記事

安倍晋三さんが憲法9条改正に突き進み、公明党が捨てられる日 「はい、分かりました」なんてすんなり応えられるはずもない - 山本 一郎

1/2

 かつて薬師丸ひろ子は「さよならは 別れの言葉じゃなくて 再び逢うまでの 遠い約束」と歌い上げておりましたが、今回の主題はセーラー服でも機関銃でもなく、さよならになってしまいかねない東京オリンピックと公明党の話です。

与党政治に、批判的かつ健全に関与してきた公明党

 はじめに断っておきますと、私はキリスト教徒(プロテスタント)ですが、公明党がいいなと思っています。創価学会がどうとかではなく、何かにつけ暴走しがちな自由民主党が政権を取るにあたって、公明党のような程よいブレーキ役がいて初めて巡航運転ができる面もありますし、実質的に与党内野党として本当に健全に自民党による与党政治に批判的に関与できているのは公明党だけなんじゃないかと思っています。

 思い返していただきたい。さかのぼることちょうど5年前の2015年7月、平和安全法制で騒ぎが起きていました。自衛隊法、周辺事態法、船舶検査活動法、国連PKO協力法など、日本の安全保障を考えるうえで重要な法案が立て続けに審議される中で、与野党の論戦のなか最後まで中心にいた中には公明党もいました。与党だし最後は賛成するんだけど、自民党各位からすれば公明党の愚直なまでの平和路線に対してギリギリと歯がみしながらも議論に応じざるを得なかった。でも、あのときの議事や資料をいま見返すと、健全野党とは実は公明党の事だったんじゃないかとすら思うんですよね。

写真はイメージ ©︎iStock.com

 一足飛びに安保法制をがっつり進めることはできなかったけど、日本で必要な議論はしっかりと行えて、自公含む5党で成立した「平和安全法制についての合意書」はいつ読んでもなかなか良い理念を提示していると思います。

中国がきな臭くなり、ややこしいことをおっぱじめそうな今

 時は下って2020年なう(死語)。安倍政権も終盤に差し掛かり、我らが宰相・安倍晋三さんの動きがなんかヘンです。その嚆矢はイージス・アショアをめぐる議論の中で、ポスト安倍ちゃんの最右翼である岸田文雄さんと、防衛大臣になっちゃった河野太郎さんを巻き込んだ敵基地攻撃能力に関する議論でございますね。

岸田氏、敵基地攻撃で問われる手腕 自公調整、ポスト安倍へ試練:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020062900867&g=pol

 もちろん、自民党の党内議論として「先制攻撃」すなわち敵基地攻撃能力に関する論点は大変デリケートなものであります。なんてったって、いままでは「攻撃されるまで、反撃しちゃいけない自衛隊」という大前提を当たり前のようにして我が国の安全保障は語られてきたわけですからな。

 しかしながら、お隣の中国さんがきな臭くなり、香港だ台湾だチベットだウイグルだ朝鮮半島だ南シナ海だとややこしいことをおっぱじめそうだ、しかも米中対立はいずれ冷戦になるぞと言われれば、日本の伝統芸にして最先端兵器である「平和憲法第9条シールド」ではどうにもならなくなります。憲法第9条なんて日本国内のことに過ぎず、海外から見れば「日本は平和憲法に縛り付けられているから強くは出られないだろう」とナメられる原因になってるんじゃないかと思うのですが、国内ではもはや宗教みたいになってると思うんですよね。

自民党から「敵基地を先制攻撃したい」と言われたら

 これでうっかり朝鮮半島でも統一されて中国側に転ばれたら対馬海峡が米中対立の最前線になり、福岡がソウルみたいになるんですよ。こりゃもう鎮西探題作って元寇防塁築くしかないですね。

 でも来るのはミサイルですし、仮想敵の中国や朝鮮半島の皆さんは行儀よく福岡から上陸してきてくださるとは限らない。さらに、ミサイルたくさん打ち込まれたら反撃する間もなく死ぬ。だからこそ、ミサイルを撃たれるかどうかを察知して撃ち落とすだけでなく、なんかそういう変な挙動があったらミサイルのある敵基地も躊躇なくぶん殴らなければならないわけですよ。

 そういう議論って、確かに現実の安全保障に関する重要なテーマではあるけれど「なんか敵がミサイル撃ってきそうだから先に攻撃しますわ」と言われたらワシらの憲法9条はどうなっちゃうの。これ、憲法9条を守る会とかやってる皆さん憤死しかねない勢いですよね。

 そして、平和憲法を愛する公明党はこんな議論を受け入れられるのか。公明党を岸田文雄さんは説得できるのか。ここで説得できなければ、もうすぐ手の届くところに来ている総理大臣の椅子はキャスターつけてコロコロ逃げて行ってしまいます。

 公明党も苦しい。号して800万票を擁すると言いながら前回国政選挙では650万票あまりに沈み、平和憲法を愛する公明党や支持団体の創価学会の皆さんからすれば、なかなか厳しい情勢になってきました。公明党には自民党から「敵基地を先制攻撃したいです」と言われて「はい、分かりました」なんてすんなり応えられるはずもないのです。そこが、公明党の愚直で良いところなんですよね。票の取れる、ブレーキ役。自民党だけでは決まらないからこそ、憲法改正や安全保障に関する議論も拙速にならずに済むという。

あわせて読みたい

「憲法改正」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    1枚1円レジ袋 大量買いの珍風景

    中川 淳一郎

  2. 2

    山手線 中国・韓国語表示消えた?

    BLOGOS しらべる部

  3. 3

    韓国サムスン 反中感情追い風か

    ロイター

  4. 4

    駅前の果物販売は盗品? 投稿話題

    BLOGOS しらべる部

  5. 5

    医師しか発言許されぬ残念な風潮

    青山まさゆき

  6. 6

    「経済重視」で経済が回らない訳

    鈴木しんじ

  7. 7

    橋下氏 キャバ批判の知事に苦言

    橋下徹

  8. 8

    身近に感染者は? 約9割「0人」

    かさこ

  9. 9

    感染者数に囚われる日本の不思議

    自由人

  10. 10

    ユニクロの策 客をスタッフ勧誘

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。