの?」という疑問の声だった。

だが、太陽HDグループは、ソルダーレジストというニッチな市場でトップを走ってきた企業だ。

誰もが挑戦したことのない分野で未来に役立つ。グローバルな総合化学企業になろうと舵をきったときに選んだひとつの事業がコオロギの生産というのは、「自分たちらしいのではないか」と徐々に理解は広まっていった。

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