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【読書感想】知らないと恥をかく世界の大問題11 グローバリズムのその先

知らないと恥をかく世界の大問題11 グローバリズムのその先 (角川新書)
作者:池上 彰
発売日: 2020/06/10
メディア: 新書



Kindle版もあります。

知らないと恥をかく世界の大問題11 グローバリズムのその先 (角川新書)
作者:池上 彰
発売日: 2020/06/10
メディア: Kindle版

大転換期の裏で進むものは?
独断か? 協調か?
リーダーの決断を問う!

突然世界を襲った新型コロナウイルス。
コロナウイルス危機への対策が世界で実行される中、その裏で世界の大問題は深刻化している。
大転換期を迎えた世界。アメリカ大統領選挙が行われる節目の年に、
世界のリーダーたちはどんな決断を下すのか。
独断か? 協調か? リーダーの力量が問われる中、世界が抱える大問題を知る必要がある。
人気シリーズ最新第11弾。信頼の池上ニュース解説の決定版。

このシリーズも、もう11冊目になるんですね。
(前回の「10」はこちら)

fujipon.hatenadiary.com

 約1年前に上梓された「10」では、米中の対立とイギリスのEU離脱、そして、格差の拡大が語られていたのですが、2020年版の「11」では、新型コロナウイルスの話題がかなり多くを占めています。

 新型コロナウイルスに関しては、どのくらいの範囲に感染が拡大していくのか、そして、いつ収束するのか、というのがまだわからない状態で、今年の世界情勢を占う、あるいは「アフター・コロナ」について語る本は、苦労しているのが伝わってくるのです。

 この本も、当初予定されていた内容から、かなり差し替えることになったのではなかろうか。

 2019年末の時点では、2020年の東京オリンピックが延期になるとか、小中学校が3ヶ月も休校になるとか、ZOOMで「オンライン飲み会」とかをやる人がこんなに出てくるなんて、想像もしていませんでしたし。

 新型コロナウイルスという世界の人々の生命にかかわることへの対応でも、政治的な立場というのは大きな影響をもたらしているのです。

 今回の新型コロナウイルスをめぐっては、世界各国で中国との政治的関係に応じて対応が分かれました。たとえば「後手後手の対応」を批判された日本とは対照的だったのが台湾です。感染者が1人も出ていない1月15日の段階で、「法定感染症」に定め、2月6日からは中国本土の住民の入境を原則禁止しました。

 2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)で80人以上の死者を出した反省もあったとみられていますが、蔡英文総統の支持率は大きく上昇しました。

 中国と政治的に対立することの多いベトナムも同様です。2月5日から過去14日以内に中国に滞在したことのある外国人について、公的目的以外(要するに外交官以外)の入国を禁止しました。中国に厳しい対応です。

 台湾やベトナムとは対照的だったのがカンボジアです。感染者が乗船しているのではと疑われ、各国から入港を拒否されていたクルーズ船「ウエステルダム号」を受け入れ、フン・セン首相自ら下船する乗客を”マスクなし”で出迎える姿がニュースになりました。

 2月5日にはわざわざ中国を訪問して習近平国家主席と会談し、「カンボジアの人々は我々と共にいる」と感激されました。中国から巨額の経済支援や投資を受けているので、中国に恩返しというか、恩を売ったのでしょう。

 中国に寄りすぎていたのがWHO(世界保険機構)です。WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、感染拡大が問題になっても緊急事態宣言の発表を見送ったかと思えば、習近平主席に対し「中国が疫病の感染予防に対して行っている努力とその措置は素晴らしい」と絶賛しました。

 そのお返しか、中国はWHOに対して2000万ドル(約21億円)寄付すると報じられました。

 僕は「新型コロナウイルスは中国の陰謀だ」みたいな主張には与しませんが、感染症の予防のためであっても、国と国の関係が対応に大きな影響を与えているのは事実のようです。

 政治は政治、感染予防は感染予防、と、ちゃんと分けて考えられれば良いのですが、人類は、まだそこまで進歩してはいないのだよなあ。

 僕にとっては、近年のこのシリーズは、大まかな世界情勢を確認するのと同時に、池上さんが散りばめている小ネタを楽しむのが目当てになってきました。

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)はミサイル発射を止めませんね。なぜあんなことをするのか謎に満ちたイメージがありますが、北朝鮮という国は中国をモデルにつくられた国です。北朝鮮の憲法には「北朝鮮は朝鮮労働党の指導に従う」と書いてあります。

 お手本にした中国の憲法にも「中国公民(人民)は中国共産党の指導に従う」と書いてあります。

 ところが北朝鮮ではマルクスやエンゲルスの書物を自由に読むことはできません。事実上の禁書扱いです。

 社会主義はマルクス・レーニン主義に基づいているので、北朝鮮も本来マルクス主義に基づいてつくられた国のはずなのですが、マルクスの本を一般国民が読んでしまうと「北朝鮮は社会主義の国ではない」ということがバレてしまうからです。

 いまや中国も「共産党」が支配しているけれど、政策的には共産主義とは言い難いですし、日本の「共産党」も、マルクス・レーニン主義とは違う路線を進んでいます。

 それが現実ではあるのでしょうけど、北朝鮮では、マルクスの本は「事実上の禁書」になっているんですね……

 2020年も半年近く経ちました。現代社会のキーワードは何か。ひとつは「格差」でしょう。世界がグローバルなマーケットになったことによって、経済格差が生まれ、新たな分断が生まれた。格差の中で自分さえよければという世界の流れが広がっています。

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大の様相を見ても、アメリカでは所得の低い人の死亡率が高いのが特徴です。格差は人を殺すのです。

 東西冷戦が終わって約30年が経ちました。社会主義が崩壊え、資本主義が勝ったと言われました。東西冷戦が終わったとき、国際政治学者のフランシス・フクヤマは『歴史の終わり』を書きました。「東西冷戦」というイデオロギー対決の歴史は、自由主義、民主主義の勝利によって終わった、と。

 資本主義と社会主義のイデオロギー闘争では、資本主義によって格差が広がると労働者の不満が高まり、革命が起きるのではないか。そういう恐怖心があります。そこで資本主義を推進する側も、格差をなるべく減らそうとしてきました。

 そうしたら社会主義が自滅した。資本主義が勝利した。資本主義の優れたところは自由な市場だ。国家の規制を排除し、自由な経済競争をすることが、豊かな社会を築くことだ。

 ここに思い上がりがあったのですね。結果的に「資本主義万歳!」になり、格差是正の取り組みをしなくなったらこんな状態になってしまったのです。資本主義には、貧富の格差を拡大する力が内在しているのです。

 新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、世界各地でアジア人が差別されている、という話も出てきます。

 池上さん自身も、取材先で「コロナ、コロナ」と指さされたことがあったのだとか。

 これまで、戦争や大規模な疫病は、社会に大きなダメージを与えるのと同時に、みんなが命を落としたり、貧しくなったりして格差を(一時的にでも)縮小するとされてきました。

 しかしながら、今回の新型コロナウイルスでは「アメリカでは所得の低い人の死亡率が高い」というデータが出ています。

 その理由までは書かれていませんが、感染症に対する知識が乏しく、感染予防が不十分だったり、人と接する感染のリスクが高い仕事をしたりしている人が多いのかもしれません。

 社会主義も、自分たちがそのシステムで暮らすのはキツイけれど、世界のもう一方にそれが存在してくれていれば、資本主義陣営が「格差の拡大を警戒する」面もあったのです。

 そのために、社会主義国で暮らす人たちに犠牲になってもらう、というのは、あまりにも傲慢な話なのですが。

 疫病ですら、「格差」を是正できなくなってしまった世界は、どこへ向かっていくのだろうか。

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