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橋下徹「知事を経験したからわかる熊本・蒲島知事の後悔」

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記録的な豪雨により九州各地の川が氾濫、大きな被害が出ている。なかでも球磨川が氾濫し50人超の死者が出た熊本県の状況は悲惨を極める。蒲島郁夫熊本県知事は12年前に球磨川水系の川辺川ダム計画を中止したことで名を上げたが、今回の事態に中止の影響はなかっただろうか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(7月7日配信)から抜粋記事をお届けします。

大雨/大雨で流された橋
大雨で流された球磨川の深水橋=2020年7月7日午前、熊本県八代市 - 写真=時事通信フォト

(略)

■中止から12年経ってもダムに代わる治水対策なし

今回の水害で被災された方々へのお見舞いとご冥福をお祈り致しますとともに、1日も早い日常生活への復旧を願っております。

ここで問題なのは、球磨川の上流の川辺川に建設が予定されていた「川辺川ダム」の計画について、2008年9月、蒲島郁夫熊本県知事が白紙撤回を表明したことだ。

このときの蒲島知事の決断を、当時「ダム建設反対」の論陣を張っていた朝日新聞などのメディアは大きく取り上げ、その系列のインテリたちは大英断だと称賛した。蒲島知事はダム建設を止めた知事として一躍全国的に有名となった。

僕は、蒲島知事の当時の判断の当否について詳しく検証したわけではないので、そこに意見できる立場ではない。加えて、川辺川ダムがしっかりと作られていたなら、球磨川流域の氾濫を完全に抑え込むことができたのかも、まだ未検証の段階だ。ゆえに川辺川ダムが本当に必要なのかどうかについて、僕はこの段階で言う立場にはない。

ただし、ダム中止を「表明するまでのプロセス」や、「表明後の行動」については評価することができると自負している。

というのも、それは政治と行政の役割分担という僕がライフワークにしているテーマそのものだからだ。

蒲島知事はダム建設中止という政治判断を行った。しかしその判断には行政の裏付けが整っていなかった。ゆえに中止した後に必要不可欠な「ダムによらない治水計画」がしっかりと作られなかったのである。

ダム建設を中止したのはいいが、その後12年経ってもダムによらない治水対策がきっちりと講じられないまま、今回、球磨川流域が氾濫してしまった。これは最悪だと思う。

■政治と行政の役割分担

確かに、これまで長年積み重ねてきた行政のやり方や方向性を変える政治決断それ自体は、必要な場合がある。

しかしそのような判断をする場合には、これまでのやり方や方向性を転換した後の別の「計画」を行政的にしっかりと作る必要がある。しかもその別の計画を作りそれを実行する「期限」を設定することが最も重要だ。

そうでなければ、これまで積み上げられてきたやり方(=計画)が白紙になっただけの状態になり、まったく何の策もない状態になってしまう。これは極めて危険な状態だ。たとえこれまで積み上げられてきた計画が不合理、不条理なものであったとしても、計画がまったくない状態よりは、何らかの計画がある方がまだましだ。

(略)

政治がこれまでの行政計画を否定するのであれば、それに代わる行政計画を必ず作らなければならない。このことを肝に銘ずることなく、とにかく目の前の行政を全否定する政治家が多すぎる。

行政の方向性を決めたり、決断したりするのは政治だ。しかしその方向性や決断を具体的に実行して形あるものにするのは行政だ。これが政治と行政の役割分担である。

この役割分担がしっかりできていない中での政治決断は、単なるパフォーマンスで終わってしまう。そして場合によっては悲惨な結果を生んでしまう。

政治家はこれまでの行政を変える派手な決断をすることを好む。僕もそのように見られていたと思う。

しかしそこには必ず行政的な裏付けが必要であり、その裏付けができないのであれば、政治は従来の行政計画を追認せざるを得ない。行政の裏付けのない政治決断は、社会情勢の要請から後に必ず覆されてしまう。

僕の一見派手に見える政治決断には、必ず行政の裏付けが伴っていたものだと自信をもって言える。一定の期限内に行政の裏付けが取れなかったものは、従前の行政計画に戻る修正判断を後にきちんとやったつもりだ。

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