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2020年上半期「老人福祉・介護事業」の倒産状況

 2020年上半期(1-6月)の「老人福祉・介護事業」倒産は、58件だった。介護保険法が施行された2000年以降、年上半期で最多を記録した2019年の55件を上回り、最多記録を更新した。
 「老人福祉・介護事業」の新型コロナウイルス関連破たんは1件だった。国や自治体の支援策が抑制効果を生んだとみられる。しかし、ヘルパー不足が深刻な訪問介護事業者は前年並みの31件(前年同期32件、前年同期比3.1%減)と高止まりした。また、競争が激しい通所・短期入所介護事業は18件(同13件、同38.4%増)と大幅に増加した。

 業歴が浅く、事業規模の小さい事業者が大半を占め、準備不足のスタートアップで倒産するケースも目立った。
 2020年1-4月の倒産は累計43件(前年同期32件)だったが、5月は1件にとどまった。新型コロナ感染拡大を受けて事業者が休業したほか、裁判所の一部業務縮小が影響したとみられる。だが、6月は一転して14件と増勢に転じ、先送りの反動で揺り戻しが強く出た。
 新型コロナ感染拡大で、厚生労働省は通所介護や短期入所の事業者向けに、特例で介護報酬の加算や、人員基準等を満たせない場合でも報酬を減額しないなどの支援策を発表した。それでも倒産が増えていることは、深刻な経営不振の事業者が多いことを改めて浮き彫りにしている。

 国などの支援で、ひと息ついた事業者もある一方、新型コロナで利用を控える動きもあり、サービス提供力が乏しい小・零細事業者は、さらに厳しい経営を強いられそうだ。
 新型コロナが追い打ちをかける格好で、体力を消耗した事業者も多く、倒産は下半期に向けて増勢を強めることが懸念される。

※本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

年上半期で最多件数を更新

 2020年上半期(1-6月)の「老人福祉・介護事業」倒産は、58件(前年同期比5.4%増)で、過去最多の2019年同期の55件を上回り、3年連続して年上半期は過去最多を更新した。

 負債総額は61億2,000万円(同44.3%減)で、上半期としては2年ぶりに減少した。前年同期は、負債53億8,600万円の有料老人ホーム経営、(株)未来設計(TSR企業コード:294993290、東京都中央区、民事再生)が負債を押し上げたが、その反動が出た。なお、負債1億円未満は46件(構成比79.3%)で、全体の約8割を小規模事業者が占めた。

競争が激しいデイサービスやショートステイの通所・短期入所介護事業が増加

 2020年上半期(1-6月)は、「通所・短期入所介護事業」が18件と前年同期(13件)から約4割(38.4%増)増加した。競争激化と利用者の伸び悩みで、経営が厳しい事業者が増えた。また、ヘルパー不足が続く「訪問介護事業」も、急増した前年同期(32件)から1件減の31件(3.1%減)と高止まりしている。


業種別、「訪問介護事業」が最多

 業種別では、最多が「訪問介護事業」の31件(前年同期32件)。次いで、デイサービスやショートステイなどの「通所・短期入所介護事業」が18件(同13件)、「有料老人ホーム」が4件(同5件)、特別養護老人ホームなどを含む「その他」が5件(同5件)だった。

原因別、放漫経営の「事業上の失敗」が急増

 原因別では、最多が販売不振(売上不振)の35件(前年同期比12.5%減、前年同期40件)。次いで、「事業上の失敗」12件(同200.0%増、同4件)。「運転資金の欠乏」5件(同25.0%増、同4件)で続く。急増した「事業上の失敗」は、無計画や未熟な運営を要因とした「放漫経営」の倒産が目立った。

設立別、5年以内が3割強で業歴の浅い事業者の倒産が目立つ

 設立別では、2015年以降設立の業歴5年未満が18件(構成比31.8-0%)と3割を超え、業歴の浅い事業者の倒産が目立った。従業員数別では、5人未満が35件(前年同期比2.7%減、前年同期36件)で、全体の6割(構成比60.3%)を占め、小・零細企業が大半を占めている。

形態別、破産が93.1%

 形態別では、破産が54件(前年同期比5.8%増、前年同期51件)と全体の9割(構成比93.1%)を占め、特別清算が3件(前年同期同数)だった。一方、再建型の民事再生法は1件(前年同期同数)にとどまり、9割以上が消滅型の破産を選択した。

地区別件数、関東地区が最多

 地区別では、全国9地区のうち、北陸を除く8地区で倒産が発生した。最多は関東の19件(前年同期15件)。次いで、近畿11件(同16件)、中部(同6件)と九州(同5件)が各7件、北海道(同3件)と東北(同3件)が各4件、中国(同5件)と四国(同ゼロ)が各3件、北陸ゼロ(同2件)の順。都道府県別では、東京(同7件)と大阪(同11件)が各7件で最多だった。

 「老人福祉・介護事業」の上半期(1-6月)の倒産は、3年連続で最多記録を塗り替えた。ヘルパー不足が深刻化する訪問介護事業者の倒産が高止まりしたほか、事業者が増加している通所・短期入所介護事業者が競合から倒産が増加し、件数を押し上げた。
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令中も、政府や自治体は介護サービス事業所に「事業の継続運営」を要請し、「老人福祉・介護事業」 の新型コロナウイルス関連破たんは1件にとどまった。
 厚労省は、新型コロナで影響を受けている短期入所介護事業者への加算や、在宅介護サービス事業者に助成金、介護現場の感染防止にかかる経費の助成など、立て続けに支援を発表した。支援によって事業者は、資金繰りの見通しや計画が立てやすくなり、一定の倒産抑制の効果があったとみられる。

 こうした支援策で踏ん張っている事業者は多い。だが、新型コロナの感染拡大で利用を手控えるなどニーズの変化もあり、新型コロナで体力を奪われた小・零細規模事業者の経営環境が厳しいことに変わりはない。さらに、支援金が事業者に行き渡るにはタイムラグがあり、支援金が届く前に資金繰りが限界に達することも想定される。特に、緊急事態宣言が発令された4月、5月の介護報酬は2カ月後の6月から7月に入金になることから、休業やサービス提供が減少した事業者は夏場を前に資金繰りがタイトになる可能性がある。

 一部で業務を縮小していた裁判所の倒産手続きが動き始めている。5月の揺り戻しと、これまでの売上不振が重なり、2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産は過去最多の2017年と2019年(111件)を上回る可能性が強まっている。



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