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パナ社長、津賀氏の「尖り」発言

大企業の社長が、心の内面を語る機会はほとんどありません。むしろ、避けるのが常識とされています。パナソニック社長の津賀一宏氏は7日、その常識を破るかのように、パナの未来をつくる実験区「100BANCHI(バンチ)」が開催したイベント「ナナナナ祭」で、学生時代を振り返りつつ、普段考えていること、そして自身の思いを吐露しました。

※2018年の「ナナナナ祭」

「100BANCHI」は2017年7月、パナソニックが創業100年を迎えるのを機に渋谷に開設した、摩訶不思議なコミュニティスペースです。

昆虫食のレシピ研究、ふんどしの普及活動、不動産ならぬ「可動産」の可能性の追求など、常識では考えられないことに大真面目に取り組んでいます。「100BANCHI」の成果を年に一度、お披露目する場が「ナナナナ祭」です。今年で3回目となる「ナナナナ祭」は、7月7日から8月7日まで開かれています。

それにしても、パナソニックはなぜ、「100BANCHI」をつくったのか。どうしてパナソニックらしからぬ、常識はずれのことができるのか。津賀さんの存在が多分にあると見ていいでしょう。

かつて私は、当時の松下電器産業社長の中村邦夫氏に、津賀さんをどのように見ていますかと聞いたことがあります。その答えは一言、「変わったお人ですわな」でした。

津賀さんは、7日の「ナナナナ祭」に、ビオトープ代表の佐宗邦威さんとのクロストークでズーム出演し、冒頭、コロナ禍で在宅勤務をしながら考えたことを明かしました。

「海外出張はなくなり、パートナー企業との会食はほぼすべてキャンセルになった。自分が会社に出れば、秘書も出ざるを得ず、食事も用意しなければならない。かえって迷惑をかける。在宅勤務をしながら、『社長って一体、何者なのか』と問い直した数か月でした。

個人的には、メンタル的に結構つらいところもあったんですが、集中して考える時間がとれたことはよかった。従来の時間に追われる姿、もしくは人とのコミュニケーションばかりやり過ぎてしまって、次の行動なりが人との対話の中でのみ決まっていく。そういう姿よりは、少しは人間らしくなったかなというのが正直なところです」

コロナ禍で、事業の立て直しや経営の見直しに追われた社長は少なくないと思いますが、「社長って一体、何者?」と内省しながらステイホームをした社長というのは聞いたことがありませんよね。

「会社に出ていれば、非常に心地いい。すべての場が用意され、自分がやるべきことも秘書が決めてくれる。会社に出ていれば、問い合わせも入る。でも、これって、あまり人間らしくないですよね。自分が何をし、何を考えるか、自分の責任で回していく。そうしていくと、けっこうつらいものもあるし、何をやるべきなのかとか、気持ちの面ではしんどい思いもありましたが、人間らししいなと思いましたね」

続いて津賀さんは、「個人の〝尖り(とがり)〟を持たなければいけない」として、学生時代を振り返りながら次のように語りました。

「高校のときは数学100点、社会5点でした。5点の社会は、こんなもん、勉強するに値しないと思って、自分に〝尖り〟をつけていった。ぜんぶ100点がとれる人であっても、100点をとることが自分を見失わないあるべき姿なんですか、それでいいんですかと。あえて社会は5点でいいんだと割り切れる勇気こそが個人を尖らせるのではないか。ぜんぶ100点をとるのは優秀かもしれないけれど、それでは、尖らない。組織でどういう歯車になればいいか、どういうビジョンをもてばいいかもわからなくなる」

すべての科目で万遍なく100点をとるよりも、得意な科目に秀でる勇気をもてということですね。それでこそ〝尖った〟人間がつくられると。「できる科目だけでやっていける自信があった」とも、津賀さんは語りました。

「尖る」ことの大切さ、常識にとらわれない勇気をもつ津賀さんだからこそ、熱い気持ちをもって「100BANCHI」に集まってくる若い人たちを応援するんですね。

津賀さんの「ぶっちゃけトーク」について、パナの社内からは、「やめてほしい」「ひかえてほしい」という声があるそうですが、逆だと思います。津賀さんが今回、自らの思いを率直に語ったことで、パナのイメージは変わると思いますし、パナに親近感をもつ人も出てくるはずです。

津賀さんは、パナの企業風土を変えるために、服装の自由裁量や一部のオフィスでのフリーアドレス、社内の別の部署の仕事をかけもちする「社内複業」など、思い切った取り組みを進めています。社員のマインド改革を試みているんですね。また、外部から優秀な役員やイノベーション人材を呼び込んで、変化の追い風にしています。

それでも、パナソニックはなかなか変わることができません。まじめでお堅い会社のイメージもそのままです。

津賀さんにはこれからも、社内の声を忖度せずに、もっともっと「ぶっちゃけトーク」をしてほしい。強烈な「尖り」ぶりを前面に出して、パナの企業風土を刷新してほしい。

いまのパナソニックにとって重要なのは、社内がトップの「尖がる」力を信じて、しっかりとついていくこと。それにつきるのではないでしょうか。

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