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中南米が「パンデミックの中心地」となった構造的要因 - 遅野井茂雄

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6月30日、段階的な経済再開を発表したペルーのビスカラ大統領(C)AFP=時事

 中南米の多くの国が、国境封鎖や外出禁止令など厳しい防疫体制を敷いて新型コロナウイルスの感染拡大に対応して6月で100日が経過した。

 しかし、未だ感染拡大のピークは確認されていない。むしろ6月に入り急拡大を続け、7月5日現在、全体で感染者数約300万人、死者数は13万人を数え、まさに中南米は「グローバル・パンデミックの中心地」となった。

隔離政策の失敗は明らか

 ウルグアイ(感染者数955人、死者28人)を除くと、これまでの隔離政策の失敗は明らかである。

 生命と生活(経済)を守る政策ジレンマの中で、感染防止と社会経済活動の折り合いをつける局面を迎えているが、隔離政策下で見切り発車的に経済が再開されることが繰り返され、感染が拡大する危険性がある。

 厳しい行動制限によってもウイルスの蔓延を封じ込められなかった原因としては、総じて脆弱な医療体制、医療設備・資源の地域的偏在の問題がまず挙げられるが、政府のガバナンス能力の低さと、政府に対する国民の信頼度の低さが根底にはある。

 また、貧富の格差の大きさに加え、就業人口に占める非正規労働者(インフォーマル雇用)の比率の高さや都市貧困層の住環境が劣悪(高い人口密度)であることなどの社会の構造的特性、集団行動が不得手な個人主義的な文化、国民的危機にも団結できない社会の分断などの要因が関係している。

 後述するペルーの例が、政策の限界を物語っている。

GDPマイナス7.2%の見通し

 世界銀行の「世界経済見通し」(6月8日発表)で、2020年の中南米経済は平均GDPマイナス7.2%と下方修正され、さらに24日に出された国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」では、マイナス9.4%と下落幅を広げている。

 今後、状況が悪化する場合には、さらに経済は下押しされ、2021年の回復(IMFの予測では3.7%)も遅れ、政治社会への影響も深刻さを増す可能性がある。

 中南米諸国は、2014年以降続いた経済低迷を背景に、保健など劣悪な公共サービスへの不満、政治や政府への不信、社会格差と分断などを争点に、昨年は大規模な反政府抗議活動の地域連鎖にみまわれた。その中で直面したコロナ危機への対応である。

 昨年の反政府抗議活動については、以下の過去記事と『ラテンアメリカ時報』2020年春号の拙稿「2010年代末に起きた社会騒乱の連鎖をどう読むか」を参照していただきたい。

分岐点に立つ「2019年の中南米」(1)「民主主義の危機」から脱却できるか(2019年10月8日) 

分岐点に立つ「2019年の中南米」(2)チリの抗議運動が投げかけたもの(2019年11月15日)

 隔離政策は貧困や失業の急増(国際労働機関ILOの試算では4700万人の雇用が喪失)、企業の倒産などすでに地域社会に甚大な影響を及ぼしている。

 空路が閉ざされ、「LATAM」、「AVIANCA」、「AEROMEXICO」といった中南米屈指の航空会社が軒並み破産申請の手続きに入った。地理的特性から空路に依拠する地域の経済や社会に及ぼす影響は大きい。

感染拡大の抑え込みに失敗した主要国

主要国の現状

 主要国の現状を見ていこう。

 まずブラジルでは、新型コロナを「ただのカゼだ」とし、パンデミックに対する「世界の反応は過剰」と公言するジャイール・ボルソナーロ大統領の下で経済が優先され、さらに2人の保健相が辞任するなど一貫した隔離政策がとられず、米国に次ぐ爆発的拡大の勢いを見せている。

 感染者は1日4万人の勢いで増え、157万人。死者は6万4000人に達する。6月一月で感染者数は2.5倍、死者の数は2倍となった。(数字はいずれも7月5日現在)

 ペルーとチリでは検査数を増やし、死者数を抑えたが、感染拡大の抑え込みには失敗した。いずれも感染者数は30万人。6月23日にスペイン、イタリアを、7月3日に英国を抜いて世界5位、6位まで順位を上げた。

 特にチリは、人口比で見た感染者数が世界でも群を抜いて多い。チリの死者数には、死後に感染の可能性が発覚した3069人が追加される予定である。

 メキシコは感染者数における死者数の比率が高く、10日で7000人増加。死者数は3倍に達すると見られている。

 アルゼンチン、コロンビアは感染拡大の抑え込みに成功したと見られたが、経済再開に伴い6月に入り再び急増している。コロンビアの感染者数は6月28日に中国を抜き、11万人を超え、1日4000人規模で加速的に増加している。アルゼンチンも7万人を超え、1日当たりの新規感染者が最多となった。

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