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【原発事故と甲状腺ガン】「小児甲状腺ガン診断後の妊娠・出産支えます」 子ども基金が新たな支援スタート。療養費受給者対象に5万円追加給付。新型コロナウイルス支援も

2011年3月の原発事故当時、福島県など1都15県に住んでいて、後に甲状腺ガンと診断された18歳以下の人を対象に療養費の給付を続けている「NPO法人3・11甲状腺がん子ども基金」(東京都新宿区、崎山比早子代表理事)が、新たな支援に乗り出す。これまでに療養費を受給した女性が妊娠・出産した場合、新たに5万円を給付。妊娠・出産に関する情報発信で不安解消にも取り組む。新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入減・支出増に苦しむ受給者の支援も始めており、原発事故後に甲状腺ガンと診断された人々を様々な角度から支えていく。


【「情報発信で誤解減らしたい」】

基金が6日午後、福島県福島市内で記者会見を開き、発表した。

「妊娠・出産への支援」は、これまでに療養費(基本給付は10万円)を受給した女性が妊娠・出産した場合に新たに5万円を給付する。使い道に制限は無い。4月1日から申請を受け付けているが、出産から1年以内であれば申請出来る。

これまでの聴き取りで、受給者のうち5人妊娠・出産を確認しているという。甲状腺ガンの手術を受けたか否かは問わない。

会見した専務理事の吉田由布子さん(「チェルノブイリ」女性ネットワーク事務局長)は「原発事故から間もなく10年ということで、当時10歳だった子どもも20歳。ニーズが変化しています。甲状腺ガンの診断後に妊娠・出産された方が複数いらっしゃるという事は、私たちにとってもうれしいニュースでした。

これからはぜひ、そういう女性たちも応援していきたい」と語った。

「甲状腺ガンの手術を受けた事が原因で妊娠・出産出来ないという事はありません。しかし情報が少なく、不安を口にする声が多いです。そこで今後は、給付だけでなく情報支援にも取り組んでいきたいと考えています」と吉田さん。

秋にも、小児甲状腺ガンと妊娠・出産に関する「Q&A」をホームページ上に掲載するという。

事務局長の脇ゆうりかさんも「甲状腺ガンと妊娠・出産について知っていただく事で不安を招かなくなる。そもそもの甲状腺の機能も含めて情報発信して理解してもらう事で、甲状腺検査への誤解や結婚差別も減るのではないかと考えています」と話した。

清水一雄さん(前県民健康調査検討委員)が名誉院長を務める金地病院(東京都北区)は、ホームページで「『甲状腺の病気になると子どもができない』といった誤解をする人がいますが、それはまちがいです」、「適切な治療によって、妊娠中に甲状腺ホルモンの状態が正常に保たれていれば、流産や早産を防ぐことができ、健康な人と変わりなく無事に赤ちゃんを産むことができます」などと発信している。

会見した専務理事の吉田由布子さん。「甲状腺ガンの診断後に妊娠・出産された方が複数いらっしゃるという事は、私たちにとってもうれしいニュースでした。これからはぜひ、そういう女性たちも応援していきたい」と語った=福島県福島市の杉妻会館

【「妊娠中、不安が尽きなかった」】

会見では、実際に妊娠・出産した女性の声も紹介された。

福島県中通り在住の女性(27)は、原発事故後の2016年に甲状腺ガンと診断され、甲状腺の半分を摘出する手術を受けた。その後、福島県外の男性と結婚し、昨年出産。母子ともに健康という。

「摘出しなかった半分の甲状腺がきちんと機能するか、術後はとても心配でした。妊娠するにはホルモンバランスや精神面など様々な面で整う事が必要だと聞いていましたので、もしかしたら甲状腺が半分しか無い事で妊娠しにくいのではないかと考える事もありました」

「妊娠した後は、お腹の子が問題無く大きくなっているのか、常に心配でした。甲状腺外来に月1回通院し、血液検査でホルモンの値が基準値内におさまっているか、確認してもらいました。

食事面では妊活から出産までヨウ素は絶対に摂らないようにと言われていたので、海藻類や昆布の出汁などが含まれていないか、食べ物の成分表を確認して気を付けていました。妊娠中は不安や心配が尽きず、血液検査の結果が何も問題が無いと、いつもホッとしていたのを覚えています」

「血液検査は安定期に入っても続きました。無事に元気に生まれて来てくれて、わが子が可愛くて愛おしくて毎日、幸せな気持ちで過ごす事が出来ています。産後は情緒不安定になりやすいと聞いていましたが、夫と二人三脚で助け合って無理なく育児をする事で心に余裕が出来て、わが子に優しく接する事が出来ました」

「甲状腺ガンと妊娠・出産に関する情報が少なく、毎日不安を抱きながら妊娠生活を送りました。そのような想いをする人が少なくなれば良いな、これから妊娠・。出産される方に少しでも情報が届けば良いなと思います。独りで悩まず、主治医や助産師、家族に小さな事でも相談して気持ちを楽に過ごした方が、お腹の赤ちゃんも安心すると思います」

記者会見の配布資料。妊娠・出産支援のほか、新型コロナウイルス感染拡大に伴う収入減・支出増に対する緊急支援も始めた

【164人に療養費給付】

基金は2016年12月から今年6月末までに164人(うち57人は福島県外在住者)に療養費を給付。昨年度から通院交通費の助成を開始したほか、台風19号に伴う「10・12水害」の被害に対する「お見舞い」も行ったという。

今年はさらに、新型コロナウイルスの感染拡大による家計への影響が大きい事から、療養費受給者を対象にした特別支援を開始。既に80人に対し3~5万円を給付した。特別支援金の申請は8月末まで受け付けているという。

「甲状腺ガンという基礎疾患があると感染した場合に重症化するのではないか、という不安があり、公共交通機関を利用しないなど慎重になっている方がいます。それによる収入減や支出増をサポートするための緊急支援です」(吉田さん)

甲状腺に疾患のある人が新型コロナウイルスに感染した事で甲状腺機能に影響が出たとの報告は今のところは無いが、吉田さんは「新型コロナウイルス自体が良く分かっていません。甲状腺ガンが肺に転移した人は肺炎の問題もあるので気を付けないといけないと思います」と語った。

同基金は国内外からの寄付で療養費の給付事業を続けている。福島県だけでなく秋田、岩手、山形、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、山梨、静岡に住んでいた原発事故当時18歳以下で、原発事故後に甲状腺ガンと診断された人が対象。

療養費の給付だけでなく、「集計漏れ」や「再発事例」など県民健康調査に対する問題提起も行っている。

(了)

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