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「まさかの国が敗訴」アマゾンギフト券を売りまくった泉佐野市の是非

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全国の寄付金総額の「約10%」を集めた奇策

ふるさと納税制度に絡んで大阪府泉佐野市が総務省を訴えた上告審判決で6月30日、泉佐野市が勝訴した。最高裁第3小法廷が同市の請求を棄却した大阪高裁の判決を破棄し、総務省による対象除外の決定を取り消したのである。泉佐野市は「ふるさと納税の新しい制度の対象自治体から外されたのは違法だ」と訴えていた。

大阪府泉佐野市のふるさと納税新制度への復帰決定を受け、記者会見する千代松大耕市長=2020年7月3日、同市
大阪府泉佐野市のふるさと納税新制度への復帰決定を受け、記者会見する千代松大耕市長=2020年7月3日、同市 - 写真=時事通信フォト

これで泉佐野市の逆転勝訴が確定した。最高裁第3小法廷の裁判官5人全員一致の判決だった。

まずこれまでの経緯を振り返ってみよう。ふるさと納税は、故郷や応援したい自治体の寄付が所得税や住民税で控除される制度だ。スタートした2008年度の寄付金額は81億円(2008年度)だったが、2018年度には5127億円と10年で60倍以上に急増した。寄付金を集めるために、自治体同士が過度な「返礼品競争」を繰り返した結果だった。

このため総務省は制度を変更。返礼品は寄付金額の3割以下の地場産品に限定するとして、総務相が参加自治体を指定する新しい制度を昨年6月に開始した。

総務省は新制度の開始前から全国に新基準を通知し、過度な返礼品の見直しを求めていたが、泉佐野市はインターネット通販アマゾンのギフト券を提供するなどして2018年度には全国の寄付金総額の10%近い497億円を集めていた。

最高裁「社会通念上、節度を欠いたと評価されてもやむを得ない」

次に判決の内容を見てみよう。

新制度の開始にともない、総務省は「過去に制度の趣旨に反して多額の寄付金を集めた自治体を除外できる」とする告示を行い、昨年5月に泉佐野市など4自治体を新制度から除外した。

しかし、最高裁は判決で「自治体に重大な不利益を生じさせる」と指摘し、「告示は総務省に委ねられている権限の範囲を超えている」と判断したうえで、「過去の募集方法を除外理由とした告示は違法で無効だ」との判決を下した。

その一方で最高裁は泉佐野市に対し、「返礼品を強調して寄付金の募集をエスカレートさせたことは、社会通念上、節度を欠いたと評価されてもやむを得ない」と言及した。裁判官の1人もその補足意見で「泉佐野市の勝訴となる結論にいささか居心地の悪さを覚える。眉をひそめざるを得ない」と述べた。

総務省の敗訴、泉佐野市の勝訴とはいえ、判決の真意は「喧嘩(けんか)両成敗」にある。

泉佐野市は「法律の枠の中で競争してきた」と反論

総務省と泉佐野市はこの喧嘩両成敗の判決をどう受け止めているのだろうか。

高市早苗総務相は最高裁判決のあった6月30日に「判決の趣旨に従い、できるだけ早く必要な対応を行う」とのコメントを出し、さらに7月3日には記者会見で「地方自治を所管する立場として、判決を重く受け止めている。地方団体に対する制度を立案する場合、より一層多角的な観点から検討を徹底させる」と話すとともに、ふるさと納税制度から除外した大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の3自治体の制度参加を認めた。

泉佐野市の千代松大耕(ひろやす)市長も6月30日に記者会見を開き、「地方分権と言いながら多くの自治体が国の一方的な通知で悔しい思いをしてきた。地方自治の新しい一歩につながる」と最高裁判決を評価し、「ほっとしている。早期に復帰し、ふるさと納税制度の発展に貢献していきたい」と語った。

最高裁判決で「社会通念上の節度を欠いていた」との批判を受けた点については「法律の枠の中で競争してきた」と反論していた。

泉佐野市は、高価な肉類やアマゾンのギフト券などの返礼品で多額の寄付金を集め、自粛を求める総務省の通知を何度も無視し、総務省に「身勝手な自治体だ」と名指しの批判まで受けた。

今年1月の大阪高裁判決では、同市が敗訴しており、最高裁での逆転勝訴を喜ぶ千代松市長の気持ちは分かるが、この言動はどうだろうか。謙虚さに欠けるのではないか。

旧制度と新制度の「差」を検証する必要がある

沙鴎一歩は昨年5月22日に出した「泉佐野市のふるさと納税はやり過ぎなのか」という記事で、新制度を批判した。ふるさと納税制度の目的が、都市と地方の税収入の格差是正と地方の活性化にあり、旧制度には都市に集中する税収を地方に振り分ける大きな効果があったからだ。そこでは「新制度は自治体の過度な返戻金競争に歯止めをかけるだろうが、自由な競争を奪ってしまう」とも書いた。

日本は自由主義経済の国である。自由な競争は肯定されなければいけない。ただし、旧制度と新制度の「差」を検証する必要がある。つまり過当競争を抑制することで、本来の目的である都市と地方の税収入の格差是正にどれだけの効果の違いが生じたかをよく分析する必要がある。

仮にその効果が少ないという結果が出たら、「返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限る」という規制を緩めて競争を活性化させるべきだ。行政にもその都度、検証は欠かせない。とくに総務省や泉佐野市にはここを理解してもらいたい。

読売社説は「双方にくぎを刺す司法判断」と指摘する

7月1日付の読売新聞の社説は

「総務省の決定は行き過ぎだが、大阪府泉佐野市のやり方にも問題があった。双方にくぎを刺す司法判断と言えよう」
と書き出す。「最高裁の判断は喧嘩両成敗だ」との沙鴎一歩の見解と同じである。

しかし、読売社説はふるさと納税制度の問題をこう指摘する。

「ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付すると、それに近い金額が寄付者の住民税などから差し引かれる。その分、税収減が大きくなる自治体が出てくる。自治体間の相互不信が広がれば、制度の根幹を揺るがしかねない」

前述したように日本が自由主義経済を土台にしている以上、どうしても自治体同士の競争は避けられない。そこを読売社説はどう考えているのだろうか。

読売社説は続けて指摘する。

「ふるさと納税では、ほかにも問題が生じている」

「高知県奈半利町は、新制度導入後も基準を超える高額な返礼品を提供し、総務省には虚偽の報告をしていた。返礼品業者などから賄賂を受け取ったとして、職員が起訴される事件も起きている」

「他の自治体についても制度の運用状況を点検する必要がある」

繰り返すが、制度やシステムは常に点検してその効果を検証する必要がある。読売社説の指摘はその点をしっかり踏まえている。

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