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「たかがマスク、されどマスク」トランプ氏を悩まし続ける”難題” - 斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

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コロナウイルス感染が再び拡大し始めたアメリカで、一人頑固にマスク着用を拒否し続けるトランプ大統領に対し、与党共和党有力議員の間からも、大統領選への悪影響を懸念する声が出始めている。

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1日付のワシントン・ポスト紙報道によると、ごく最近、共和党首脳陣の間で「マスク着用は早期経済再開の一助になる」との見方がにわかに広がり始め、国民の範となるべく大統領にも着用を勧めている。だが、これまでのところ説得のかいもなく、困惑の度を深めつつある。

共和党幹部がとくに懸念するのは、11月大統領選への影響だ。感染者が民主党地盤のニューヨーク、フィラデルフィア、ボストンなどの北東部都市から共和党地盤の南部諸州に拡大し始めるにつれて、マスク着用を拒否し続ける大統領の姿勢が今後、バイデン民主党候補にとって格好の攻撃材料になりかねないからだ。

ホワイトハウスは去る5月11日、ペンス副大統領補佐官の感染が確認されたのをきっかけに、全スタッフ、職員に対し、マスク着用を指示した。しかし、強制措置ではなく、正副大統領および幹部も「定期的検査を実施しているので心配ない」と消極的だったことから、その後も指示は有名無実化していた。

ところが、6月半ば過ぎから、南部を中心として患者数が急増、とくにトランプ再選に死活的に重要なフロリダ、ジョージア、ノースカロライな、サウスカロライナ、アリゾナ各州で過去最多となる新規患者数が連日、あいついで報告され、いったん解除したはずのレストラン、バーなどを対象とした「3蜜」回避措置を再び指示する州も出始めている。

これを受け、これまでマスク着用を無視してきた共和党議会指導部が急遽、態度を変え始めた。

ミッチ・マコーネル上院院内総務は6月29日、本会議演説で「われわれは、マスクについての偏見をなくす必要がある。コロナ対策上、全国民に例示すべき最重要措置は当面、自分だけでなく他人も保護すること、すなわちマスクを着用することだ。なにも複雑なことではない」と言明した。

上院健康教育労働年金委員会のラマー・アレクサンダー委員長も同日、公聴会審議の冒頭、マスク着用の重要性を強調するとともに「大統領にも、必要に応じマスクを着けるようお願いしたい」とわざわざ訴えた。

このほか、「例外なしに誰もがマスクを着けるべきだ」(マルコ・ルビオ上院議員)、「われわれはいまの事態を真剣に受け止め、マスク着用とソーシャル・ディスタンスを徹底すべきだ」(リック・スコット上院議員)、「マスク着用が面倒で、個人の自由侵害だと考える人がいることを承知しているが、いまとるべき最善措置であり、それがわが州の経済活動再開につながることも事実だ」(グレッグ・アボット・テキサス州知事)など、共和党有力者たちの間から、一斉にマスク着用の重要性を指摘する声が上がり始めた。

そしてつい最近、ペンス副大統領までもマスク着用に踏み切った。

これに対し、トランプ大統領は一貫して、消極的な立場をとり続けている。

去る4月以来、この問題で報道陣の質問を受けるたびに、のらりくらりの返事を繰り返してきた。以下のような大統領‟マスク語録“が、そのことを物語っている:

「ほとんど誰もがマスクを着け始めている……ただ、良い面、悪い面がある。一方的な話ではない」

「大統領がマスクを着けることで模範になるという指摘がある。それは確かにそうかもしれないが、両方の面での模範ということになりかねない」

「選挙集会参加者がマスクをつけることを勧めるかということなら、もちろん、勧める。何の問題もない。自分はそうしない。異議を唱えるのではなく、自分が(感染の)危険にさらされているとは思わないだけの話だ」

「君たちも知ってると思うが、かつては、マスク着用がかえって健康上まずいと考えられた時期もあったんだ。着けるか着けないかは、個人の判断に任せるべきだ」

「ミシガン集会に出かけた際に、多くの人にマスク問題で質問された。自分が求めているのは、わが国が早くノーマルな状態に戻ることだ。経済の早期再開にこしたことはない」

「実は、演説会場の控えの場ではマスクをつけたこともあった。ただ、そのシーンだけは報道陣に見られたくなかった」

「CDC(国立疫病予防管理センター)は、公衆衛生上の予防措置として任意のマスク着用を勧めている。あくまで任意の話であり、自分はそうしようとは思わない。諸君、わかるかね。そうしたほうがいいと言っているだけの話であって、従わなければ従わなくていい。自分は着けない」

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